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5 - 第5話 nkkn 再会

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2025年03月03日

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いつもよりゆっくり、情景を想像しながら読んでください

雰囲気を重視しているので、しっかり味わってくださると楽しんでいただけると思います

nmmnとなりますのでひっそりと楽しんでいただけると幸いです

5000字ほどあります



nkkn 再会



懐かしい匂いに顔を埋めた。

暖かくて、陽の光を全身に浴びているように錯覚するほどの柔らかいこの匂いは、記憶にある彼そのものであった。




幼少期、小学1年生。

近所の公園で一人で遊んでいた俺に声をかけてくれたのは彼だった。


「ねえ、きみおなじがっこうだよね」

「…え」


今でも覚えている。

突然声をかけられて、戸惑って固まってしまった俺に笑いかけてくれた彼の明るい表情を。


「ね、ともだちになろう!」


それからだった。学校でも休日でも大体は彼と、ナカムと一緒になったのは。

休み時間は一緒に遊んだし、放課後だって公園に行ったりお互いの家に行ってゲームをしたりした。

ナカムと過ごす時間はとても楽しくて、お互いに親友でありズッ友だって思っていた。


「きんとき、今日もあそぼうよ!」

「でも明日テストだよ?」

「ん〜…じゃあべんきょうしよ!」

「本当にやるの?」

「うん!2人で100点とってお母さんたちおどろかせようよ!」

「それいいね、がんばろっか」


「きんときさ、なんでそんなにランドセル綺麗なの?」

「えぇ?言うほどかな」

「そうだよ、だってこんなにピカピカじゃん」

「そりゃ…カバーつけてるし…?」

「俺なんかカバーがボロボロになったけど?」

「それは…ナカムが元気だからじゃないかな…」

「なっ!笑わないでよ!」


「じゃあねきんとき!また明日」

「うん、また明日ね」


…ずっと続くと思っていたのに。



「…引っ越し?」

「………ごめん」

「遠くなの?」

「うん、隣の県だって…」

「じゃあ、また会える?」

「…た、ぶん」

「…わかんないの?」

「……うん」

「………」


まだ小さい手をきゅっと握りしめて黙り込んだナカムの顔を見ることができなかった。

だって、本当は言いたくなかった。

絶対に傷つけちゃうって、分かってたから。

絶対に悲しくなるって、分かってたから。


「…ごめ」

「きんときが謝ることじゃない!!」

「っ…」

「きんときは悪くないじゃん!きんときのお父さんもお母さんも悪くない!俺も悪くない!だから誰も…、…だれのせいでもないのに…」

「ナカム…」


しゃくりをあげて泣くナカムになんて声を掛ければいいのか分からなくて、俺はただ、ナカムをそっと抱きしめることしかできなかった。






「久しぶり、きんとき」

「…声、低くなったね」

「俺5年生の時声変わりまだだったっけ?」

「うん、記憶の中ではずっと可愛かったよ」

「嬉しくね〜」


そう言ったナカムは俺から身を離した。

懐かしい匂いが自分からそっと離れていくのを感じる。

俺のことを笑顔で見つめるナカムは昔よりずっと大人になっていて、正直かっこよかった。

まだ頭の中にあるナカムの姿と彼の姿がいまいち一致しないけれど、それでも確かに彼なのだとその笑顔の明るさに思い知らされる。


「きんときはあんまり変わんないね」

「声変わりしてたしね、身長伸びたくらいかな」

「なんか、身長差大きくなってね…?」

「…それはそうかも、記憶のナカムが小さすぎてよくわかんないけど」

「うわコレ絶対差広がってるよ、小さい頃こんなに見上げなかった!」

「…っふふ、昔からちっさかったもんね」

「なんだと!怒るぞ!」

「もう怒ってるじゃん」


やっぱりナカムと一緒にいるのは楽しい。

10年近く離れていたけど、彼とのくだらない日常の幸せを忘れたことなんて一度もなかった。

夢にすら姿を見るほど、彼は俺の心に強く残っていた。


「よかった、きんときとまた会えて」

「まさか大学が同じなんて…気づいてたならもっと早く話しかけてくれたらよかったのに…」

「学科違うし本当にきんときか分かんなくてさ!いろいろ探り入れてたら結構経ってて今なわけ」

「というか、もしかして横浜から通ってるの?こんな東京の端に?」

「いや?アパート借りて一人暮らし!」

「あぁ、そういうこと」


ナカムが暮らす家ってどんな感じなんだろう。

幼少期の頃を思い出しても家事が出来るイメージがないので、余計に想像がつかない。

もしかしたら整頓のせの字もないのかもしれない。

そんな失礼なことを考えているとナカムがパッとその顔を明るくさせた。


「そうだ!久しぶりに話したいし俺の家来てよ!」

「え、いいの?」

「いいのいいの!きんときだもん!」

「じゃあ行っちゃおっかな」

「よしきた!行こ!」


ルンルンと鼻歌が聞こえてきそうな軽い足取りでナカムは大学の敷地を出た。

それを追うように俺は少し後ろをついていく。

その歩き方が懐かしくて、なんだか本当に小学生の頃に戻ったみたいだった。






「ここの28号室が俺の家ね、はいコレ合鍵」

「えっ、合鍵?」

「…?いつでも来れる方がいいでしょ?」

「そ、それはそうだけど」


賃貸だから無くさないでね?と笑いかけてくる彼のセキュリティの甘さに驚きが隠しきれない。

昔親友だと言っていたからって、そんなことをして良いのか。


「鍵ってそう容易く渡すものではないよ…?」

「きんときだもん、別に問題なくない?」

「お前の中の俺どうなってるんだよ」

「あの頃と変わらずだけどな〜」

「そりゃどうも…」


それほど自分が信用されているんだろうけど、なんだか心配になってくる。

俺だったら何でも許されそうな気がしてならない、昔もそんな感じだったっけ…?


「入って入って!」

「…おじゃましまーす」


ただ後ろをついて行っていたらいつの間にか部屋の前に着いていたらしくて、鉄製の扉が開かれていた。

ナカムに続いて部屋に入ると、当たり前だけどその部屋は彼の匂いで満たされていて、思わずほう、と息を吐いた。


ナカムの匂いだ


「えっなに、くさい?」

「あっ、え、違う違う。嘘、声出てた?」

「え、うん俺の匂いって…」

「ごめんいい匂いだよ」

「いい匂いもなんか…」

「わー!もう気にすんな!!」

「え〜?でも嬉しいよ、俺の匂い覚えててくれたんだ?」


廊下に立つ彼の、昔よりも悪意が感じられるニヤニヤとした煽り顔にとても腹が立つ。

過去にどれだけ彼の家で遊んだことか。

その匂いを覚えていないわけがないのに。

リビングらしきところに招き入れられ、ソファへと促される。

部屋は思っていたよりもずっと綺麗だった。


「これ洗剤とかシャンプーの匂いでしょ…ていうか、あれ?あの時から変えてないの?」

「変えてないよ」

「ずっとそれなんだ…」

「それでいうときんときは匂い変わったよね?」

「…お前も覚えてるんじゃん」

「まぁまぁ、ね?」


曖昧に笑う彼を睨みつつ、確かに匂いを覚えているなんて言われると気恥ずかしいななんて思う。

俺はまだ実家にいて身の回りのものは大体親任せなので、いまいち いつ変わったとか昔はどんなのを使ってたかは覚えていない。だからこそ自分すら覚えていないことを自分じゃない人間が覚えているというのは不思議な感じだ。


「昔のきんときの匂いも好きだったけど、今の匂いも似合ってるよ」

「ありがと、でも自分の匂いって言われてもわかんないんだよね…」

「それはそうかもね、俺もずっとこれだから俺的には無臭だよ」

「こんなにわかるのになぁ…」

「……あのさ、今日泊まっていかない?」

「…急だな?」

「いや〜お泊まりとかしてみたかったんだよね、きんときが良ければだけど」

「別に良いけど…着替えとか持ってないよ?」

「下着は嫌だろうけど…服は普通に貸せるよ、きんときが入るサイズもある!」

「うーーん…下着なぁ…コンビニで買おっかな」

「じゃあ今からコンビニ行こ!」


決定!と声をあげて動き出した彼に財布とスマホだけを持ってついていった。






近場のコンビニでお菓子やご飯、下着を買って家に戻った。


「そんなに買って一人で食べれるの?」

「一人でとは言ってないけどね」


相変わらず甘いものが好きらしいナカムはたくさん買ってきたコンビニスイーツを冷蔵庫にしまっているところだった。


「俺も食べていいの?」

「もちろん、夜飯の後食べよ!」


冷蔵品を全てしまい終えたナカムが笑って、ソファに座る俺の横に座った。


「本当に嬉しい、きんときとこうやってもう一度話せるなんて」

「俺も嬉しいよ、こっちの大学に来るとは思ってなかったから、びっくりしてるけど…」

「一か八かだったんだよね」

「? 何が、」


ふと問いかけると、やわらかな笑みを携えたその双眸が静かに俺を見つめる。

そのまま俺に手を伸ばしてくるナカムがどこか怖くて、避けるように身を離す。

それでもすぐに近づかれて、頬をそっと撫でられた。


「きんときに会えるか」

「…え」


俺に会えるかどうか?どういうこと、まさか俺に会える可能性があるから東京に?そんなわけ…。


「きんときが大学に行くかも賭けだったし、今の大学に入学するかも賭けだった。」

「う、うそ、本気で言ってるの?」

「冗談だと思うの?」


頬から手を離したナカムがにこりと笑っている、流石に…俺に会いたいからって…。


「重いって思ったでしょ」

「…」

「いいよ、それで。俺は重いんです〜」

「ナカムは、その…行きたい学校とかなかったの?」

「きんときのいる学校に行きたかったから来たんだよ」

「……俺のこと大好きじゃん」

「そうだよ、大好き」


差し出したボケにいつもはおどけるような彼が、真面目な顔をして俺を見ている。

大学の話は冗談ではなく事実で、だったらこの言葉は?

この好きには、どんな意味が、


「愛してるよ」

「っあ、い…!?」

「うん、愛」

「そ、そんな…久しぶりに会ったのに…」

「大丈夫、きんときは変わってないよ」

「そんなのまだ分かんないだろ!?」

「分かるよ」


小さく微笑んだ彼が両手で優しく俺の顔を包み込んだ。

あたたかい、俺と比べると少し小さな手がゆっくりと耳や頬を撫でる。

抵抗をする気にもさせないような幸福がだんだんと俺の意識の輪郭をぼんやりと揺らがせていく。

ナカムの顔が近い。

明るい水色の瞳に吸い込まれそうになって、思わず瞬きをいくつかこぼした。

小さく微笑んだ彼が、その手をゆっくりと動かす。

焦らされるように軽く、吸い付くような妖艶な手の動きに視界が滲む。

触れられるところが次第に熱くなる。

知らない感覚に飲み込まれそうになる。

俺はこんなことをされていていいのだろうか。

彼は親友で、それでいて再会したところなのに、こんな

恋人みたいなこと。


「ふふ、かわいい」

「…俺、?」

「きんときしかいないよ」

「…、そ、か」


身体があたたかくなって、思考が溶けていく。

眠い時のような、ふわふわとしたような心地でうつらと意識を彷徨わせる。

その時、ナカムがより一層顔を俺に近づけた。

細められた目が、慈しむような表情が俺を捉えている。


「…いーい?」

「……?」


微睡みに浸かる頭では何を問われているのかが分からなくて曖昧に頷く。

ニコリと笑ったナカムが俺の顔に添えていた手を離し、そのまま身を俺の方へと体重を預けた。

痺れたような身体は逆らうことなど知らず、気づいた時にはソファの座面に横になる俺に覆い被さるように彼がいた。

唇が優しく触れてから、あぁそういう質問だったのかとぼんやりと思った。


「好きだよ、ずっと昔から」

「おれ、は…」

「言わなくていいよ、これから好きにさせてみせるから」


夢に見るほど会いたかった。

押し倒されても嫌じゃなかった。

キスも、嫌じゃなかった。

むしろ今、有り余るほどの幸せが俺を支配している。

一緒にいて楽しくて、こんなに優しくて、俺のことを好きって言ってくれる。


「………き」

「え」

「…俺も、好き…だよ」

「………それ、本気?」

「なに、嘘ついてるって?」

「いや、その、急でびっくりして…。雰囲気で流されてない?本当にきんときの意思なの?」


さっきまでの余裕はどこへ行ってしまったのか、焦りを通り越して慌てるナカムに思わず笑いが漏れる。

こんなに愛おしいのか、意識した途端に好きだという気持ちが湧き上がってくる。

顔を真っ赤にしたナカムにそっと手を伸ばす。

そのままナカムの顔を引き付けて、軽く唇を重ねた。


「…!」

「…本気だよ、ちゃんと俺の意思」

「きんとき…!」

「う゛っ」


泣きそうな顔をしたナカムが俺の身体をきつく抱きしめてきて思わず呻く。

手を背中に回して抱きしめ返すと、より感じられる体温が甘く心を緩く溶かしていく。


「きんとき、大好き、愛してる」

「…うん、俺も愛してる」

「ふふ…嬉しすぎて、飛んでるみたい、ふわふわする」

「俺なんかずっとぼんやりしてるよ、溶けてくみたいな」

「きっとそれが幸せだよ」

「これかぁ、幸せ」

「ね、もっと幸せになろ?」

「…それって」

「もちろん続き、いいでしょ?」


彼の匂いが鼻腔をくすぐった。

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