日曜日の朝、自分の部屋で起きた僕は頭を抱えていた。昨日の夜の失態を思い出して。
「夢···じゃないよね、現実だよね···はぁ、やっちゃった···」
ベッドの中でうなだれる。
昨日は冷凍餃子が上手に焼けて嬉しくて、若井くんが持ってきたノンアルコール酎ハイが美味しくていっぱい飲んだ···そして気付けばふわふわふらふらで気持ちよくなって、眠たくなって。
···ベッドに運んでもらって若井くんを抱きしめたくなって、それからキスしたくなって···それを全てしたことで満足して寝た、と思う。
「やばいよ、卒業までは···だめって思ってたのに···」
若井くんに告白されて、嫌でも意識するようになって、けど出来るだけ普通に過ごすようにしてたのに。
確かに酔ったら僕は抱きついたりする癖があって、けどそれは誰にでもじゃない。好意的に思っている人にそうしてしまうから、余計に注意していた。
自分があれほどまで若井くんを求めて衝動を抑えられなくてあんなことをしたことで、僕ははっきりと自分の気持ちに気づくことになった。
誤魔化すことは、出来るだろう。
記憶がないフリも、酔ったせいにすることも。
でも、出ていかないでと寂しそうにした彼を思い出してこれ以上傷つけたくないと思ってしまう。
はふ、と息を吐いてとりあえずシャワーをして、若井くんに連絡を入れた。
朝、先生から連絡があって会いに行っていいか、とメッセージが入る。
正直散々昨日妄想の中で可愛がった先生と顔を合わすのは恥ずかしかったけど、断る理由にはならなかった。
買ってきてくれたケーキをお皿に出してコーヒーを入れて先生に向かい合って座ると、恐る恐る、といった様子で先生が口を開いた。
「昨日の、ことなんだけど···」
「あぁ、うん」
意外と無かったことにはしないんだ、と思って冷静を装ってケーキを食べる。
「あんなことして、ごめんなさい···」
「あんなこと、って?」
我ながら意地悪な質問だ、先生は顔を赤くして、ん゙んっ、と咳払いする。
その顔を見てくすっと笑ってしまうと
それを見て先生は俺が仕掛けたことを悟ったようだった。
「やっぱり、あれはお酒···?」
「そう。だからごめんは俺の方、先生の反応が見たくてした。だから先生が謝ることなんてないよ、俺はめっちゃくちゃ嬉しかったし」
「もう···はぁ、けどお酒のせいってわかってちょっと安心した」
「ごめんごめん···ただ先生ほんとに外では飲まないほうがいいよ、あんなこと誰にでもしちゃうなら」
そんなの俺は耐えられないー···あんなに可愛くてえろい先生は他に見せたくない。ようやくケーキを一口食べた先生の唇をバレないように見て昨日のキスを思い出した。
「···誰にでも、じゃない」
フォークをお皿に置いて先生は下を向いて小さく呟く。
「···確かにあんなことしてそう思われても仕方ないけど、若井くんには誤解されたくない。酔って抱きついたりしちゃうのは正直これまでもあった。けどそれはいつだって好意的に思ってる人にだけ。それにキスしちゃったのは、若井くんにだけ」
「それは···どういう、意味?」
「ふわふわしちゃって、目の前にいる若井くんがカッコよくて···好きだと思ったら止まらなかった。抱きしめて、キスしたいと思ってやることやって満足しちゃって寝た」
先生今、なんて言った?
小さくなっていく声、けどハッキリ聞こえた。
「なに、先生俺のこと好きなの?」
「···好き、好きみたい」
思わず立ち上がって先生の顔を優しく上に向ける。昨日の俺を見つめたときみたいに、溶けそうな潤んだ瞳と色気のある表情に胸が高鳴る。
「ほんとに言ってる?俺は先生が大好きだよ、俺でいいの?」
「だって···!僕のこと助けてくれて大事にしてくれて···年下のくせに男らしくてカッコよくてけど僕のこと大好きだし···へんに積極的だし。意識したら、気づいちゃったんだもん···」
なにそれ、先生めちゃくちゃ俺のこと好きじゃん。 “教師と生徒”を超えたってこと?···俺はゆっくりと先生に顔を近づけた。
コメント
6件
卒業まではダメって我慢してたんですね🥰なかったことにしない先生が素敵です〜💖若井くん良かったね🥹
結ばれたぁ〜!お幸せに!うひひっ!(??
やっとお互いの想いが〜🥹💓 嬉しい🤭✨