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テラーノベルの小説コンテスト 第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで
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***


宮本が風呂から出ると、橋本がひとりで先にビールを飲んでいた。中身が空けられたらしいビールが1缶テーブルに置かれていて、2缶目をぐびぐび飲みながら、お笑いが流れるテレビに見入る姿に、内心焦りまくるしかない。


(ふたりで飲もうねって、500mlの缶ビールを買ったのに、ひとりで飲んじゃうなんて。陽さん、俺よりもお酒が弱いのに)


「ひっ、ひとりで先にはじめるとか、ズルいんですけど!」


宮本としては、文句を言ったつもりだったのに、告げた言葉が上擦ったせいで、効力がまったくなかった。橋本は不機嫌満載な顔をそのままに、じろりと恋人を睨む。


「しょうがねぇだろ。風呂上がりで喉が渇いたんだから」

「それにしては飲みすぎ……」


籐の椅子に、足を組んで腰かけている橋本。腰に巻いたタオルからのぞく長い足だけじゃなく、アルコールのせいで若干肌が桃色に艶めく胸元も、妙に色っぽく見えた。

橋本が激昂していなければ、すぐにでも手を出すところなのに、それを押し止めるのはひとえに、この関係を崩さないためだった。


「雅輝、勃起すんの早っ」


宮本の顔から視線を落とした橋本に、ズバリと指摘され、慌てて前を隠すがすでに遅し。同じ格好をしているため、これ以上の隠す手だてがなかった。


「ひえっ! やっ、これは、そのぅ……」

「俺の裸なんて、見飽きるくらい見てるだろうに」

「見飽きるなんてとんでもない。忘れないように、網膜に焼きつけておきたいくらいなんですよ!」

「なんだそりゃ。説得力ないな」


橋本がカラカラ笑ったことで、場の空気が一変した。


「だって陽さんが、魅力的なのが原因なんです。俺のセンサーが反応するのは、正常な証ですよ」


たて続けに説得力のないセリフを口にした宮本に、橋本は心底呆れた。あえて視線を外して、なにもない空虚な壁際を見つめる。


「褒めたってなにもでないぞ。もちろんサービスもしない」


恋人が興奮する姿を見て、自分も同時にムラムラしていた。それを隠すために、宮本から顔を背けた橋本に向かって、ここぞとばかりに突飛な提案がなされる。


「サービスは俺がする!」

「は?」

「陽さんには、たくさん気持ちよくなってほしいから」


橋本は背けていた顔をもとに戻し、じと目で宮本を見つめた。


「おまえの前戯はねちっこい上に、絶倫ときたもんだから、サービスもほどほどにしてほしいんだけど。じゃなきゃ、俺の躰がもたねぇよ」

「むぅ、ねちっこいですかね? 俺の中では普通なんですよ」

「雅輝の普通は、一般常識とかけ離れてるからな。前にも言ったろ、おまえの頭のネジは数本抜けてるって」

「頭のネジが抜けてるのと、絶倫は関係ないでしょ?」


きょとんとした宮本を前にして、橋本の表情が苦いものへと変化した。


「確かに関係ないけどよ……。ひーひー言わされる、俺の身にもなってくれ」


糠に釘とわかっていたものの、口にせずにはいられず、うだうだ言い連ねる。


「ヒーヒーよりも、エッチな喘ぎ声を出してる陽さんを、俺としては見たいんだけどな」


宮本は橋本の腕を掴み、椅子から立ち上がらせると、ベッドに向かって引っ張った。相変わらず冴えない顔をしている橋本を座らせて、枕元に置いてあったブツを、すっと目の前に見せた。


「なんだこりゃ?」

「監禁された部屋から、ちゃっかりいただいてきました」

「なんだと!」


驚く橋本をしり目にパッケージを開けて、中からそれを取り出した。


「おまえ、あのときノロノロしてたのは、このせいだったのか」

「陽さんがお風呂に入ってる間に、説明書を見て使い方を学びました」

「誰かが使ったモノを、俺に使う気かよ……」

「安心してください。新品を選んでおきました」


人差し指をぴんと立てながら、いつも以上に流暢に語る宮本に、橋本の口の端が引きつった。


「用意周到すぎる。というか、なにに使うんだ?」

「なんでも、敏感な部分を刺激するための、小型ローターらしいです」

「敏感な部分……」


唸るような声色でオウム返しをした橋本に、宮本は元気いっぱいな口調で喋り倒す。


「たとえば、陽さんの乳首とか、ナニの先端とか!」


楽しそうに言い放った宮本に、橋本はうんと嫌な顔をしてみせた。


「あやしげなそれを使ってサービスするなんていう、おまえの考えがさっぱり理解できねぇ」

「遠慮せずに、俺に身をまかせてくださいね、陽さん♡」


宮本はいやらしい笑みを浮かべながら、小型ローターのスイッチを入れる。目の前の状況に橋本は観念したのか無駄な抵抗をせずに、そのままベッドへと横たわった。

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