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「ドル?」
ドルってなんだ。俺が疑問に思っていると、偉二さんはニコッと笑う。
「って言ってもわかんないよね」
「あ〜…うん。ごめん」
「いいよ。今から説明するね」
「うん」
「ドルっていうのは…う〜ん…なんて言ったらいいかな…」
そこで偉二さんは考える素振りを見せた後、また口を開く。
「特定の行動をすると、相手を従わせることが出来るんだ」
特定の行動?相手を従わせることができる?俺の頭にハテナが浮かぶ。
「ごめんちょっとよくわかんない」
「わかんないよね。僕の場合は目を合わせる事なんだけど。ほら、この間のYouTuber、僕の言う通りにしてたでしょ」
「あぁ…」
そうか。あのYouTuberが素直に偉二さんの言うことを聞いたのは、ドルの力だったのか。
「なるほどね、急に大人しくなったと思ったら、ドルの力だったんだ」
「そうそう。でも、副作用みたいなのもあってさ」
「副作用?」
「そう。眠くなっちゃうんだよね。ちょっと使うだけならあくびが出るだけなんだけど、言葉とか時間によって眠っちゃう時間が変わるの」
「あぁ…だからあの後寝てたんだ。30分くらい寝てたよね」
「そう、2人だったし結構何個も命令しちゃったからね」
そう言って偉二さんは苦笑いした。あの時何も出来なかった俺は申し訳なくなって偉二さんに謝る。
「ごめん、迷惑かけて」
「いいのいいの。おかげで奏人くんと仲良くなれたし」
偉二さんはニコニコ笑いながらそう言う。
「それに、今は恋人になれたんだもん。夢みたいだよ」
そういった後、偉二さんは嬉しそうに笑う。そんな偉二さんを見て、俺も笑顔になった。そして、俺の中の好奇心が動く。
「ねぇねぇ、ちょっとさ、俺に使ってみてよ」
「いいけど…」
そこで止まる偉二さんの目を俺はじっと見る。偉二さんは少し考える素振りを見せた後、俺と目を合わせた。
『こっちおいで』
その言葉に反応して、俺の体は自然と偉二さんの方に行く。
『ほっぺにチューして?』
俺は迷うことなく、偉二さんのほっぺにキスをした。偉二さんはふふっと笑う。
「どう?」
「いや、どうって…」
俺は今、偉二さんにおいでって言われて、普通に偉二さんのとこに行った。ほっぺへのキスだって、別に俺は嫌じゃなかった。でも確かに、いつもの俺ならキスするのを少し躊躇するだろう。でも今回は、迷いなくキスした。これがドルの力なのだろうか?そんな事を考えていると、偉二さんは何か企んだような顔で言った。
「…もっと分かりやすいことにしよっか」
俺は、少し嫌な予感がして慌てて偉二さんに聞く。
「そ、それって…なんかその…変なことだったり…」
「それは…やってみてからのお楽しみ」
そう言って偉二さんはニコッと笑い、俺の目をじっと見る。
『ベットに行って寝転がって』
偉二さんがそう言った途端、俺の体はベットへ向かう。そしてそのまま寝転がった。不思議な感覚だった。勝手に体が動いているというより、突然、ベットで寝転がろうと思った。偉二さんもこっちに来て、俺の上に覆いかぶさった。
「じゃあ、しよっか」
俺が喋る隙も与えず、偉二さんは俺に唇を重ねる。
「ん…」
そして、もう一度唇が重なる手前で、偉二さんは顔を上げ、ふふっと笑った。
「しないよ?」
「えっ」
「言ったでしょ?今日はもうしないって」
なんだそれ。ムカつく。俺は起き上がろうとする偉二さんの腕を掴んだ。
「…キスくらいならいいでしょ」
俺がそう言うと、偉二さんは一瞬フリーズした後、俺にキスをした。
何度か唇を重ね、舌も絡め合った。
「んっ…」
しばらく続けた後、偉二さんは顔を上げ、俺の頭を撫でる。
「もうおしまい」
「…なんで」
「大事な話があるんだ」
大事な話。ドルの話じゃないのか。
「何?」
「ドルの話、したでしょ?それは信じてくれた?」
「うん…まぁ…何となく」
「今から言うこと、ちゃんと覚えといてね」
「わかった」
俺がそう返事すると、偉二さんは真剣な表情をした。
「今から奏人くんにドルの力を分けるね」
「…力を分ける?」
「うん。でも、使えるのは1回だけ。だからどうしてもって時に使って」
どうしてもって時か。どんな時だろう。
「例えば?」
「う〜ん…例えば…僕が奏人くんに酷いことをした時とか」
酷いこと?偉二さんが酷いことをすると思えない。
「偉二さんが酷いことなんてしないと思うけど」
「そうかな?僕、奏人くんのことになるとその…理性抑えられなくなったりするから…」
なんだそれ。なんか恥ずかしい。
「もし僕が奏人くんを襲ったりしたら遠慮なく使って?」
「…わかった」
「それと、あのYouTuberとか、夏祭りの時の人達みたいに、嫌だと思った時とか」
「あぁ…なるほどね」
「まぁ、1回だけだからあんまり意味ないかもしれないけど」
そう言って偉二さんは苦笑いする。
「まぁ、ないよりはマシだと思うから」
そう言った後偉二さんは、俺のデコにデコを合わせた。
「「奏人くんに力を分けてください」」
5秒ほどデコを合わせた後、偉二さんは顔を上げる。
「できた」
これでドルの力が分けられたのか?何も変化を感じない。俺が不思議に思っていると、偉二さんはふふっと笑った。
「使うまでは実感ないかも。使いたい時は相手の目を見て、こう、頭の中で俺の言うことを聞け!って思いながら言葉を発してね」
「わかった…」
「うん。いい子だね」
偉二さんはニコニコと笑いながら俺の頭を撫でる。わかったとは言ったものの、実感がないからよく分からない。まぁ、使う時に分かるか。俺はそう思って偉二さんに笑い返した。
それから数日が経過した。その間に偉二さんは話しかけてくるお客さんに笑顔で接するようになった。
俺が祭りの時に言ったから、気をつけてるらしい。
俺だけに向けられていた笑顔が色んな人に向けられるのは少し嫉妬した。というのは偉二さんには内緒だ。
そして最近、きらくにの人気が上がり、さらに忙しくなった。接客が俺一人じゃ手が回らない程に。
そのため、お父さんはバイトを雇うことにしたらしい。バイトは意外とすぐに見つかった。お父さんが面接をし、今日から働くらしい。俺は今日、初めて会う。そして始業時間前。
ーチリンチリン
始業準備をしていた俺は、扉の開く音がして、俺は扉の方を見る。男性だった。歳は多分、俺と同じくらい。そしてその人は見覚えがある気がした。なんとなくだけど。その人は俺の近くまで歩いてきた。
「今日からお世話になります。葛西優樹です。」