テラーノベル
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世界が壊れ始めた日。
最初に消えたのは、
小さな町だったらしい。
通信は途絶え、
救助隊は戻らず、
上空から確認された映像には、
“何か”が映っていた。
黒い肉の塊。
人の形を真似た異形。
後に人々はそれを、
“バグ”と呼ぶようになる。
理由は単純だった。
そいつらはまるで、
世界そのものに発生した不具合みたいだったから。
■■■■■■■■■■■■
それから数十年。
世界は変わった。
都市には高い壁が築かれ、
人々は夜を恐れ、
子供は「外へ行くな」と教えられて育つ。
人間は生き残った。
だが、
取り戻せてはいなかった。
街の外にはバグがいる。
地下にもいる。
空にもいる。
どこにでもいる。
そして。
その全てを生み出した存在。
“ヴェルトラウム”。
人類を次の段階へ進めようとする、
狂った集合意識。
誰もその正体を知らない。
誰もその居場所を知らない。
ただ一つ分かっていることがある。
ヴェルトラウムは、
今も世界を見ている。
■■■■■■■■■■■■
雨の降る夜だった。
地下都市第七区画。
ネオンが濡れた道路に滲み、
排水路から白い蒸気が立ち昇っている。
薄暗い路地裏。
一人の男が、
銃を分解していた。
黒を基調に赤の入った戦闘服。
紫がかった毛先。
中性的な顔立ち。
男は静かにマガジンを装填すると、
煙草の代わりみたいに溜息を吐いた。
「……また徹夜か」
モトキ。
青リンゴ商会代表。
国直属の“掃除屋”。
バグを殺し、
依頼をこなし、
今日を生き延びるための人間だった。
その時。
「モトキー!!」
遠くから声。
振り返る前に、
誰かが肩に腕を回してくる。
「依頼来たぞ! しかもかなりデカいやつ!」
ヒロトだった。
明るい声。
軽い笑顔。
こんな終わった世界でも、
太陽みたいに笑う男。
「近いって……」
「ははっ、ごめんごめん」
モトキが肩を払う。
その後ろから、
のんびりした声が聞こえた。
「ボク、お腹空いたなぁ」
巨大なハンマーを引きずりながら、
リョーカが歩いてくる。
蛍光色の髪。
長い三つ編み。
人間離れした怪力。
そして。
どこか掴みどころのない、
不思議な存在。
「さっき食っただろ」
「えへへ、忘れちゃった」
ヒロトが笑う。
モトキも少しだけ口元を緩める。
終わった世界。
壊れた時代。
それでも。
この瞬間だけは、
悪くないと思えた。
だが。
誰も知らなかった。
この日から始まる依頼が。
世界を終わらせる戦いへ繋がることを。
そして。
三人のうち、
一人が帰れなくなることを。
雨は静かに降り続けていた。
まるで。
全部を知っているみたいに。
コメント
2件
短編集と言いつつ、めちゃくちゃ続きます🙂↕️