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### 第11章 内臓を見せて
江島の口元に微かな笑みが浮かんだ。これでこの主婦が鏡鬼であることを確信した。
「お兄さん、ホルモンは切らしてるのよ。別の料理はどうかしら?」主婦は腹立ちを抑え、不自然な笑顔を作る。
「うーん……」江島は腕組みして考え込む。「じゃあステーキで」
「かしこまりました」主婦は厨房に消えた。食卓の空気が重くなる。
鈴と少年・洋(よう)が江島を怪しげに見つめる。清楚な顔立ちに似合わぬ趣味だと唖然している。
ようやく主婦が銀皿を運んできた。鈴が中身を見て喉を押さえた。皿の上には一分までにしか焼けてない肉塊が載っている。表面の毛穴まで鮮明な肌に、無数の体毛が逆立っていた。
「お兄さん、焼き加減はお任せで」主婦の目が光る。「お口に合うかしら?」
江島が身を乗り出すと、眉をひそめた。「もったいない! せっかくの肉をこんなに焼くなんて! ステーキの真髄は生で食べるにあるって知らないのか?」
主婦の頬が痙攣した。《鏡鬼が強い不快感。鬼オーラ+30》
「諦めた。正直言わせてもらうが」江島は手のひらを広げる。「おばさんの料理、犬ですら目線をそらすレベルだよ」
キィィ……主婦の歯軋りが響く。《鬼オーラ+30》
「せっかく来たんだから、何か食べていきなさい!」主婦の声が低く唸る。蛍光灯がジジジと悲鳴を上げ、室温が急降下した。
「最後のチャンスだ」江島は洋の襟首を掴む。「子供の天ぷらはどうだ? 卵液に浸してパン粉まぶし、カラッと揚げれば……隣の子も羨むぞ」
少年の目に涙が浮かぶ。救世主と思った男が、実は狂人だったことに絶望している。
ブゾォォォォ! 電気が明滅し、壁紙が剥がれ落ちる。主婦の肌が青白く変色し、爪が鎌のように伸びてきた。「ふざけるな……!」
「誤解だ!」江島はテーブルを叩く。「強制営業は法律違反だ! 警察官も見ているぞ!」
《鏡鬼が激怒。鬼オーラ+50》
《鬼オーラ+20》
江島の脳内で通知音が鳴り続ける。妖力ゲージがみるみる上昇していく。 やったぜ、やっとゲージのゲット方法が目に見える。
「死ねええ!!」主婦の爪が閃く。江島が逆に手首を掴み、妖怪パワーを爆発させる。
ガシャン! 衝撃波で食器棚が粉砕する。鏡鬼の怪力に江島も驚いた。「化妖状態と互角とは……さすが悪鬼の頂点」
「私の目を見ろ!」主婦の眼球に江島の姿が映る。魂が引き剥がされるような感覚が襲う。
「目見るな、魂が肉体から剥奪されるよ」鈴が大声で叫ぶ。
「目なんかより!」江島は妖蠎の特殊能力を発動!右腕が急激に膨れ上がる。「妖蟒巨力!!」
ズブッ! 主婦の右腕がもぎ取られる。黒い血しぶきが天井に飛散した。《鬼オーラ+95》
鈴が護符を取り出す手を止め、呆然とする。江島の戦い方は、むしろ鬼より残虐だった。
「上等悪鬼は丈夫でいいな」江島は嬉しそうに次の一撃を浴びせる。「もっと泣き声を聞かせてくれ!」
主婦の左腕が宙を舞う。《鬼オーラ+95》
「逃げる……!」鏡鬼が窓を破って飛び出す。江島が追いかける。「待て! 目だけじゃなく、内臓の色まで見てやるぞ!」
鈴は震える手で少年を抱き締めた。彼女は直ぐにでもこの場から逃げる衝動が起きる。アイツ帰って来たら私の内臓見たくならないよねー。