「であるからにして、43期を終えてみての率直な感想としては、営業件数、営業売り上げ、ともに42期を大きく上回り――――」
「ーーー長いわ、話が」
「こらっ」
社長の訓示にぼやく朱莉を、巻き舌の吉野が肘で突っつく。
「なあ」
後ろに並ぶ柳原が彩加に顔を寄せてくる。
「健康長寿センターに提示した、手首型血圧計の相見積もりどうなった」
「先週提出してからまだ反応がありません」
彩加も小声で返す。
「ーーーそうか。今日ちょっと探りを入れてみる」
「お願いします」
笑顔で振り返ると、柳原はその顔を見て、睨むように見下ろした。
「どうかしました?」
「いやーーー。いいや」
ため息をつきながら頭を掻く上司を不思議そうな顔をして彩加が見上げる。
「けっ。見せつけてくれるわね」
奈緒子が愛に顔を寄せる。
「ほんとですね。朝礼後に配るコーヒーに、試供品の下剤を入れてやりましょう」
「ーーーどっちに?」
「もちろん、課長に」
二人でこっそり吹き出す。
「というわけで、44期も頑張っていきましょう!」
社長の訓示が終わった。
「それでは皆さん、社是の唱和お願いします」
部長が声を張り上げる。
奈緒子が小さい身体を精一杯、伸ばす。
彩加が長男にいつの間にか腹につけられていた車のシールを慌てて剥がす。
朱莉が欠伸を噛み殺しながら首を回す。
愛がフウと息を吐きだし、口を引き締める。
『全ては、お客様のために』
【女女の25時 ~(株)長澤医療販売編~ 完】
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