テラーノベル
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世界が壊れ始めた日。
最初に消えたのは、
小さな町だったらしい。
通信は途絶え、
救助隊は戻らず、
上空から確認された映像には、
“何か”が映っていた。
黒い肉の塊。
人の形を真似た異形。
後に人々はそれを、
“バグ”と呼ぶようになる。
理由は単純だった。
そいつらはまるで、
世界そのものに発生した不具合みたいだったから。
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それから数十年。
世界は変わった。
都市には高い壁が築かれ、
人々は夜を恐れ、
子供は「外へ行くな」と教えられて育つ。
人間は生き残った。
だが、
取り戻せてはいなかった。
街の外にはバグがいる。
地下にもいる。
空にもいる。
どこにでもいる。
そして。
その全てを生み出した存在。
“ヴェルトラウム”。
人類を次の段階へ進めようとする、
狂った集合意識。
誰もその正体を知らない。
誰もその居場所を知らない。
ただ一つ分かっていることがある。
ヴェルトラウムは、
今も世界を見ている。
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雨の降る夜だった。
地下都市第七区画。
ネオンが濡れた道路に滲み、
排水路から白い蒸気が立ち昇っている。
薄暗い路地裏。
一人の男が、
銃を分解していた。
黒を基調に赤の入った戦闘服。
紫がかった毛先。
中性的な顔立ち。
男は静かにマガジンを装填すると、
煙草の代わりみたいに溜息を吐いた。
「……また徹夜か」
モトキ。
青リンゴ商会代表。
国直属の“掃除屋”。
バグを殺し、
依頼をこなし、
今日を生き延びるための人間だった。
その時。
「モトキー!!」
遠くから声。
ダイヤの剣
62
振り返る前に、
誰かが肩に腕を回してくる。
「依頼来たぞ! しかもかなりデカいやつ!」
ヒロトだった。
明るい声。
軽い笑顔。
こんな終わった世界でも、
太陽みたいに笑う男。
「近いって……」
「ははっ、ごめんごめん」
モトキが肩を払う。
その後ろから、
のんびりした声が聞こえた。
「ボク、お腹空いたなぁ」
巨大なハンマーを引きずりながら、
リョーカが歩いてくる。
蛍光色の髪。
長い三つ編み。
人間離れした怪力。
そして。
どこか掴みどころのない、
不思議な存在。
「さっき食っただろ」
「えへへ、忘れちゃった」
ヒロトが笑う。
モトキも少しだけ口元を緩める。
終わった世界。
壊れた時代。
それでも。
この瞬間だけは、
悪くないと思えた。
だが。
誰も知らなかった。
この日から始まる依頼が。
世界を終わらせる戦いへ繋がることを。
そして。
三人のうち、
一人が帰れなくなることを。
雨は静かに降り続けていた。
まるで。
全部を知っているみたいに。
コメント
2件
短編集と言いつつ、めちゃくちゃ続きます🙂↕️