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鍵が二重にかかった部屋。外から南京錠が二つ、さらにチェーンが一つを解く音がカチャリ、かチャリと静かな部屋に響く
桃「.. ..水.. .」
ベッドの上で膝を抱え部屋の隅を見つめてる
足首に柔らかい革のバンドが巻かれていて、5メートルの鎖でベッドに繋がれている。
水「ただいま、桃ちゃん」
買い物袋を置いて、すぐに俺の前に跪く
水「今日はね、桃ちゃんが好きなお寿司と、ふわふわのクッション買ってきたよ」
桃 「…..俺、外に出たい……」
掠れた声で、でも目はもう諦め気味に濁ってる
水「. …ダメだよ」
優しく微笑みながら、俺の頬を両手で包む
水「外には桃ちゃんを傷つけるものがたくさんあるし僕を不安にさせる人もいる」
水「ここなら僕がずっと見ていられる。桃ちゃんを誰にも取られない」
桃「….でも……もう三ヶ月 」
水「そう、三ヶ月と九日目だね」
水「毎日毎日、桃ちゃんがここにいてくれる。
すごく幸せ」
桃 「…..薬…..飲まなきゃ…..」
水「はい、ちゃんと用意してあるよ」
水は今日も精神安定剤のお薬を俺の口に運んでくれる
桃「….水、怖い……」
水「怖くないよ。僕がいる」
薬を飲んだ後、そっとキスをしてくれた
水「ほら、今日もちゃんと飲めた。えらいえらい」
桃「…..俺、壊れてる….?」
水「壊れてない。桃ちゃんは完壁だよ」
鎖を鳴らしながら、抱き寄せられた
水「壊れてるのは世界の方。ここなら桃ちゃんは壊れなくていい」
桃「…..水がいなくなったら…..?」
水「いなくならない。外に出る理由なんて一つもない」
水「桃ちゃんさえいれば、僕は生きていける」
桃 「…..俺も…..水がいないと…..生きられない….」
震える手で水のシャツをぎゅっと掴む
水「そう、それでいい」
水は俺の足首のバンドを確かめながら、優しくキスをする
水「もう外の世界はいらないよね?ここが僕らの全部だよ」
桃「…..うん….」
涙を流しながら、でも水の胸に顔を埋める
水「いい子」
俺の髪を梳きながら、満足そうに微笑む
窓は厚い板で塞がれ、カーテンは開かない
スマホもテレビも、もうない。
あるのはベッドと、鎖と、そして、永遠に離れないと誓った二人だけ。
水 「…..今日も一日、桃ちゃんを愛してあげる」
桃 「…..俺も……水を……」
カチャリ
また鍵が鳴る。
外の世界は、もう遠い。
ここが、二人の永遠の檻。
二人だけの、歪んだ楽園。
俺はもう、外を思い出せない。
水はもう、外を必要としない。
これで、よかったんだ。
これが、幸せなんだ。