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今回も最高でした! 兄弟間でのすれ違い本当に最高です!確かに兄弟から色々言われると堪えるな~って改めて思いました!
蘭ちゃん、、、竜胆達の話聞いてやってくれ,,,僕も止めに行きたいぃぃぃ!
3150👍🏻👍🏻 蘭がずっとかわいそうでかわいい🎶🎶
【竜蘭】
(10000文字)
○注意書きは1話参照です。
○色々適当。
○竜胆クズです。
*今更ですがキャラ崩壊注意
翌日。
九井と三途が一緒になって見舞いに来た。
「竜胆〜ちゃんと寝たかー?」
「…は?おい!蘭はどこ行った?!」
「おい竜胆!!起きろ!!蘭は!!蘭はどこ行ったんだよ!?」
「ん…え…?は…?兄ちゃん…?!なん、で…兄ちゃんは…」
そこで眠っているはずの蘭の姿が無くなっていた。
胸騒ぎがした。
それはその場にいた全員が同じで、一刻も早く蘭の元へ行かなければと考えていた。
3人慌てて屋上まで駆け上がって行けば、そこに蘭は無気力に立ち尽くしていた。
「おい蘭!!」
三途が声を上げると、蘭は酷く肩を跳ねさせた。
「蘭!!絶ッ対動くんじゃねぇぞ!!」
「蘭!戻ってこい!!」
2人がそう蘭に伝えると、蘭は急に膝から崩れ落ちるようにしてその場に座り込んだ。
「蘭!!」
三途と九井が駆け寄る。
「おい大丈夫かよ…?無理すんな」
黙り込む蘭を心配して三途が顔を覗き込むと、蘭の目は虚ろで何も映していなかった。
突然蘭が口を開く。
「…はなして。おれ、もう消えたいの。」
「ふざけんな!!」
「…なんで?」
「なんでって…」
「俺の気持ちも意思も全部ダメないらないもの。でも竜胆の思いは全部正しいの。これは竜胆が望んだことなんだから、正しいんでしょ?」
「なんだよそれ…お前の気持ちなんだから間違いなんてねぇし竜胆はそんなこと望んでなんか…」
「望んでるよ。俺なんて要らないの。邪魔なんでしょ?目障りなんでしょ?俺は、もう竜胆に愛して貰えない。俺が悪い子だから。」
「お前…」
「兄ちゃん」
先程まで少し離れたところで話を聞いていた竜胆が痺れを切らしたのか、いつの間にかこちらに来て、久しぶりに蘭のことを『兄ちゃん』と呼びながら後ろから優しく抱きしめた。
「…なん、で…?りんどう…」
「ごめんなさい。俺、勘違いしてた。兄ちゃんが浮気なんてするはずないって分かってたのに、あんな紙切れ1枚で兄ちゃんを疑った。兄ちゃんのこと、信じてあげられなくてごめん。話聞いてあげられなくてごめん。…こんなになるまで追い詰めてごめん…っ」
久しぶりに抱きしめた蘭の体は驚く程に痩せ細っていて、もしかしたら骨が浮き出てしまっているのではないかと思うほどだった。
普段から体温の低い体はいつにも増して冷たく、夏だというのにその体は酷く震えていた。
「…」
泣きながら謝り続ける竜胆を見ても、蘭の表情は変わらないまま、ただ一点を見つめていた。
「…蘭?」
心配になって呼びかけても、表情は変わらない。
「兄ちゃん。兄ちゃん。お願い。なんでもする。だから絶対。もうあんなことしないで。俺の事嫌いでも、話してくれなくてもいいから。絶対。死のうとなんかしないで。お願い。お願い…」
しばらく竜胆が蘭に話しかけ続けていると、突然蘭の様子がおかしくなり始めた。
「あ…あ”ぁ…ッあ…ふ、はっ…ひゅ…ッ」
「蘭?おい蘭。どうした?大丈夫か?」
「あ”あ~…あ、ふ…ぁう…」
過呼吸気味になりながら嗚咽を漏らし、目は焦点が合わなくなっていた。
「兄ちゃん…?ね…兄ちゃん…しっかりして…」
「はひゅ…ッ、かひゅ…ッはっ…はっ…ふ、っ」
すると、ポケットから複数の、いや。大量の錠剤を取り出してそれを口に含んだ。
「兄ちゃん…?ねぇ、それ何。ねぇ!兄ちゃん!!」
「竜胆落ち着けって!…蘭。それ何の薬だ」
「…」
「蘭!」
「…」
目覚めるとそこは見慣れない真っ白な天井で、自分は死ねなかったのだと理解する。
横を見れば点滴台が置いてあり、自分の腕に複数繋がっていた。
ここは病院だと確信し、ならば屋上から飛べると考える。
自分の腕に繋がっている点滴をブチブチと抜き、ベッドから立ち上がって、畳まれているスラックスのポケットから大量の錠剤を取り出し、逃げるようにして部屋から出た。
怖かったのだ。
それは点滴でも今いる病院でもなく、自分の横で眠っていた弟がである。
竜胆が目覚めて自分が起きたことを知れば、きっとまたたくさん罵詈雑言を浴びせられる。そうに違いない。
もう嫌だ。怖い。辛い。
早く、早く死にたいんだ。
もう二度と、あんな思いはしたくない。
嫌われたくない。
そう思えば思うほど、今まで言われた言葉がフラッシュバックしてくる。
錠剤を5粒ほど口に含みながら階段を上っていく。
この薬は即効性で効き目もそこそこ良い。だが、効用時間は短いのでそこが玉に瑕だ。
そのくらいの欠点がない薬ならば相当入手困難だろうが。
長い階段を上り終え、青い空が広がる屋上へと辿り着く。
「…今度こそ。」
思えば自分は竜胆に何をしてあげられたのだろうかと、ふと思った。
どうせ邪魔する人なんて誰もいないのだから、もう少しだけ心地よいこの風を感じてから飛ぼう。そう思ったのだ。
思い出に浸れば現実が辛くて苦しくなるから、最期にするのは反省にしよう。
何が悪かったのだろう。見れば直ぐに合成だとわかる写真なのにも関わらず、竜胆は少しも迷うことなく俺を疑った。
俺の思いを聞くことなんてせずに。
結局竜胆が聞いてきてくれた時には何も話せなかった。竜胆は待ってくれなかった。
吃っている俺を見て腹が立ったのだろう。でもそれは竜胆が怖かったから。いつもの優しい目で見てくれない竜胆が怖くて仕方なかったから。
リスカも何故かバレたけど、心配なんて1つもしてなくて、ただ俺を責めるだけだった。
そう考えてみると、俺って最初から愛されてなんてなかったんじゃないか?
愛してたら、もし俺が竜胆の立場だったら、きっと浮気疑惑が出たってリスカしてたらそっちの方が気が気でなくなるのに。
竜胆にとって俺ってなんだったんだろう。
ただの性処理役だったのかな。
遊ばれてただけだったのかな。
何日も何日もずっと。竜胆は毎日のようにクラブに行って、俺を1人家に残して1度も部屋になんて来てくれなかった。
そのおかげで俺はリスカもODもし放題だったけど、やっぱり1人は寂しかった。
でも、毎日ドア越しで話しかけてくれていた。
嬉しい言葉なんてひとつも無かったけど。
それでも最初は竜胆の声を聞けるだけで嬉しかった。
でも日に日に、竜胆がドアの前に来た瞬間が恐ろしくてたまらなくなっていった。
ドアの向こうから聞こえてくる声は優しい竜胆の声とは違くて、嫌いなヤツの相手をしている時と同じ声のトーン。
放たれる言葉は俺を罵る言葉ばかり。
多分、ストレスの発散口にしていたのだと思う。
機嫌が悪い時は一日に何度も来て身に覚えのないことを頻繁に言われていたから。
恋人関係を取り消したらそうやって良いように利用するんだから、やっぱり俺は都合のいいオモチャだったんだね。
少しでも役に立ててたかな。
「おい蘭。起きてんだったら早くこっち来て家事しろよ。」
「蘭、引きこもってねぇで買い物行けよ」
「夜中物音うるせぇんだけど。そっちは昼夜逆転しててもこっちは違ぇの。そんくらい分かんねぇの?ほんとバカって嫌い。」
「おい、洗濯しとけつったよな?なんでまだしてねぇワケ?引きこもってるだけのクセにさぁ…マジ役立たず。どっか行けよ。」
「ココがお前に会いたいってさ。連絡したけど返事こないって。わざわざ俺に言わせんなよ。時間ならたっぷりあんだからメールくらい見れるよな?こっちはお前なんかに時間割きたくないんだよ。」
「毎日部屋で何してるワケ?つーか飯食えよ。毎回余って無駄になんだよ。ほんと迷惑。」
竜胆は蘭に家事全般をやらせるようになったが、特別何かある時以外、食事に関しては一切蘭に任せなかった。
竜胆曰く、
「お前の作った飯なんか食いたくない」
だそう。
以前は気まぐれで何か作ってやるとこれでもかと言うほど喜んで幸せそうに食べてくれていたのに。
そのくせ食材は買いに行けと言うのだから酷いものだと思う。
竜胆が求めていたものと違うものを買えばことごとく叱られた。
その度に蘭は涙を堪えながら必死に謝り続けるしか無かった。
いつの事だったか。
竜胆が日用品を買いに行くついでに食材も買い足してこいと蘭に命令したとき、寝不足で頭の回らなかった蘭がうっかり頼まれた物と違うものを買ってしまった時があった。
帰宅して竜胆が買ったものをチェックし、自分が食べたい物を作るのに必要だった食材がないことに気付いて激怒した。
その日は竜胆の機嫌が非常に悪くて、そんなことを知る由もない蘭は酷く驚いた。
「なァ、蘭。お前ちゃんと俺の話聞いてた?」
「え…?はい…聞いてまし、た…」
「じゃあなんで無いワケ?俺言ったよな?これは絶対買って来いってさァ…」
「え…嘘…俺買ったはずじゃ…」
数十分前の自分の行動を思い出そうとした時、突然腹辺りに洗剤らしき物を投げつけられた。
「はっ…」
何が起きたのか分からず、ただじんわり痛む腹を押えてしゃがみこんだ。
すると竜胆は蘭を無理矢理立たせ、思いっきり髪の毛を引っ張った。
「いだ…りんど…痛い…」
「あ?うっせぇよ。黙ってろ。」
「ぁ…っ、ふっ…」
しばらく引っ張られたまま離してもらえず、声を出さないようにと必死だった。
その間いくつか暴言を放たれ、涙が溢れそうになった。
ようやく解放されたと思った途端、床に放り出されて、受身を取ることさえできなかったので背中に痛みが走った。
そして竜胆はまた、蘭に罵詈雑言を浴びせた、
「ホント使えない。お前何なら出来んの?何の役に立つの?買い物すらまともに出来ないとかクズすぎでしょ。マジで。そこらの女の方がよっぽどいいわ。あと用ねぇよ。邪魔だから俺が呼ぶまでもうこっち出てくんな。」
「…」
「返事もできねぇのかよ?おい。」
「…ごめん、なさ…」
「声ちっせェんだよ!!このクズが!!」
「…っ、あ…」
「目障り。どけよ。」
「は、い…」
この夜はいつも以上に耳鳴りと頭痛が酷く、寝ることは愚か、水分を摂ることすら億劫だった。
自分は何も出来ない。何の役にも立てない。
そんな自分に生きている価値など無い。
止まらない涙で視界が悪い中でひたすら腕を切って、ありったけの薬を飲んで、眠りについたのは昼前だった。
それでも起きたのは17時頃なのでまだまだ眠い。
竜胆はと言うとクラブに行ったようで、1人でいられて気楽…のはずだったのに、何故か寂しいように感じた。
昨夜言われた言葉を思い出して、また辛くなって、頭を思いっきり床に打ち付けた。
「…そこらの女の方がいいなら、俺なんか追い出して女と付き合えばいいじゃん…」
じんじんと痛む頭よりも、ギュッと締め付けられる胸が何より苦しくて、辛くて、死んでしまいたいといつも以上に思った。
この一件以来蘭は、家事をするのも買い物に行くのも怖くて慎重になった。
特に買い物は心配が膨れ上がり、足が動かなくなってしまうこともあった。
もし何か買い忘れていたら。
もし何か間違えて買ってしまっていたら。
そう考えると、以前竜胆にされたこと、竜胆から放たれた言葉がフラッシュバックして過呼吸と強烈な吐き気に襲われる。
帰りにコンビニや公衆トイレ、最悪な時は路地裏などで吐いてしまうこともあった。
スーパーに向かう途中で倒れてしまうこともあった。
完全に蘭の中でトラウマと化していたこの一件は、蘭の頭から消えてくれる事はなかった。
「おい蘭!!」
『は、はい…なん、ですか…』
「チッ…クソが!!」
『なん、で…?俺、また何かしちゃった…?』
「うっせぇ!!黙ってろ!!」
『ごめ、なさい…』
「…クソ…」
『…』
「なぁ、浮気しといてごめんなさいも言えねぇの?」
『謝ったじゃん…』
「は?1回だけだろ。俺が許すまで謝れよ。ま、絶対許さねぇけど。」
『…ごめんなさい』
「声ちっさ。」
『ごめんなさい…』
「何が?ちゃんと分かるように言ってくんね?」
『…浮気、して、ごめんなさい…』
「ソレ、認めてるから謝ってるんだよな?」
『…』
「無視してんじゃねぇよ!!!!」
『あ…ごめ、…』
「クソうぜぇな。マジ腹立つ。なんでこんなヤツ好きだったんだろ。」
『りんど…』
「話しかけてくんな。てかお前家いたってほとんど何もしねぇんだからどっか行けよ。邪魔。」
『ぁ…は、い…』
「3時間は帰ってくんなよ。」
『わかり、ました…』
「だったらとっとと出てけ。」
『…はい』
1度だけ、竜胆がリビングで誰かと話している時に聞こえてしまった言葉があった。
多分その時の竜胆は泥酔していたのだろうが、蘭の話をしている事ははっきり分かる程度にはまともに話をしていた。
一緒にいた人物が誰なのかは全く分からなかったが、親しげに話をしていたと思う。
「んでさァ、最近ずぅっと部屋に引き篭もりっぱなし。飯もロクに食わねぇんだぜ?」
「マジかよ?!大丈夫なのか?それ。」
「知らねー。クソ迷惑だけどな!」
「迷惑?何が。」
「飯が余んだよ!毎回さァ。炊かなかった時に限って飯食いたいなんて言われたら面倒だから毎回炊くんだけど食わねぇから余んの。」
「聞けばいいじゃねぇか。炊く前にさ」
「できるだけ話したくねぇんだって!引き篭るようになってからなーんか弱々しくてさァ。こっちが気遣うんだよ。」
「ンだよそれ。お前蘭のこと大好きだろ。」
「いつの話してんだよ。…今はもう恋人じゃねぇんだから。」
「それでも好きなことに変わりはねぇんだろ?」
「だー!この話やめようぜ?」
「ツンデレか!」
「黙れ殺すぞ」
「ガハハ!!」
楽しそうな雰囲気で話していたこの時まではまだ良かった。
蘭からしてみれば本人がいるのにも関わらず平気で悪口を言う竜胆に、”聞かれても構わない”、”傷付いたってどうでもいい”などと思われているのだろうと思い込んで辛かったことに変わりはないが。
それに、”気を遣う”だなんてどの口が言っているのか。
蘭は引き篭るようになってから1度たりとも竜胆に気を遣って貰ったことは無い。
大好きだった。つまり今は好きじゃない。
恋人でもない。
ならば自分は何故ここにいる?
兄弟だから?
良いように利用して家事を任せっきりにして気に食わなければ怒鳴り立てて罵られる兄なんて、いない方がいいのでは無いだろうか。
口に出さないだけで本当は竜胆もそう思っているのかもしれないが。
この数分後に薬の副作用で眠ってしまい、竜胆達の話は聞かずに済んだのだが、1時間ほどで目が覚めてしまった。
タイミング悪く、目を覚ました時に竜胆達の会話がまた耳に入ってきてしまった。
「あーあ、ほんっと死んでくんねぇかな。アイツ」
「まぁたンなこと言って。無理な話だろ。」
「だよなァ…あーマジウザ。アイツ俺大っ嫌い。」
「言われなくても分かるわw」
「だぁってウザすぎんじゃん!」
「ンなの幹部全員思ってるっての」
「早く追い出そーよー」
「まぁまぁ、もう少しの辛抱だろ。」
こんな話を聞いて、当たり前のように生きていくなんて蘭には到底無理だった。
聞かなかったことにするのも、何も気にせず流してしまうこともできなくて、ただ涙を流すことしかできない惨めな自分に嫌気がさした。
ドア越しということもあって竜胆の話し相手が誰なのかは分からなかったが、恐らく天竺の幹部の誰かだろう。
自分は誰にでも嫌われるんだなと心を痛めた。
蘭の名前は出なかったが、数時間前に自分の話をしていた時と同じようなノリだったのでほぼ間違い無く蘭の事だろう。
竜胆はともかく、幹部全員にそう思われる程の事をしただろうか。
もしかしたら、抗争や集会の時の言動から嫌われてしまっているのかもしれない。
“もう少しの辛抱”ということは、近々天竺から追い出されるのかもしれない。
“死ねばいいのに”なんて、竜胆の口から聞いたら、生きていけるはずもない。
だからこの時から蘭は、”死にたい”ではなく、”死ななければいけない”と毎日思うようになったのだ。
竜胆が望んでいることならば、叶えてやらねばなるまい。
何も出来ない自分にもできること、それは死ぬことだけだった。
結局、俺は竜胆の邪魔でしか無かったのだろう。
思い出すだけで辛い。
大好きだったあの声も、顔も、全部全部怖い。
「りんどう…」
今も、名前を呼んだら「黙れ」なんて言われるんだろう。
前までは優しく「なに?兄ちゃん」なんて返してくれたのに。
それもこれも全部俺のせいだけど。
あんなこと言われたのは全部俺が悪いけど。
それでもやっぱり、辛いことに変わりなんてない。
もう少しで薬の効果が切れる。
その前に飛ばなきゃ。
立ち上がって空を見つめた。
「空みたいに俺も綺麗だったら、竜胆に愛してもらえたのかな」
なんでもいい。ただ愛して貰えたら良かった。
それだけで良かったのに。
呆然と立ち尽くしていると、突然扉が開いて名前を呼ばれた。
なんでだよ。来ないでよ。やめて。怖いよ。
『蘭』
そう呼ばれるだけで、「兄ちゃん」と呼んでくれなくなった竜胆を思い出して怖くて震える。
ここに竜胆がいるハズないのに。
膝から崩れ落ちて座り込む。
ダメだ。震えが止まらない。
ラクにさせて。もうほっといて。
今更何がしたいの?
2人も俺をいじめたくなった?
竜胆に何も言い返せない惨めな俺を見て、いじめたくなったとでも言うのか?
よく聞き慣れた声で、「兄ちゃん」と呼ばれた。
竜胆だ。
…竜胆は何言ってんの?
そもそも、なんで竜胆がここにいて、なんで俺に優しく話しかけてくれてんの?
もしかしてまた、俺をサンドバックみたいにして使うため…?
今度は性処理役として使われる…?
嫌だ。嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ
怖い。辛い。助けて。
まずい。薬が切れてきた。
薬…!薬!早く飲まなきゃ。早く…!!
「兄ちゃん!兄ちゃん!聞こえてる?」
「蘭。俺達のことわかるか?」
「らーん。おーい。」
なんなの。俺はどうしたらいいの。
何したって嫌われるじゃん。怒られるじゃん。
“好き”も”愛してる”も、最初だけ。
それは利用するために陥れる罠でしかない。
その罠に引っかかればその後はただ都合のいいように利用して、消えようとすれば自分のためにわざわざこんな演技までして止めにくる。
俺の知ってる”愛”は。
俺が欲しかった”愛”は、こんなんじゃない。
ただ普通に愛されたかっただけなのに。
こんな俺だからダメなの?
みんな俺のこと嫌いだから?
みんなに嫌われたって、竜胆に愛されてればそれで良かったのに。
竜胆も俺のこと嫌い。
俺はなんのために生まれてきたんだろう。
もう、いいや。
早く死のう。死んじゃおう。
竜胆の望み通りにしよう。
そうすれば、少しは好きになってくれるかな。
「おい蘭、そっち行くな!こっち来い!」
「兄ちゃん!」
…演技なんてしなくていいのに。
鬱陶しい。やめてよ。
「蘭!危ねぇって!」
うるさい。みんなうるさい。
思ってもないことばっか。
「蘭!落ち着けって!」
うるさい。大声出さないで。
黙ってよ。どっか行ってよ。
「兄ちゃん!お願い…もうやめてよ…全部謝るから…ねぇ、兄ちゃん…っ!」
…ウザ。
なんで今更そうやって嘘つくの。
死んで欲しいって、思ってるくせに。
「ほら、蘭…竜胆だってお前のこと本気で心配してんだよ…だから…な、?」
心配なんてしてないよ。
心配してるのは利用するオモチャを失うことだけ。
「今までの事は忘れてもう1回やり直してみようぜ?大丈夫だから…」
忘れられたらこんなに辛い思いしてないの。
やり直すなんて、できたらそうしてるよ。
でも無理じゃんか。
竜胆は、竜胆はもう…
俺のことなんか嫌いで、面倒で、迷惑で、死んで欲しくて、それで…
「ねぇ、にいちゃ…」
「うるさい…!!」
「ら、蘭…?」
「もうほっといてよ!!俺は…俺はもう死にたいの!!散々暴言吐いて俺のこと拒絶して邪魔者扱いしてたくせにこういう時ばっか演技なんてしなくていい!!」
「演技なんかじゃ…」
「どうせ俺が死んだらみんなで喜ぶんでしょ?!やっと邪魔なやつが消えたって!!そうでしょ?!」
「そんなわけない!!喜ぶわけないじゃん…!!」
「嘘つかないで!!もうどっか行ってよ…!!」
「行かない…!!兄ちゃんがここにいる限り絶対どこにも行かない!」
「なんで…早くどっか行ってよ!!もう竜胆なんて…竜胆なんていなくていい…ッ、」
「…は、?ウソ、でしょ…?嘘って言ってよ…ねぇ、兄ちゃん…!」
「竜胆!!混乱してるだけだ!気にすんな!」
「嘘じゃない…ッ 俺のこと嫌いな竜胆なんて…大っ嫌い!!」
バチン!!
「ッ…」
「おい竜胆!!」
「ふざけんな!!俺のこと嫌い?今まで好き好き言ってたくせに今更じゃねぇかよ!!」
「竜胆!!」
…竜胆だってそうじゃん。
なんで俺が同じことしたら怒るの。
なんで俺の意見は全部ダメって言うの。
なんで怒鳴るの。
「________!!」
なんでいつもいつも俺ばっかり嫌われるの。
なんで頑張って話したことも全部否定するの。
なんで竜胆は自分のことしか考えてくれないの。
「兄ちゃんのこと嫌いなんて1回も言ってねぇのに勝手に被害妄想しやがって!!」
「そっちが嫌いって言うならこっちだってお前のことなんか大っ嫌いだ!!」
「竜胆!!」
…ほら。やっぱり。嘘ついてたんじゃん。
“愛”なんてどこにもなかった。
竜胆は俺のことキライ。
誰にも愛してもらえない。
こんな俺ならいなくなった方が清々するんでしょ。
「…ごめん。また思ってもないこと言っちゃった…兄ちゃん…お願い…」
竜胆は俺のことキライ。
だから俺も、竜胆のことキライ。
キライ。キライキライキライキライキライ
「兄ちゃん!お願い。話聞いて!」
「話しかけないでくんない?」
「兄ちゃ…ッ」
「邪魔。」
「あ…」
「蘭!どこ行くんだよ!」
「…」
俺は竜胆がキライ。
「蘭どこ行っちまったんだろ…売店か?」
「ここにいるよりは全然いい。…竜胆、大丈夫か?」
「…俺、なんで思ってもないのにあんなこと言っちゃったんだろ…なんで兄ちゃんのこと傷付けてばっかりなんだろ…」
「…ンなこと言ったって過去は変えらんねぇ。今は蘭に謝って許して貰えるように頑張ろうな。」
「…うん。」
「…あ!」
「ンだようっせぇな!!」
「蘭のやつ、点滴抜いてたよな…?!」
「…!!そういえば…!」
「…このままだとアイツぶっ倒れんぞ!!」
「早く蘭探せ!!」
「…」
「いらっしゃいませー」
うるさい。
「_______」
うるさい。
「________!!」
「________」
うるさい。
…ここの病院の売店カッター売ってないし。
いいや。外行こ。
はぁ…外もうるさい。
近くにコンビニあったかな。
「いらっしゃいませ〜」
「…」
「あの…」
「…なんですか」
「こちら、何に使用されるものですか?」
「…なんでですか」
「当店では防犯の為刃物をご購入の際にはご利用目的をお伺いすることになっておりまして…」
「…」
「…あの…」
「リスカです」
「え…?」
「リスカです。早くしてください」
「あ、えっと…はい…」
「あ、ありがとうございました…」
病院戻ったら竜胆達いるのかな…
…どっか行こ。
人がいないとこ…
とりあえず路地裏辺りで切ってから違うとこ行こ。
あ〜気持ちぃ…
血溢れてくる…あ、深くいった。
でももっと切りたい。
いっぱい切って楽になりたい。
このまま死ねたら楽なのに…
死にたい。死にたい。死にたい。
「…死にたい」
あー。竜胆に叩かれたとこ、痛いなぁ…
今まで叩かれたことなんて1回もなかったのに。
もう”好き”だって嘘つかなくて済むから”嫌い”なやつにすることと同じことするのかも。
もう、”嫌い”だって隠さなくていいから、そうやって暴力でも何でもするんでしょ?
これからもっと酷くなるのかも。
だって竜胆は…
竜胆は…俺のことキライ。
だから俺も竜胆のこと、キライ…
キライ…?キライ。キライ…
「…りんどぉ…ッ」
…大好き。大好きなのに。
いつも俺は求めてばっかで求められることは無い。
まんまと竜胆の手の上で踊らされたんだ。
せめて、少しだけでも好きって言って貰えたらよかったのに。
あぁそっか。もう俺達、恋人じゃないんだった。
俺が原因で。俺が悪くて。自業自得で。
__あんなの兄貴でもなんでもねぇよ。
…もしかして俺達って、もう兄弟でも無いのかな。
だとしたら俺、本当にひとりぼっちだ。
ダッセェなぁ…
弟に縋って、見捨てられて、最後は1人。
誰にも必要とされずに死んでいく。
…俺って生まれてきて良かったのかなぁ
俺なんかが竜胆の兄ちゃんで良かったのかなぁ
迷惑ばっかだ。怒らせてばっか。
生まれてこなければよかったのに。
俺は俺が1番大っ嫌い。
竜胆もきっと、俺のこと1番嫌いなんだろうな。
「…あ、血拭くもの何も無いや…」
本当にバカだ。出来損ないだ。
「このままでいいや。ひとまず病院戻ろ。もう竜胆達も居ないだろうし」
「蘭いたか?!」
「いや、どこにもいねぇ…!!」
「ねぇ、もしかして外行ったとか…?」
「アイツ外出許可出てねぇぞ…」
「でも勝手に行った可能性も…」
「外だったら探しようねぇじゃねぇか!!」
「兄ちゃん…」
「え…」
最悪だ。
なんでまだ竜胆達がいるの…?
どうしよう…
でもまだこっちに気付いてないよな…?
…てか、なんで俺竜胆達から逃げてるんだろ。
見つかったって何も無いか。
あ、そっか。みんな帰ろうとしてたのか。
そうだよね。じゃあなんも心配ないや。
話しようとしてくるなら全力で逃げるけど。
「…あ!蘭!!」
え、
「兄ちゃん…!!」
嫌だ…
「蘭!話がある。部屋戻って俺達と…」
逃げなきゃ…!!
怖い。怖い。怖いよ…
「ちょ、どこ行くんだよ!?」
怖い。なんでついてくるの。
助けて…もうやめてよ…
ラクにさせて…忘れさせてよ…
「おい蘭!お前走んじゃねぇ!!」
なんで。走らなかったら捕まっちゃう。
捕まりたくない。縛られたくないの。
1人にしてよ。関わらないで。
1回捨てたくせに。都合良すぎだよ。
「兄ちゃん!お願い、これ以上は…ッ」
うるさいうるさいうるさいうるさい!!!
話しかけないで。忘れたいの。
あれ、?なんか意識が…
「蘭!!」
【あとがき】
しばらく読み直してないので誤字脱字あったら申し訳ないです…
この作品過去一蘭病んでる&過去一竜胆クズに書いてる気がします
最高に可愛いね
次回から多分モブ蘭出ますので地雷の方注意です!
めんどくさくなったらとりま蘭は気絶させるのがいいのだ(小声)