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ぺん
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─貴方が俺を選ぶまで 。─
注意喚起
・御本人様とは一切関係ありません
・世界観やBLなどの過度な捏造を含む
・tnzm
閲覧はあくまで自己責任でお願いします。
◇
潮風は嫌いだ。
髪は乱れるし、服には塩気がまとわりつく。
それに何より、海というものは広すぎる。どこまでも続く青を見ていると、自分がどれだけ小さい存在なのかを嫌でも思い知らされる気がした。
崖の上に立ち、トントンは眼下に広がる海を見下ろした。
普段は真上から見下ろす青い海が、地から見渡すとこんなにも大きく雄大に見えるなんて。
空と海の境界は曖昧で、遠くでは青と青が溶け合っている。
「下界に降りたんは何年振りやろか…」
凝り固まった肩をほぐしながら、トントンは自身の背中につけ合さった羽を震わせた。
天使を象徴する純白の羽は、雲の切れ間から差し込む光を受け細やかに輝いている。
何度かばさばさと大きく羽ばたいた後、羽はトントンの体内へと仕舞われた。
その場へ何枚か白い毛が抜け落ち、すぐに潮風に攫われて消えていく。
天使であるトントンがこうして羽を隠し地に降り立ったのには訳がある。
数日前、天界からひとつの任務が下された。
とある教会に悪魔が潜伏している、それだけの情報。
詳細も階級も目的も不明であり、悪魔の真偽を確かめると共に討伐を言い渡され、こうしてトントンは降りてきた。
「悪魔が教会なんて、大胆にも程があるやろ。あーめんど」
思わずため息を吐いて、眼下の海から目を背ける。
正直なところ、トントンはあまり悪魔のことが好きではなかった。
むしろそれは天使として正しい生理反応であり、数ある天使のうちの一人として当然である。
欲望に塗れ、人間を誑かし、平気な顔で魂を喰らう。
それまで堅実に生きてきたトントンにとって、生の冒涜にしか思えないのだ。
実際、今まで碌な個体に巡り会ったためしがない。
今回は余計にタチが悪い。
村の人々と関わりの強い教会に潜むなんて、悪魔をどう処せば平穏に事が済むのか、トントン本人も決めあぐねていた。
「ま、会ってみなわからんか」
首に巻かれた赤いマフラーを潮風に翻し、旅人を装うために纏ったマントがたなびく。
海沿いの小さな村は、天から見た以上に穏やかな場所だった。
漁から戻った男たちが網を片付け、家屋の軒先には洗濯物が揺れている。
石畳の道を駆け回る子供たちの笑い声が風に乗って響き、どこからか昼食の温かい匂いまで漂ってきた。
少なくとも、悪魔が人知れず暗躍している村には見えない。
むしろ天界の報告が間違っていたのではないかと疑いたくなるほど平和だった。
やがて村の中心へ視線を向ける。
白い壁と尖塔を持つ教会が、海を見下ろすように建っていた。
あれが、任務の対象がいる場所。
思わず意気込んだ、その時だった。
きゃあきゃあ、手鞠のように可愛らしい笑い声が近づいてくると同時に、背後から迫ってくる人の影。
村の誰かか、と振り向くより先に、妙に威勢のいい動きでその影がこちらに突っ込んできた。
「うおっ」
避けるまでもなく、どん、鈍い衝撃が胸元に走る。
反射で相手の腕を掴み転倒を防ぐと、目の前でバランスを崩しかけているのは黒い修道服を身に纏った男だった。
ベールの下、淡いミルクティー色の前髪の下から、陽の光を大きく反射しキラキラと輝く翡翠色の瞳が覗く。
綺麗だ、と思った。単に顔が整っているだけではなく、何か惹き込まれる運命的なものを感じた。思わず心臓がどきりと跳ねる。
目があったほんの一瞬、彼の瞳孔がきゅうっと狭まった。
「いったぁ……なんや、旅人か?すまんすまん」
悪びれた様子は薄いが、愛嬌ゆえか不思議と嫌悪感はなかった。
地べたに引きずってしまった服を軽くはたきながら立ち上がり、人懐っこい笑顔を向ける。
そして、同時に。
長年研ぎ澄まされてきた勘か、目があっただけで分かってしまった。
こいつ、悪魔や。
偽装は完璧に近かった。それこそ、人間として過ごすだけなら十分すぎるほど。
ただ、天使たるもの、生き物の持つ波動を読み取れないでどうする。
やはり悪魔はどこか歪んでいるのだ。
「……お前、前見て走りや」
「それはせやけど、今はちょっと───」
「あー!おった!!」
「ゾムみっけ!」
ゾム、そう呼ばれた男が後ろを振り向いた瞬間、5人ほどの子供たちが茂みから飛び出してきた。
所々に葉っぱをくっ付けた彼らは、先ほどまで鬼ごっこでもしていたかのようにまた意気揚々と駆け出す。
「やべ。じゃあ旅人さん、また教会であおな!」
「え。は、はぁ……」
返事をする間もなく、修道服の背中は子供たちに囲まれて見えなくなっていく。
残されたトントンは、しばらくその方向を見つめたままだった。
初対面のはずなのに、どこかで会ったことがあるような安心感がある。
なのに、彼は悪魔なのだ。
妙に人間らしい振る舞いや、子供達と楽しそうに村を駆け回るあの姿。村に馴染みすぎている。
胸の奥に、説明のつかない、嫌悪でも警戒でもない感覚がざらざらと残る。
目があった時に見えた、あの一瞬の確かめるような目がこの世のものではないような美しさと儚さを醸し出していて、それと同時に気味が悪かった。
◇
教会の扉は、思っていたよりも軽く開いた。
軋む音と共に、内側から静謐な空気が流れ出してくる。
どこか落ち着くような静かな、それこそ祈りに満ちた気配。
戦場とは真逆の世界だった。
「お、さっきの旅人さんやん」
軽い声が背後から降ってくる。
振り返ると、そこには先ほどの修道服の男が立っていた。
彼の気配に気づかなかった。もしかすると、彼は上位階級の悪魔なのでは。そう一瞬逡巡する。
「あんたは、ここのシスター?」
「せやで。身寄りがなかった俺を住まわせてくれたみんなへの、軽い恩返しみたいな感じで。」
その言葉に嘘はないように見受けられたが、同時に本当だとも言いづらい。
ステンドグラスを通してカラフルに色づいた光が整った横顔を染めている。
「こんなちっぽけな村になんのようなん。
まさか、俺目当て?笑」
「───っ、は?」
ニヤニヤ、チシャ猫のようにその瞳を細めて揶揄うようにゾムは身を乗り出した。
その言葉の意味を考えると同時に、一瞬身構える。
そりゃそうだ。俺がゾムのことを悪魔だと見抜いたのだから、ゾムも俺のことを天使だと見抜いているに違いなかった。
「んはは、なーんてな!お前、おもろい反応するやんけ。名前は?」
しかし、ゾムはそれ以上踏み込むことなく、身を引いてぱっと花を綻ばせて笑った。
まるで何事もなかったかのように、敵と相対しているとは思えないような無防備さで。
その態度に脳が混乱する。単に揶揄っているだけなのか、分かっていて遊んでいるのか。
「……俺はトントン」
「とんとん?…豚?」
「誰が豚やねん!」
「ふはは、ごめんごめん!」
腹を抱えて笑うゾムに思わず眉を顰める。
何がそんなに面白いのか。初対面の人間相手にここまで遠慮がないものだろうか。
やけに先ほどから馴れ馴れしい彼の態度に不思議になる。
しかも悪魔にとって天敵である天使に対してこうなのだ。元々人懐っこいのか、それとも一種の戦略なのか。
「俺はゾム」
「……さっき聞いた」
「え、覚えてくれとんの?良いやつやん」
嬉しそうにその瞳が輝き、子犬のような表情で覗き込んでくる。
あざとく上目遣いになるよう屈んでいて、絶対わざとだとわかっていても一瞬心臓が跳ねた。
確かにゾムは美形だった。悪魔であることを惜しく感じると共に、自分自身の容姿を活かす強かさは悪魔らしかった。
「よろしくな、トントン」
そう言って、ゾムは何の躊躇いもなく手を差し出した。
その少し柔らかそうなもちもちの手で、一体どれくらいの人を誑かし堕としてきたのだろうか。
手を出すのを躊躇った。
悪魔であり討伐対象なのだから、本来ならば触れることすら躊躇うべき存在。
それなのに。
「……握手せんの?」
差し出された手が、くいくいと急かすように揺れる。
今度はしょんぼりと眉を下げ、迷子のような表情で不安そうに首を傾げた。
「仲良くしよ?」
その一言に、思わず鳥肌が立ってしまった。
天使が悪魔と仲良くする、だなんて。
ありえない。
ありえない、はずなのに。
「……変なやつやな、お前」
気付けば、その手を取っていた。
いくら人外だろうが、血の通った暖かみを感じる、生きている他人の手。
自分でもわからない。でも、目の前の生き物が少し可愛げのあるものに見えたから。
ふわり、と。
何故かゾムの目が嬉しそうに細められたことに、トントンは気づかなかった。
◇
あい終わり
プロローグから1000いいねありがとうございます🙄💋
堅実で真面目に生きてきた天使tn×遊んで誘惑してふわふわ享楽的に生きてきた悪魔zm
↑ド癖
そしてzmに新たな扉を開かされるtnには涙が止まりませんえろい
ちなみにzmの手をもちもちに描写したのはリアルに寄せるためです。
zmのリアルハンドもちもちで美味しそうだなといつも思ってる
コメント
8件
tnがzmを天使って見破った後にzmの後ろから子供達が来るシーン大好き
あなたは頭に辞書を飼っているんですか?語彙力ありすぎでしょ⁉️ 惹き込まれすぎてめちゃくちゃ時間かけて読んじゃった、わたしも運命的なモン感じてる💞 zmさんに新しい扉開かされるtnさん大好きです、そのセンス流石にシンパシー感じてるよ❓え、付き合っちゃう❓ うわうわうわ、zmさんの手もちもちなの可愛いよね、何回も握手しよ🤝🤝
うわあ、もう2話も読んじゃった…!🥀 天使×悪魔の組み合わせ、しかもトントンが堅実でゾムがふわふわ享楽的ってギャップがすごくいいね…。 「仲良くしよ?」って言われて手を取っちゃうトントンの心情、すごく分かる気がする。悪魔なのに人間臭くて、逆に怖いのに気になる存在になってる。 教会の静かな空気と、ゾムの軽いノリの対比がまたドキドキする…続きが気になるよ!🤍