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私
には、まだわからない。
けれど、ひとつだけわかることがあるとすれば……
きっとそれは──。
「お疲れ様でーす! 今日はこれにて閉店しまぁす!」
バイト先のコンビニの店長の声を聞きながら俺は帰り支度を始める。
時刻はすでに午後九時半を過ぎており外は既に真っ暗だった。
俺の名前は神崎拓斗。
高校二年生だ。
容姿端麗成績優秀スポーツ万能の三拍子揃った超絶美少女・如月姫乃ちゃん。
しかし彼女は……実は残念系女子だったのだ!
☆★☆
「――ふぅ。今日も一日お疲れ様、わたし」
誰もいない部屋。自分の声だけが響く空間で、一人呟く。
わたしの名前は如月姫乃。高校二年生。
成績は学年トップクラスだし、運動だって人並み以上に出来る。顔立ちも整っているから、街を歩けば誰もが振り返るような美人だとよく言われる。
けれど、それだけでは足りない。
もっと上にいくためには、更なる高みを目指す必要がある。
そのために必要なものが何かといえば、それは『努力』以外にありえないだろう。
毎日の予習復習はもちろんのこと、部活でのトレーニングにも手を抜かない。テストでは常に上位十位以内をキープしている。
学校の成績も悪くはないはずだ。
しかし成績は上がるどころか下がる一方で、気付けば最下位まで転落していた。
クラスメートは俺のことを「勉強だけが取り柄の陰キャ野郎」とか、「ガリ勉」だと揶揄してくるようになった。
授業中に当てられたら答えられず、先生から怒られっぱなしだった。
俺は必死になって教科書を読み返した。
何度も同じ箇所を読んでいたせいか、目が痛くなってきた。
それでも読み続けた。
そのうち視力が落ちてきて、眼鏡を掛けるようになった。
クラスの奴らはますますバカにしたような目で見てくるようになり、ついにはいじめの対象にまでなった。
机の中にゴミを入れられていたり、上履きを隠したり。
無視されたり、悪口を言われたり、陰口叩かれたり。
パシリに使われたり、掃除を押し付けられたり、暴力を振るわれたり。
先生から怒られたり、親からは殴られたり蹴られたりする日々。
学校に行きたくないと思ったことも何度もあったけど……それでも僕は学校に行っていた。
だってそれは当たり前のことだから。
誰かがやってくれるなんて甘えている暇はない。自分で自分の面倒ぐらい見ないと誰も助けてくれない。
そう思って頑張ってきた結果―――僕はいじめられるようになった。
きっかけは些細なことだったと思う。
僕が悪いのか? 俺が悪いのか? お前が悪いのか? それとも、みんな悪いのか? 誰か答えてくれよ! 僕は、俺は、あいつらは悪くないはずだろ!? なのになんでこんなことに……
『それはね――』
突如現れた声の主が僕の疑問に答える。
その声は、まるで女神のように慈愛に満ちた声で囁いた。
『貴方達が悪かったからだよ♪』
そしてまた新たな物語が始まる。
それはまるでメビウスの輪のように、永遠に繰り返されるのだ。
たとえそれが死であったとしても……
【泡沫花】
『―――あぁ~! やっぱりダメだったよぉ!』
『だから言ったろ? アイツらを相手にするのは無理だって』
『うん、そうだね……
まさか、あんなに強いなんて思ってなかったからさ……』
『あのお姫様みたいに強かったもんねぇ?』
『そうよね。
それに、みんな凄く仲良しだし、とても楽しそうでしたわ』
『うぅ……
わたし達も早く仲間に入れてもらえないかなぁ……』
『ムリだよ。
ボク達は所詮、部外者なんだから』
『あら? 貴方も意外と冷たいんですのね』
『そーゆーアンタこそ! 実は楽しんでたくせにぃ♪』
『破滅』……
それは、とても身近なものになりつつある。
それが意味するものを知る者は少ない。
知る必要もない。
ただ……
その予兆を感じているだけだから……。
そして、それすらも、 いずれ終わる日が来るかもしれない。
だからといって、何もしないのか? 何かして、どうにかなると思っているのか? それはわからない。
わからないからこそ……
今、ここで起こっていることに目を向けなければならない。
これから起こるであろう出来事に耳を傾けるべきなのだ。今、ここに生きている以上。
そして、わたしたちの生きる意味について考えようじゃないか。
それがどんなものであれ。
それを考えることが無駄だと感じる人がいるかもしれない。
しかしそれは愚かなことだよ。
だって、そうだろう? 何か考えることに価値があると思うからこそ、 きみたちは毎日こうして集まってくるんじゃないのか? 何か考えたところで何も変わらないと感じる人もいるだろうね。
だけど本当にそうなら、 どうしていまさらわざわざこの場所にやってきたりするんだよ。
きみたちが日々考えていることはなんだい? おそらく答えなんてひとつもないようなくだらない疑問ばかりだろうけどさ。
それでも構わないよ。
考えてごらんよ。
いったいなぜ、こんなにも多くの人間が、 自分の頭の中にしかない世界を覗き見たいと願うようになったのか。
人間の脳の中にある世界というのは、 一体どのような姿をしているんだろうか。
それはきっと美しいに違いない。
人間以外の動物たちの中には、 自分たちの見ている景色をそのまま映像として記録しておける種が存在するらしいけれど、 もしそういった能力を持たないただの動物だったとしても、 想像することくらいはできるはずだよね。
もしも自分が人間ではなかったら、 あるいはもっと別の生き物に生まれ変わっていたとしたなら……と。
例えばの話だけどさ。
わたしたちが普段目にしているあの空の向こう側に広がっている世界では、 いったいなにが行われているのかしらね。
それはきっととても不思議な世界で、 そこには人間なんて存在していないんじゃないかな。
わたしたちの世界には存在しないものがたくさんあって、 きっと人間の想像力なんかじゃ追いつかないくらいのものすごいことがいっぱい起こっていて……。
――それこそ、想像を絶するような出来事の数々が。
たとえばそう、人外の存在とか。
だってほら、考えてみてよ。
あんなに大きな鳥がいるはずないじゃない。
それに、あっちにいる生き物たちはみんなすごく大きいわよね。
あれってつまりそういうことでしょ? ああいうのっていわゆる空想上の生物っていうんでしょう