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最近、SixTONESのYouTube更新を楽しみにしてるファンの間で、少しずつざわつきが広がっていた。
「また爽亜いないじゃん…」
「最近ずっと出てなくない?」
「スケジュール合わないだけだよね…?」
爽亜はグループ唯一の紅一点。バラエティでも自然体で、でもどこか芯が強くて、SixTONESの空気をやわらかくする存在だった。
けどここ数ヶ月、YouTubeの撮影にはほとんど参加できていない。
理由ははっきりしている。ドラマに映画、雑誌の表紙——女優としての仕事が一気に増えたからだ。
最初はメンバーも軽くいじっていた。
「爽亜また売れっ子だから来れません〜ってか?」
「俺らより忙しいんじゃね?」
笑いながらも、どこか誇らしげだった。
でも回を重ねるごとに、その不在は“当たり前”みたいになっていって。
コメント欄には少しずつ不安の声が混ざり始める。
「このまま女優に専念するのかな…」
「SixTONESとしての爽亜、もう見れないの?」
ある日の撮影後。
楽屋で、誰もいないタイミングにぽつりとジェシーが言う。
「さ、ちょっと無理してんじゃないのかな」
誰に向けたわけでもない一言に、空気が少しだけ静まる。
大我が小さく息を吐いて、
「でもさ、あいつ絶対“やめる”とか言わないタイプじゃん」
「うん、むしろ限界まで両方やろうとするタイプ」
と北斗も続ける。
樹はスマホをいじりながら、
「だから余計にファンが心配してんだろ」
慎太郎がぽつり。
「俺らが一番わかってあげないとじゃない?」
その言葉に、全員が少しだけ顔を上げた。
その頃、爽亜はドラマの撮影現場で。
長いセリフを言い終えたあと、ふっと息をついて、マネージャーから差し出されたスマホを見る。
そこには、更新されたSixTONESのYouTubeの通知。
少しだけ迷ってから再生して、画面越しに笑うメンバーを見て、思わず小さく笑った。
「…帰りたいな」
誰にも聞こえない声。
でも次の瞬間には、また女優の顔に戻って、「はい、次お願いします」と前を向く。
ファンの不安も、メンバーの想いも、全部知ってる。
それでも今は、どっちも手放したくない。
そんなギリギリの場所で、天羽爽亜は立ち続けている。
それは、仕事終わりの夜だった。
珍しく、7人全員のスケジュールが揃った日。
誰が言い出したわけでもなく、「集まる?」って流れになって、静かな個室に集まった。
最初はいつも通り。
「久しぶりじゃん」
「マジでいつぶり?」
軽口を叩いて、笑って、食べて。
空気は穏やかだった——はずなのに、
どこか全員、同じことをわかってる感じがあった。
話題が一瞬途切れたとき、樹がグラスを置く。
「でさ、どうすんの?」
その一言で、空気が止まる。
爽亜は少しだけ視線を落として、それから顔を上げた。
「…何が?」
時間を稼ぐみたいな返し。でも逃げてるわけじゃない。
北斗がまっすぐ言う。
「グループと、仕事」
逃げ場のない言葉だった。
沈黙。
数秒なのに、やけに長い。
やがて、爽亜が小さく息を吐く。
「…どっちも、やりたい」
ジェシーが苦笑する。
「それ、いちばん大変なやつじゃん」
「わかってるよ」
少し強く返してしまって、自分でも「あ、」ってなる。
でも、もう止められなかった。
「わかってるけど、やりたいの」
声が少し震える。
「SixTONESも、女優も、どっちも“仕事”って感じじゃないから」
大我は何も言わず、ただまっすぐ聞いてる。
慎太郎も、いつもの笑顔じゃなくて真剣な顔。
爽亜は続ける。
「でもさ、正直…怖い」
初めての弱音。
誰も茶化さない。
「このまま中途半端になって、どっちもダメになるんじゃないかって」
ぎゅっと手を握る。
「YouTubeも出れてないし、ファンにも言われてるの知ってるし…」
少しだけ声が掠れる。
「“女優に行くんでしょ”って」
その瞬間、樹が即座に言う。
「は?行かねーだろ」
間髪入れない否定。
爽亜が少し驚いて顔を上げる。
北斗も続く。
「お前が決めるなら別だけど、“そう思われてるから”で決めんなよ」
ジェシーが笑いながら、
「てか俺ら、そんな簡単にメンバー減らす気ないんだけど?」
空気が少しだけやわらぐ。
大我がそこで初めて口を開く。
「爽亜がさ、今どっちもやりたいって言ったじゃん」
ゆっくり、言葉を選びながら。
「じゃあそれでいいじゃん」
一瞬、間を置いてから続ける。
「大変なのは、俺らも一緒に背負うし」
その一言で、空気が変わる。
爽亜の目が揺れる。
慎太郎が少し笑って言う。
「YouTubeなんてさ、別に毎回いなくてもいいじゃん」
「たまに来て、めっちゃ笑ってくれればそれでいいし」
「その代わり来たとき主役な?」
ちょっとふざけた言い方。
でも優しさがちゃんとある。
爽亜は、何か言おうとして、言葉が出なくて。
代わりに、小さく笑う。
「…ずるいよね、みんな」
「何が?」と樹。
「引き止め方」
少し涙が滲んでるのを隠しながら、
「こんなん、やめるって言えるわけないじゃん」
全員がふっと笑う。
樹が短く言う。
「言わせねーし」
——
少し空気が落ち着いたあと。
でも、爽亜の中にはまだ言えてないことがあった。
ここで終わらせたら、また同じになる気がした。
爽亜はもう一度、顔を上げる。
「…あのさ」
全員の視線が集まる。
「今やってる映画、終わったら——」
一瞬、言葉を選ぶ間。
「一旦、SixTONESの活動にちゃんと戻りたい」
静かに落ちたその言葉。
驚きというより、“受け止める”空気。
爽亜は続ける。
「中途半端なまま続けるの、嫌で」
「だったら一回ちゃんと区切って、グループに集中したい」
「女優の仕事が嫌になったわけじゃないよ」
すぐに付け足す。
「むしろもっとやりたい。でも——」
少しだけ目を上げる。
「SixTONESとしての時間、今ちゃんと向き合わないと後悔する気がする」
静かな時間。
ジェシーが一番に頷く。
「…いいじゃん、それ」
北斗も小さく頷く。
「ちゃんと考えたやつだね」
樹は少し安心したように、
「それ言えてよかったじゃん」
大我は、少しだけ笑って言う。
「じゃあ忙しくなるね、俺ら」
冗談っぽいけど、嬉しさが滲んでる。
慎太郎はまっすぐ。
「普通に楽しみなんだけど」
その一言で、空気がふっと軽くなる。
爽亜は少し戸惑いながら、
「…いいの?」
と聞く。
樹が即答する。
「ダメって言う理由ある?」
北斗も続く。
「むしろそのほうがやりやすいし」
ジェシーが笑う。
「帰ってくる場所ちゃんとあるから安心して行ってこいってやつね」
爽亜は一瞬、言葉を失って。
それから小さく笑う。
「…なんかさ」
「うん?」と大我。
「ちゃんと“戻る場所”って思っていいんだよね」
少しの間。
大我が静かに言う。
「思うんじゃなくて、そこだから」
優しくて、でも揺れない言い方。
その一言で、張ってたものがほどける。
爽亜は視線を落として、小さく笑う。
「…よかった」
誰にも聞こえないくらいの声。
でも、ちゃんと全員に届いていた。