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展示会の後には直帰をしていいことになっていて、このまま帰るよりはと、矢代チーフを「コーヒーでもどうですか?」と、誘ってみた。
本音を言えば、まだもう少しだけ一緒にいたかったのだけれど……。
「うん、そうだな。駅ナカにでも行こうか?」
「はい、駅ナカならお店もたくさんありますし」
展示会の最寄り駅は複数の路線が入るターミナルになっていて、駅構内のショッピングモールも広くて充実していた。
「どこに行きましょうか?」
──モール内のお店を見回して口にする。
「じゃあ、あそこにあるカフェにでも。雰囲気は良さそうに思うが」
指差された先を見ると、見映えのいい洒落たカフェがあった。
「はい、良さげな感じで。そこにします」
同意をして、連れ立ってお店に入った──。
テーブルに向かい合わせで座り、頼んだアイスコーヒーを飲む。
チーフは、ミルクもシロップも入れないブラックのままで、ストローを使わずグラスから直接飲んでいて、それがやけに男っぽくも映る。
やっぱりカッコよくて、ステキだな……。
なんだかこうしてると、デートしてるみたいにも思えてくる。
周りからも、そう見えたりするかな? なんて考えただけで、自然と顔がほころんできてしまう。
「うん? 何か面白いことでもあったか?」
「ああ、いえ……」まさかチーフとのデートを妄想していただなんて言えるわけもなく、愛想笑いを浮かべつつ、ストローでコーヒーをすすった。
「そうなのか? 僕は社に戻ってまだ少しやることがあるんだが、君はもう帰宅するんだろ? だったらあと少しだけ付き合ってもらいたいところがあるんだ」
どこか仕事絡みで寄るところでもあるのかなと思う。
「はい、私は帰るので構わないですが。……どこへ行かれるんですか?」
「それは、行ってからのお楽しみだ」
チーフはそう言うと、口元に人差し指を立ててフッと笑って見せた──。
そのキュンとくる仕草に、もしかして仕事じゃなくプライベートなことなのかもしれないと感じる。だけどどちらにしろ、まだ矢代チーフと一緒にいられることが、私にはただ嬉しかった……。