近づけば近づくほど蛍と影山たちが争っているのがよく分かった。
どうやら蛍が影山につかっかっているようだ。
今度こそ、大きな喧嘩になる前に止めないと。
そう思ってさらに一歩踏み出したときだった。
「そんなキバんないでさ。明るく楽しく程々にやろうよ」
「たかが部活なんだからさ」
……え、?なんて言った?『たかが』って言ったのか?あの蛍が?
確かに蛍は軽薄な感じに見られてしまうが、バレーに関してはこんな風にいうことはなかった。
なんで……
そんなことを考えているうちにも蛍たちは行ってしまっている。
「っ、!待って、蛍!!」
僕は彼らの後を追った。
「蛍!!」
やっと追いついたとき、彼らはびっくりしたようにこっちを向いた。
「あれ!樹、なんでここに?」
「……走ってたら、忠たちを見つけて。」
蛍はこちらを少し見てるだけだった。
「…なぁ、蛍。さっきの……」
「……なんのことかな?」
「『たかが』ってやつ。」
「そのままだよ。これ、あいつらにも言ったんだけどさ。」
「……そう、なんだ。」
当たり前も言ったら当たり前だが、蛍との距離が遠いように感じた。
「で、話はそれだけ?」
「あ、えっ、と、…」
僕はなぜだか分からないけど、まだ蛍たちと話したいという気持ちがあり、話題を探す。
「明日、さ。忠と蛍と僕との3人でやるっていうの、聞いた?」
とっさに出てきたのはそんな蛍にとってはどうでもいいであろう話だった。
(…帰られちゃうかな)
そんなことを考えながら蛍の返事を僕は待った。
「……そう。それの相談ってこと?」
「え?」
驚いた。蛍は基本的に自分から踏み込んで行かないから。
「何驚いてるのさ。」
「あ、いや!ポジションの話してだよね。僕はどこでもいいけど。2人はどうする?」
「……樹は中学はポジション、どこだったわけ?」
「!!」
「?どうかしたの、樹?」
「あ、いや、!」
……蛍が名前を呼んでくれた。以前のように。
それが僕はうれしくてたまらなかった。
「僕はリベロだったよ。」
「え!その身長で!?」
……みんな最初そういうんだよな。
僕の身長は蛍とほぼ同じだから、スパイカーだと思われがちだ。
「まぁな。」
「………変わってないな」
「?どういうこと?ツッキー」
「……もしかして、覚えてるの、?」
「さあね。」
「え、なんの話!?」
「山口うるさい。」
「ごめんツッキー!」
「……はは」
どうしよ、すごく嬉しい。
忠は覚えてなかったみたいだけど、蛍が覚えてくれてて、正直びっくりした。
そんな気持ちになりながら2人の会話を聞いていると…
「はぁ、もう家帰る。」
………ここまでか。
もう少し話していたかったけど、蛍がそう言うなら引き留めるわけにはいかない。
バイバイって言おうとしたその時、
「何してんだよ、早く来なよ。」
「……え?」
「家、樹もこっちだろ。」
「!うん!」
「…なんだか、嬉しそうだね。ツッキー。」
「……山口うるさい。」
「はは、僕は嬉しいな。」
「……あっそ、」
その後、2人と明日のことを話しながら帰った。
やっぱり2人と話すと時間が過ぎるのが早くてあっという間に家に着いていた。
ほんとに楽しかったな。
だけど、蛍の『たかが』って言ったことについて聞けなかったな…
そんなことを思いながら、僕はひさびさの深い眠りについた。
コメント
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いいんやん!( *´꒳`*)