元貴 side …
「若井!!!!」
俺は走って横断歩道へと向かう。そして横断歩道の中心に横たわる若井を抱き起こす。
「若井ッ?起きてッ?返事してッ!!!」
肩を揺らすが、若井から応答はない。ぐったりと目を瞑っているままだ。
「…誰か、救急車ッ!救急車呼んでくださいッ!!!」
若井の頭を支えていた手を見てみると、手には大量の血が付着している。若井は全身傷だらけ。若井の変わり果てた姿からどれだけ酷い事故だったのか想像が着く。
「若井ッ!!起きて!!!返事してよ!!!」
何度も若井の名前を呼ぶが、一向に返事は無い。気がつくと若井の頬に1粒の水滴が落ちる。頬に暖かい何かを感じる。
「若井ッ!!死んじゃだめだよ!!!泣」
すると後ろからサイレンの音が聞こえた。サイレンの音は段々と近づいてきて、いつの間にかすぐ後ろでサイレンの音がピタリと止まった。
「大丈夫ですか!!離れてください!!」
「若井ッ!!!!泣」
救急隊の人が若井を担架のようなものに乗せて、救急車へと運ぶ。俺も直ぐに救急車へと乗り込む。
病院に送られてる間も若井が目を覚ますことはなく、心電図の音と救急隊員さんの声が車内で響いていた。
「元貴!!!」
「…涼ちゃん」
病院に付き、若井が緊急手術室へと送られたあと、緊急手術室前で若井を待っていた時だった。後ろから慌てた様子の涼ちゃんが来た。
「元貴、大丈夫?」
涼ちゃんは若井のことを聞く前に俺の肩を掴んで、俺の心配をしてきた。涼ちゃんはこういう時でも優しいんだな。さっきまで溜め込んでいた感情が溢れ出てくる。怖い。手が震える。
「…りょ゛うちゃん゛ッ泣」
「怖かったね、大丈夫だよ」
涼ちゃんが優しく強く俺のことを抱きしめてくれる。涙が止まらない。俺は子供のように声を出し、涼ちゃんに泣きついた。
「わ゛かい゛がッ泣しん゛じゃう゛ッ泣」
「大丈夫、大丈夫だよ」
涼ちゃんは俺の背中を擦りながら、ひたすら”大丈夫だよ”と俺に言い聞かせる。
少し時間が経ち、俺の様子を見て涼ちゃんが話す。
「元貴、言える範囲でいいから、若井のこと教えてくれる?」
俺は涼ちゃんの服の裾を強く握りしめ、さっきあったことを順番に涼ちゃんに話した。
「そっか…じゃああんまり詳しいことは元貴も分からないんだね。」
「…うん」
涼ちゃんは静かに俺の話を聞き、落ち着いた様子で医師からの連絡を待っているようだった。涼ちゃんも不安なはずなのに。俯く涼ちゃんの表情はどこか冷静で、普段のふわふわした彼とは思えない。
「…若井ならきっと大丈夫だよ」
涼ちゃんが優しく俺に笑いかける。涼ちゃんの笑顔はどこか優しくて、不安な気持ちを吹き飛ばしてくれる。
でも俺は知ってるよ。涼ちゃんの手がずっと微かに震えてること。やっぱり涼ちゃんも不安なんだ。二人の間に重い空気が漂う。その時、スライド式の扉が開く音がした。
「…緊急手術が終わりました。」
コメント
4件
めっちゃ泣きそうです😭😭悲しすぎます😭
これからどうなるの!!!??ほんと泣けるしワクワクしてくるお話作れるの凄いです… 😭✨🤍