テラーノベル
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21
プルルルル……。オフィスの時計が18時を指し、定時を告げる電子音が響いた。
その瞬間。
ガタッ! と、部長席から椅子を弾くような音がした。
「……お疲れ。あとの細かいチェックは明日の朝やる。各自、早めに上がるように」
さっきまで鬼の形相で決算書を睨んでいたいるま部長が、電光石火の手つきでパソコンをシャットダウンし、ジャケットを羽織る。
その動きには一切の無駄がない。まさにシゴでき。
「「「お、お疲れさまでした……!」」」
唖然とする部下たちを置き去りにし、いるまは真っ直ぐになつのデスクへ向かった。
「暇、帰るぞ」
「えっ……。あ、はい。……あの、いるま部長、まだこの集計が……」
なつが慌てて立ち上がると、いるまはなつの鞄をひょいと持ち上げ、その背中を強引に出口へと促す。
エレベーターに乗り込み、扉が閉まった瞬間。
「……はぁぁぁ! 疲れた! なつ、今日一日遠かった! 補給、補給させて!」
「ちょっ、いるま部長! まだ会社の中ですから! 離してくださいっ!」
抱きついてくるいるまを必死に押し返そうとするけれど、なつの口からはどうしても「敬語」が漏れてしまう。
「部長って呼ぶな。あと、その敬語もやめろって言ってるだろ?」
「……急に言われても無理です。……あ、無理だよ。……でも、いるまさん、まだロビーに誰かいるかもしれないから……」
「『さん』もいらない。ほら、もう一回」
いるまはエレベーターの壁になつを追い詰め、鼻先を掠める距離で見つめてくる。
仕事中の冷徹な部長の顔のまま、声だけが甘く、とろけるように響く。
「……あー、もう! ……わかったよ、いるま。……早く帰ろ? お腹空いた」
「……っ、合格。今の言い方、最高に可愛い。……今日のご飯、俺が作るからなつは何もしなくていい。……一生甘やかしてやる」
「……極端なんだよ、お前は……」
会社を一歩出れば、いるまはなつを離さない「過保護な恋人」に完全シフト。
なつは顔を真っ赤にしながらも、繋がれた手のひらの熱さに、ようやく「いつものいるま」を感じて安心するのだった。
コメント
1件
わあ、お疲れさまです〜🌷 第5話、読み終えました! もうね、いるま部長の「定時ダッシュ」がめちゃくちゃツボでした(笑)。あの鬼の形相からの豹変、ギャップが効きすぎてる…! そしてエレベーターの中での“補給させて”発言、甘々なのに仕事モードの顔そのままだなんて反則ですよね。なつが敬語を外して「いるま」って呼んだ瞬間、こっちまでドキドキしました。 会社とオフの“60度の温度差”が、逆に二人の関係を特別に見せていて素敵です。次も楽しみにしてますね〜🤍