テラーノベル
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……キスでのぼせ上がってしまった身体に、ふわりと服が着せかけられた。
「……一臣さん」
彼の優しさを感じて、端正な横顔に呼びかけると、
「ここには、素敵な思い出ばかりで……」
共にいられる悦びが募って、そんな言葉が口をついた。
「ええ、それは私にとっても……」
彼がそう言って、
「ここにいると、とても閑かで、まるでこの世界にはあなたと2人だけな気さえするようで……」
腕を回し引き寄せた私の頭を、肩へそっともたせかけた。
「……あなたの世界に、私がいることが嬉しい……」
ずっと孤独だった彼の世界に、私という存在があることが、ただ嬉しかった……。
「私は、あなたのお陰でひとりきりでいることから、脱け出すことができました。ずっと閉ざしていた自らの心を開くことができて、人と愛し合う温もりを知り得たのも……智香、あなたと出会えたお陰です」
「……いいえ」と、首を左右に振る。
「私の方こそ、あなたと出会えたことで人を愛する幸せを知れたから……一臣さん、あなたと出会えてよかった……」
「……ありがとう」という言葉とともに、そっと口づけが落とされる。
「結婚して、いつまでも私と共に……」
抱かれた胸の中で「はい…」と頷くと、彼と二人で過ごすこれからの未来がありありと目の前に浮かぶようだった……。
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