テラーノベル
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午後15時すぎ。折り紙のランチ営業を終え、一息ついているところだった。お客さんのために点けていたテレビから、日経平均株価の大暴落を告げるニュースが流れた。過去最大の値下げ値だと言っていた。
睦月君…大丈夫かな。
今頃プレゼン頑張っている頃だろうな。それとももう終わったのかな?
なにか連絡した方がいいのかな。
「佑里香、睦月君どうだった?」
「まだわからないわ。きっと今、頑張っている頃だと思う」
「そっか…うまくいっているといいなぁ」
「そうだね」
彼のことだから凛とした姿で登壇し、卒なくプレゼンしちゃうんだろうな。家で何回も練習していたし、遅くまで資料作りやアイディア練ったりしていたもの。折り紙の玉子焼きが缶詰になってしまうなんて、信じられなかったけれど…。すごく斬新なアイディアだから、きっとうまくいくと思う!
今日は頑張っただろうから、家に早く帰ってご馳走したいな。
睦月君の好きなものをいっぱい並べて、喜んでもらいたい。
我ながら現金な女だとは思うけれど、睦月君に『愛してる』って言ってもらえて、すごく嬉しかったもの。
自分の気持ちに気が付くのに時間はかかっちゃったけれど、さっき伝えた気持ちはほんとうだから。頑張っている睦月君はキラキラしていて、私なんかと釣り合わないハイスペックな男性だと思うけれど、この週末に必死になってプレゼンに取り組む姿を見て、すごく素敵だなって思った。そしてそれは、彼が幼少期から見せる顔だったことに気が付いた。
テストの時や勉強の時、生活に必要なことを身につけている時、折り紙でお手伝いをしてくれている時――
睦月君はなにも変わっていないんだって思ったら、このまま家族として過ごしたいと考えてしまった。睦月君と再会して、最初はめちゃくちゃだったけれど、毎日が楽しいから。あの頃に戻ったみたいで、止まっていた時間がようやく動き出したような、そんな気持ちになれたから。
私にとって睦月君はかけがえのない存在の人。
幼いころから一緒にいる期間が長くて、立派な大人になった姿に戸惑ってしまって、自分の気持ちに気づくのが遅くなってしまったけれど。
『佑里香さん、愛してる――』
睦月君がかけてくれた言葉が蘇る。私も、睦月君を…。
口にしたり想いを伝えるのはまだ恥ずかしいけれど。
今日、睦月君が帰って来てくれたら、素直な気持ちを伝えよう。
終わったのかな。
連絡したいけれども…迷惑になったら嫌だな。
でも、いちばんに『お疲れ様』って言いたい。
電話は迷惑になるかもしれないので、メッセージを送った。
――プレゼンお疲れ様でした。よく頑張ったね。
帰ったら大事な話がしたいです。
自分の気持ちは、直接顔を見て言いたい。遅くなったけれど、あなたとほんとうの夫婦になりたいって。
不安がないと言えばうそになるけれど、睦月君と出会ったあの日から、私は彼と家族になったも同然なのだ。8年もの間、私は淋しかった。睦月君がいなくなってしまって、どうしていいのかわからなくなってしまった。
大切な弟が突然目の前から消えた喪失感は、私の心に計り知れない淋しさをもたらした。母を亡くした時のように、また、大切な人が私の傍からいなくなってしまったのだと認めるのが辛かった。
コメント
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うわあ…佑里香さんの視点、すごく沁みました。睦月君のプレゼンを心配しつつ「帰ったらご馳走したい」って思うところに、奥さんとしての自然な愛情が滲んでいて温かくなりました。それでいて「自分なんかと釣り合わない」って謙遜しちゃうのも彼女らしいなあ。最後の「大事な話がしたい」のメッセージ、ドキドキしながら送ったんだろうな…。自分の気持ちにようやく向き合えた佑里香さんを、心から応援したくなりました。続きが気になります!