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富来 えび
210
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その叫び声は小田原城や、他の陣にまで届いていた。
多目元忠はその声を聞き、ちらっと氏康の方を見る。
「むっ……!この声は長尾景虎殿……
さては…あの一件で怒られておるな笑
おそらく叱っているのは長尾政景殿であろうな。 親近感がわくわ、ははははは」
視線を感じた北条氏康は、少し気まずそうに答える。
「………はい、賭け事は…辞めます。
きちんと総大将らしい…振る舞いをします」
多目元忠はため息をつく。
「分かれば良いのです (´^ω^`)ハァ…」
すると北条幻庵が呆れたように怒鳴る。
「できるなら最初からそうせんか、馬鹿者💢💢」
「……申し訳ございませぬ、叔父上……」
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長尾軍陣地
景虎は、目の前で未だ怒りの収まらぬ
政景に、 おそるおそる声をかける。
「なあ、政景……。そろそろ怒るのは勘弁してもらっても……!!!」
政景は、険しい顔のまま答える。
「なりませぬ💢💢総大将としての心持ちが、 足りておりませぬからな」
「でも、総大将として、諸将に指示を出さねばならんから……な……!そろそろやめようではないか。 反省しているから……」
景虎が必死に訴えると、政景は少し考え込む。
「確かに、それは……ふむ……」
そして、景虎をじっと見つめる。
「では、包囲中の間、酒を禁止することで
私は手を打ちましょう」
「😱そんな!!最低でも一月は飲めない……!」
「何か……ご問題でもありますか、御館様💢💢」
「……あ、ありません……泣」
景虎は、がっくりとうなだれた。
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武田軍陣地
方円は、伝令兵から報告を受けていた。
「……とのことでして。 景虎殿は早期決着を狙うため、このような… お振る舞いを……」
「報告、ありがとう」
方円は苦笑する。
「やれやれ……政景殿のお説教には同情するけれど、これは仕方ないわね……。まさか、総大将の景虎殿がねえ……」
伝令兵も苦笑しながら頷く。
「ええ……まことに……某も、あれを見て肝を冷やしましたから」
「しかし、想定はしていたけれど……これはやっぱり長くなるわね。
まあ、向こうには他国の支援がないし、 こちらは徹底した包囲ができておりますから。
こちらが勝つまでの辛抱なのだけれど……」
方円はそう言ってから、伝令兵へ微笑みかける。
「とにかく、さっきも言ったけれどありがとうここには お茶しかないけれど、飲んでから景虎殿のところへは帰ってちょうだい」
「なんと……ありがたき幸せ。では、遠慮なくいただきます」
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関東 ???
佐竹義重は、送られてきた報告書に目を通していた。
「……ええ……景虎殿が……。嘘だろ…!
おい……!?」
それを聞いた佐竹兵も、驚いた顔をする。
「まさか……あの総大将殿が……!?」
義重は報告書を見つめたまま、呆れたように呟く。
「万が一、討ち取られていたらどうするつもりだったんだ……! 一騎打ちを受けた里見殿といい……将としての自覚が無さ……」
佐竹兵が慌てて義重を止める。
「ストップ!ストップ!!」
「これ以上言うのは…、本当にまずいです!」
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関東 川越城
伝令兵からの報告を聞き、長野業正は思わず目を丸くする。
「……?!」
憲政は、苦笑いを浮かべながら呟く。
「^^; ほほほ……景虎殿……」
業正も報告の内容を改めて思い返し、苦笑する。
「憲政様……笑、これは……笑、景虎殿……笑
政景殿に大声で説教されているということは……」
憲政も、堪えきれないように笑う。
「ほほほ……。周囲には確実にバレておるであろうの。 敵味方問わずのお……笑」
業正は遠い目をしながら呟いた。
「総大将殿…………泣」
ーーー
その頃小田原城では――
北条綱成が寝不足の顔でぼやいていた。
「くそう……毎日、毎日、毎日、毎日、
夜中に爆音を鳴らしやがって💢💢
ゆっくり体を休められねえじゃねえか」
氏康が首を傾げる。
「そうかお前は、熟睡していたような??」
すると幻庵が即座に突っ込む。
「わしは寝れなかったし、
綱成も元忠も氏政も寝ておらん。
寝ていたのはお主だけだ、氏康」
「えっ……」
(記憶が違う……泣)
多目元忠が、氏康へおそるおそる声をかける。
「……殿? 本当に綱成殿が寝ていたと思っておられたのですか?」
「ああ……正直、混乱しておる……」
北条幻庵が、呆れたように口を開く。
「お主は、すやすやと寝ておったからの💢
あの爆音で寝られるとは、大したものだが……」
そして、さらに呆れたように続ける。
「総大将が真っ先に寝るとはのぉ……。
皆が寝られておらぬというのに💢💢」
「いや、某は決して寝てな……」
その瞬間――
全員から、見事なまでの怒りの総ツッコミが飛んだ。
「……泣」
そうして、お互いに決め手がないまま、
無駄に時間だけが過ぎていった。
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長尾軍陣地
長尾政景が周囲を見渡しながら、景虎へ声をかける。
「さて、一月以上経ちましたな……」
「うむ…全ての陣へ交代の命の書簡を出せ。
……結局、誘い出しはできなんだか…」
政景は驚いたように景虎を見る。
「御館様……まだ……諦めておられなかったので?!」
「ああ……正直、何とか誘い出して早期決着をしたかったのだがな……」
景虎はそう言ってから、ふと政景を見る。
「で、交代ということは……酒は……✨」
政景は、やれやれとため息をつく。
「仕方がありませんね……解禁とします。
ですが、それは川越城まで無事に戻ってからです。 あと、量は控えてくださいね……?
でなければ……💢」
それに景虎は慌てて返す
「わかった、わかった……から……!!!
酒は程々にするから……!!!
落ち着いてくれ、 政景!!!」
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関東 ???
佐竹義重は兵たちに指示を出していた。
「お前たち、総大将殿から交代の命が来た。
間違っても、里見勢のような大きな戦果は
期待するな。
我らの仕事は、海から小田原城を包囲し、
北条に食糧を補充させないことだ」
佐竹兵たちが一斉に返事をする。
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関東 川越城
長野業正が、憲政へ声をかける。
「憲政様、交代でござる。景虎殿の言うことを きちんと聞いて、この川越城で待っていてくださいね……?」
「わかった。本当はついて行きたいが……
我慢いたす……」
上杉憲政は、少し寂しそうに笑う。
「気をつけるのだぞ、業正。知っている者が…… いなくなるのは……また帰ってこなくなるのは…」
少し言葉を詰まらせ、憲政は続ける。
「本当に……こたえる……!!」
「無事にまた憲政様の元へ帰ること、
武士の名にかけてお約束いたす!!!」
長野業正は、力強く答えた。
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甲斐国 岩殿城
「さて…皆の者!!総大将殿から交代の命が来た」
(ちっ、景虎殿の命令なんぞ聞きたくはないのだが…方円殿の命だと思えば………)
成田長泰がそう言い兵たちを見る。
「山中訓練のおかげで、体力はかなりつきましたよ……」
成田兵が胸を張って答える。
「方円殿にならい、昼の部隊と夜の部隊に分かれて嫌がらせするのだ」
「はっ……!あの降伏の屈辱、此度の戦で
思いっきり北条の連中には返してやりましょうぞ!!!」
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それから数日後ーーー
小田原城――丑三つ時。
「ばばばばばばばばばばん!!!」
「くっ……またか……!!」
北条幻庵が顔をしかめる。
多目元忠も苦々しく呟く。
「まさか……交代するとは……!?」
綱成が立ち上がる。
「そろそろ城から出ねえかい?流石に
これは…思いっきり、返してやりたい」
その横では――
「ぐうぐう……」
氏康が気持ちよさそうに眠っている。
氏政が父を見ながら呆れる。
「なんで寝れるかなー」
風魔小太郎も外の様子を警戒しながら呟く。
「交代包囲とはな…… 向こうは実質、体力が無限にあるようなものだ…… 厄介な……」
すると幻庵が氏康を睨みつける。
「くっ……こやつ、起きぬか!」
幻庵は氏康を蹴り飛ばす。
「ぎゃっ……!!」
しかし――
「スヤスヤ……ぐうぐう……」
綱成が目を丸くする。
「おおう…!!幻庵殿の本気の蹴りでも
起きねえか、義兄者!」
「こやつ💢 呑気に寝おって!」
幻庵が怒りを露わにする。
氏政も唖然とする。
「まじか……父上……」
元忠は頭を抱える。
「殿……泣」
小太郎も呆れ果てる。
「……くそっ、あいつら。
そして起きてくれ、殿ー!!」
┐(´д`)┌
綱成は懲りずに外を見ながら言う。
「ということで、敵軍を奇襲するぞ。
全軍!!我に続――」
「ダメに決まってるだろう!!!💢💢」
幻庵たちが一斉に止める。
綱成は不満そうに振り返る。
「えええ……。 いい加減でようぜ。
そんなに一斉に怒らなくてもさー。
このままだと本当に落ちちまうよ笑」
その時、瑞渓院が静かに姿を現した。
「……夫はこの状況で寝れるのですね」
氏政が母を見る。
「は……母上。 もしや母上も…この爆音で
寝れていなかったのですか?」
「ええ」
瑞渓院は眠そうな顔で答える。
「せめて自分たちが叫ぶのは辞めます」
氏政が申し訳なさそうに頭を下げる。
すると氏康以外の全員が一斉に頭を下げた。
「……申し訳ございません、奥方様……泣
配慮が足りませんでした……泣」
しかし――
「ぐうぐう……スヤスヤ……」
氏康だけは未だに寝ている。
瑞渓院の眉がピクリと動く。
「起きなさい!! みんな起きていますよ💢💢」
「ボカボカ!! ドスッ!!!」
「スヤスヤ……」
「起きなさい!!💢この!!」
「ボカッ!ドスッド スッ!!」
「ぎゃっ! 痛い……お方……やめてくれ。
殴るのは……殴るのはやめてくれ泣」
ようやく氏康が目を覚ます。
全員が顔を見合わせる。
「あっ、父上ようやく起きた笑笑」
「奥方様、ナイスー!」
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氏康は気まずそうに皆を見る。
「……その」
全員が無言で氏康を見つめる。
( ^ω^ )
「……本当にすいません。 わしだけぐっすりと…寝てたみたいで」
すると綱成が話を切り替える。
「なあ、そろそろ打ってでないか?
さっきも言ったが、城にいるだけじゃ
勝つことは決してできないし、それどころか
これは負けてしまうぞ」
小太郎もそれに頷く。
「そうだな……。 川越の時のように夜戦に
かけるか」
氏康が口を開こうとする。
「………あの」
しかし全員から即座に遮られる。
「寝てた殿(父上)は発言権ないですから」
「泣」
その直後――
「ばばばばばばばばばばん!!!」
幻庵が堪らず頭を抱える。
「本当にうるさいのぉ💢💢」
氏康は外から響く銃声を聞きながら心の中で呟く。
(夜中にこれがずっと続いていたとは……
わしはなんで寝れていたのだ???)
氏政が真剣な表情になる。
「たしかに綱成の叔父上が言う通り、
そろそろ攻めに転じないとまずいかも。
向こうは交代で体力が無限だから」
一同は顔を見合わせる。
「うむむむむむ……いつ行くべきか」
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成田の陣。
成田兵が戻ってくる。
「成田様!今夜も指示通り睡眠妨害して
まいりました!」
「うむ、ご苦労……」
成田長泰は大きなあくびをする。
「流石に眠いから寝る。あとは頼……」
「ぐうぐう……」
「はっ……オヤスミナサイマセ」
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海上。
佐竹義重が海を眺めながら苦笑する。
「まじで海、やることないな笑 里見の兵に
言われて遊技の道具を持ってきていて良かったな笑」
佐竹兵が声をかける。
「殿、夜の監視は我らにまかせていただいてよいのですよ」
「いや、俺は元々夜の方が好きだからな。
星を見るのが好きなんだ……」
「なら監視しながら、少し遊びますか笑」
「だな笑、はははは」
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長野の陣。
長野業正は小田原城を眺めながら、
静かに笑う。
「ふっ……逆賊北条め。 明らかに動揺しておるわ。こうして 交代するとは…夢にも思わなかったのであろうな笑」
「その慢心に気を緩めず、憲政様の為我らが遠慮なく 勝たせていただくぞ!!!」
そして少し考えた後――
「ふむ…、 少し寝て体を休めるか」
上杉兵がすぐに返事をする。
「はっ、長野様、おやすみなさいませ。
あとは夜間担当の我らにおまかせを」
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そうして北条家では――
絶望の夜が続くこととなる。
コメント
1件
よみおわったよ〜!😆💕 今回も北条家のほのぼのコメディ炸裂してて笑ったw 特に「ばばばばばん」の騒音の中ですやすや寝てる氏康が最高すぎる!!笑 瑞渓院が殴って起こすシーン、ナイス奥方すぎた😂✨ 景虎の酒禁止もかわいそうだけど面白かった〜! 交代包囲でじわじわ追い詰める作戦、北条さんが絶望してるのがなんか微笑ましい🤭💕