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〘余熱〙
“後藤目線 “
その日、福徳はずっと静かやった。
収録中も、笑うタイミングが遅れとったし
ツッコミも弱かった
「大丈夫か?」
楽屋に戻ってから聞いた
「ただの寝不足や」
そう言って笑った。
いつもの顔やったから深くは考えんかった
―帰るまでは。
廊下を歩いとる途中後ろから鈍い音がした
振り返ったら、
福徳が壁にもたれかかるように 崩れ落ちとった
「……福徳…?」
返事がない
顔色が信じられへんくらい悪い
俺は一瞬、頭が真っ白になった
なんで急に。
さっきまで普通に喋ってたやん
さっきまで、そこにおったやん
「おい、ちょっと、福徳」
肩を揺らす手が、
自分でも分かるくらい 震えとった。
…
救急車を呼んで、病院に着く間も
ずっと名前を呼んだ
「福徳、大丈夫やからな」
「もうすぐ着くから」
「おい、なんか言えや…。」
今にも起きて「うるさいわ」って言いそうやのに
ーもし、このまま起きひんかったら。
そう浮かんだ瞬間、
コイツがおらん世界を想像した瞬間、
息ができへん程怖くなった。
…
病院の待合室で
スマホの画面を見ながら 呟いた
「ほんまに、頼む…」
「死ぬなよ…。」
…
気づいたら朝になっとった。
待合室の硬い椅子に座ったまま、
寝ずにおったらしい
名前を呼ばれ立ち上がると
「大丈夫ですよ。」
医者がそう言った
ただの過労と睡眠不足。
俺は一気に全身の力が抜けた
自分でも笑いそうになるくらい、安心していた。
…
病室のドアを開け、中に入る
福徳は、ぼんやりと天井を見よった
「あ、」
目が合う
「…お前顔色わっる 」
第一声がそれやった。
「いや、逆やろ」
俺がそう言うと、ゆっくり瞬きをして笑った
「大げさやなぁ」
福徳が言った
でも、何故かその言葉に、無性に腹立ってもうて
「倒れといて、何言ってんねん」
思ったより強く言ってしもうた
福徳が少し驚いた顔をする。
「ほんまに焦ったんやぞ…」
「お前、急に倒れるし、」
「呼んでも返事せぇへんし、」
「……ほんま、… 」
そこで言葉が途切れた。
こんなん言うつもりやなかったのに
「怖かった」とか格好悪すぎて言えへん。
福徳はしばらく黙って
小さく言った
「……ごめん。」
その言葉だけで
胸ん中で溜まってたもんが少しほどけた気がした
椅子を引いてベッドの横に座る
「ちゃんと寝ぇよ 」
「わかっとる」
「飯も食って」
「親かよ…」
いつものやり取り
でも何かが違う。
しばらくして、福徳の寝息が聞こえてくる
―俺はコイツがおらへんと、笑えへんやろな
福徳の寝顔を見てそう感じた。
…
退院してからは、
福徳の扱いが分からんなってもうた
…いや、正確には、分かりすぎてもうた
「それ持つ」
「いや自分で持てるわ」
荷物を取る
「お前コーヒーやめろ。水にしとき」
「いや、ええやろ」
体調管理
「ちゃんと寝とるか?」
「昨日8時間寝たわ」
「ほんまか?」
「何で疑うねん」
気づいたらずっと目で追いよった
咳一つでもしたら反応してまう。
―あかん。
自分でも分かっとった
やり過ぎやって。
けど、あの日倒れた姿が頭から離れん
動かへん体。
聞こえへん声。
冷たい手。
あれを思い出すたび、こう考えてまう
もし、また倒れたら
もし、次間に合わへんかったら
…
収録終わり、外を二人で歩いていると
福徳が急に立ち止まった。
「なぁ、後藤」
「ん? 」
「なんか最近、変やで。お前」
心臓が跳ねた
「何が」
「いや優しすぎる」
冗談みたいに笑う顔。
でも目だけは少し真剣やった
「前はこんな世話焼かんかったやん」
言い返そうとしても、
言葉が出えへん。
理由を説明できひん。
沈黙の後
福徳が小さく続ける
「…あん時、そんな怖かったん?」
…図星やった
喉が詰まる。
誤魔化そうとしても、上手く笑えへん
…
しばらく歩いて、
信号待ちで足を止めた時
気づいたら口が開いとった
「怖かったわ」
自分でも驚くぐらい、
素直な声やった
「ほんまに。」
夜の街に紛れて
言葉が溶けていく
「お前が、おらんなる思うて、」
「…怖かった」
福徳は何も言わへんかった
ただ少しだけ近付いて、
そっと肩が触れた
「大丈夫やって。」
その一言がやけに優しくて、
俺の心は静かに満たされていった。
〘余熱〙
コメント
7件
通知来た時ちょうどサイゼにいて、どうせなら寝る前のベッド入った時に読みたいと思って我慢しようとしたけど、結局読んでしまった😂 いつものイチャイチャではなく、今回は感動系で感受性豊かなのも相まって泣きそうになってしまった🥲🤍 今回のお話も最高でした!何か才能ありすぎて小説家目指してみて欲しいです笑 素敵な作品ありがとうございました✨️

めちゃくちゃすきです。センスの塊ですよねほんとに!ごとふくも大好きです!