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Sara
220
愛を知らない失敗作 ▹▸ gtus
※失敗作少女の曲パロ含(本当に少し
※模造注意
※年齢操作有
👇🏻イメージ
🐮 ▹▸ 10歳未満
🦀 ▹▸ 🐮より2、3歳上
🐱 ▹▸ 20歳後半
🥷 ▹▸ 30歳前半
愛の受け取り方を知らない失敗作 と 愛の渡し方を知らない失敗作
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
「この役たたず!どんだけ金を食ってきゃ気が済むんだよ!」
「ぁ……ご、め…なさ、」
狭く、明かりも付いていない薄暗い部屋に怒鳴り声だけが響く。
「お前は窃盗も家事もなんも出来ねぇ!ただこの家の金の底をつかせたいだけなんだろ!?あ゛ぁ!?」
「ち、ちがっ、」
「もうお前なんか要らねぇ!出てけ!この、_」
その一言で、頭を何かで殴られた気がした。目眩がして、頭痛がして。ただ、服の首元を掴まれて引きづられていることだけは、物に当たることで分かった。
やめて、そんならんぼうにしないで。いやだ、ごめんなさい。つぎはちゃんとするから…だから、だから…
「すてないでくだ_」
小さく、枯れた声を出し切る前に玄関の扉がバンッと頭に響くほど大きな音を立てて閉められた。
「あっ……はっ、ぁっ…はぁっ、ひゅっ…はっ、」
激しく雨が降って雷も近くで落ちている。日はとっくに落ちていて周りは街灯で少し明るくなっているだけ。そんな中、まだ10歳にも満たない幼い子供が追い出されたのだ。しかも、実の親に。それだけでも大きな恐怖で呼吸が荒くなる。体は雨に打たれ段々体が冷えていく。何をしたらいいのか、どうしたらいいのか。そんなのは考えれずただ体を丸めて呼吸が正しくなるのを待つしか無かった。
「_大丈夫?」
「……?」
少し長めに時間が流れ、もう意識もあやふやになりかけていた時、冷たい雨粒はが当たらなくなっていて少し低い声がした方を見る。そこには俺を見る大人がいて、その目線に対して怖くなってしまった。
またぶたれる?またなぐられる?またけられる?またおこられる?またくびをしめられる?
そんな不安が、怖さが頭に過ぎって体の震えが増す。
「…おじさん、何もしないから…だから、」
手を伸ばされ、怖くて振り払ってしまう。
いやだ、やめて。ちかづいてこないで。いやだ。いやだいやだいや_
「君!」
「あ゛っ…」
俺はそのまま、意識を落としてしまった。
「ん゛……」
目が覚めると、見慣れない天井。見慣れない部屋の中だった。ここはどこなのか、これから俺は何をされるのか。それが分からなくて、かけられていた毛布の中に潜って身を潜めてしまった。
「……あの子、まだ起きてないかな」
昨日の男の声が聞こえた。微かな音だったけれど、俺には聞こえて体がまた震え出す。
はやく、はやくここからでないと_
「あ、起きてたんだね。おはよう」
「っ、ぁ…」
おわった。
そう見つかった瞬間、背筋が凍るように思った。あの時はまともに意識もはっきりしていなくて顔を見ていなかったけれど、その男の瞳はとても優しそうで、暖かな眼差しだった。
「ごめんね。急にこんなこと連れてきちゃって」
「…」
怖くて声を出すことができない。声が引っ込んで出てきてくれないように。
「取り敢えず、お腹すいてると思ったから色々買ってきたんだけど…どれ食べる?おじさんも何も食べてないからお腹ぺこぺこでね〜」
淡々と話す姿を横目に、並べられていく食べ物に目を奪われる。
はじめてみた。こんなおいしそうなもの。いつもは残り物の賞味期限が切れた食パンや何日も経った残飯が俺の腹を満たすものだった。
「さて、何が食べたい?好きなものを食べていいよ」
「っ!」
そう言われ、目の前に置かれていた食べ物をすぐ手に取った。
「ピザかぁ…1切れしかないけど大丈夫?」
1切れ、言われどういう意味か分からないが縦に頷いて袋を開ける。そのままむしゃぶりつくようにかぶりつくとぶわっと口の中に美味しい味が広がった。
「ふふ、美味しい?」
「…ん、」
美味しくて、1つしか無かったからすぐに食べ切ってしまったが未だお腹は減ったまま。久しぶりの食べ物を口にしたからかお腹が大きい音を立てて鳴る。
「まだまだあるから食べていいよ。1つだけおじさん貰ってもいいかな?それ以外は食べれる限り食べてくれていいからね」
「!!!」
そう言われ、1つだけ男の人に渡して目の前に広がる食べ物たちを次々と口の中に入れていく。どれも新しい味で、噛み心地が柔らかかったり硬かったりと食べ物の新しい世界を見た瞬間だった。
「全部食べたんだね…それだけお腹すいてたか」
「…ぁ、ごめ…なさぃ…」
全部食べていいとは言われたがまさか本当に食べ切ると思っていなかったのか指摘され、あの人と同じように怒られるのかと錯覚し、反射で謝ってしまう。
「えぇ!?なんで謝るの!?寧ろそれくらいが嬉しいからね?」
「ぇ、」
このひとはおかしいのだろうか。
と思ってしまった。これだけで『 嬉しい 』と言われて喜ぶことはないと思っていたから。
「さて、お風呂でも入ろうか。一応俺の服を着せたとはいえ大きすぎるし…君が着てた服は洗濯して今乾かしてるから安心してね」
「ぇ、ぁ……は、ぃ…?」
この人がなんで俺に優しくしてくれるのかが分からなくて曖昧な反応をしてしまう。
確かに言われた通り、服は着ていた服じゃなくて白いまっさらな新品のような服だった。
「ぁっ、ぇっ…ぬ、ぬぎま」
「あー、ここじゃなくて風呂場に行ってから脱ごう?」
「……ほんとに、いいんですか?」
「ん?何が?」
「こんな、きれいな…おれ、きたないのに、」
「汚くなんかないよ。大丈夫だって。あ、お風呂1人で入れる?」
1人で入れるかと聞かれたら、それは難しい。今まで風呂なんか冷たい水をかけられただけで何もかも使い方が分からないから。そう思って俺は横に首を振った。
「そっか、おじさんと一緒でもいいなら…入る?」
「…」
正直、まだ完全に信用できた訳じゃない。だけど、この人の手はとっていい気がして。その言葉に甘えることにした。
「ちょっと熱いかもしれないけど、かけるよ」
「は、はぃ…」
そう言われ、体を強ばらせるがそこまで熱くなくて、寧ろ暖かいに入る程の水だった。
「…痛くない?」
「だ、だいじょうぶ…です」
沢山心配をしてくれて、こんなにも心が暖かくなるのかと思った。こんな温もりは今まで1度も触れたことがなかったから。そう思うと、涙が出てきて視界がぼやける。
「わ、な、泣いてるの、?」
「ごっ、ごめんなさっ…」
「大丈夫。これまで、辛かったんだね…」
優しく背中を撫でられて彼に倒れ込んでしまう。ただ縋るように涙が枯れるまで泣いた。
「湯船に入るのは初めてなの?」
「…はい、」
彼の膝の上に座らせて貰い、暖かい水に体を休ませる。
「……これからは、毎日入ろうね」
「…いいんで_」
「入れないのが普通じゃないからね。いいとか悪いとかないから、君がいた場所が悪かったんだよ」
「…」
場所が悪い。そう言われると実感はあまり湧かない。俺にとっては、あれが日常だったから。
「…君の家は、あそこの家なの?」
「ぁ、まぁ…」
場所を変えてしまったらまた怒られてしまいそうで動けなかったのを思い出し、正直に言ってしまった。
「…今度、その家に俺だけで行ってみるよ」
「な、なんで」
「…君の親権を貰おうと思って」
「し、んけん…?」
“ しんけん “とはなんだろうか。態々あの場所に行ってまでしなければいけないことなのだろうか。
「君の親になる権利を貰うってことだよ」
「お、おや…なんで…なんでこんなおれのために、」
「君を見ているだけで心が痛むんだ。それに、過去を思い出しちゃうからね」
その言葉に、あまり理解できなかったが深入りする必要も無いため何も聞かなかった。それから少ししてお風呂を出て服を着替えた。とはいえ俺の服はないからまた借りることになったのだが。眠っていたソファの上であの場所にもあった大きい画面のものを見ながら話をした。
「あぁ、そういえば…君の名前を聞いてなかったね」
「ぇっ、」
” 名前 “
そう言われ、俺は固まってしまった。何故なら、
「……おれには、なまえが、ありません…」
「……」
少しの間、冷たい沈黙が続く。言わなければよかったか、だけど瞬時にいい言い訳が思い浮かぶわけがなかったのだ。
「…そっか」
やっと聞こえてきた声は、暖かな声だった。だけどどこかには棘があるような声で、少しだけ絶望してしまった。
「じゃあ、名前を付けようか」
「ぇ、?」
「君、動物とかは好き?犬とか、猫とか。あまり見ないとかだと牛とか?動物園ではあんまり見ないな…」
突然の話で俺は追い付けず少しパニックになる。だけど、” 牛 “が何故かしっくりきて少し興味が湧いた。
「お、牛に引っかかったな?じゃぁな〜…あだ名みたいになっちゃうけど、
” 牛沢 ”
とか、どう?」
あまり口にはしなさそうな名前だが、俺はすぐにその名前が気に入った。俺は首を縦に振ると「じゃあ決まりね」と言われ、嬉しくなった。初めての名前。俺には一生つくと思っていなかったもの。それだけで本当に嬉しかった。
「んー、でも牛沢となると言いにくいな…もっと呼びやすく…うっしーって呼んでもいいかな、」
「う、っしー…」
先程興味を持った牛に沿って呼ばれる名ならば、俺は嬉しいの他に感情はなかった。
「俺の名前は
“ ガッチマン “
皆からはガッチさんって言われてるから呼びやすい方で呼んでね」
「が、がっちさん……わか、っ……わかりました、」
「敬語はいらないよ。もう今日から君の家はここなんだから、” 家族 “なんだから」
家族と言われ、あまり実感は湧かないけれど家族というものがどういうものか分からないからこそ、また嬉しくなった。
「うっしー、今なにかしたいことはある?」
「え、っ…」
なにかしたいこと、それを聞かれると特に何も浮かばなくて周りを見渡す。すると目に止まったのがあった。
「ゲームか。結構いい趣味してるじゃん」
「は、はぁ…?」
「どれがいい?流石に初手でホラーはトラウマになっちゃいそうだし…簡単なゲーム…簡単なゲームかぁ、」
ゴソゴソと物音を立てて色々なものを漁っている姿をじっと見つめる。
「あ、これ…これなんてどう?」
「な、ん…?」
「あ、そっか…何もわかんないもんね。Miiってやつなんだけど。4人まで出来るやつだしいいかなって」
「じゃぁ…それで、?」
ガッチさんは黒い紐を壁に刺して色々準備を始める。その横で、先程まで暗かった板がカラフルに光っていて、その画面に目を奪われていた。そんな中だった。
「……あの、ガッチさん、」
不意に、後ろから控えめでだけどガッチさんよりは高めの声が聞こえた。
「あ、レトさん。どしたの?」
振り返るとドアの隙間から顔だけを覗かせていた少年が立っていた。少し長めの明るい髪に、眠そうな瞳。だけどその瞳の奥はどこか見覚えのある色だった。ガッチさんに気付かれ部屋に入ってくるも俺を見て踏みとどまっていた。
「うん…なんか、声してたから…」
ゆっくりと部屋に入ってくるその足取りは軽くはなかった。何かを警戒するように様子を伺い、距離を測るような足取りだった。
「…ガッチさん、この子昨日話してた子、?」
「よく覚えてたね。そうだよ。ちょっと色々あってここに居てもらってるの」
” 色々 “で片付けられるほど軽くないのは、ガッチさんの話し方で俺でさえ何となく感じ取れた。
おれのこと、まもってくれてるんだ。
レトさんと言われた少年はガッチさんに頭を撫でてもらいながら視線を俺に移した。その瞬間、体が跳ねるように反応した。
「……」
「っ゛……」
怖いわけではない。だけど裏の安心という訳でもないのだ。ただ、目付きから、立ち振る舞いから……” 似てる “と思った。
「…ぁの、俺…ぇと、
” レトルト “
…」
「ぇ…」
ぽつり、と名前を伝えるというより置くように彼は言った。
「…無理に、喋んなくていいから」
どこか冷たい声だけれど言葉は優しかった。それでも、どこかぎこちない話し方で、不器用にも感じた。だからこそ、少しだけ安心した。
「ぅ、うっ、しー……」
「……え?」
「ぉ、れの…なまえ、」
小さく伝えるとレトルトは一瞬だけ目を丸くした。それから少しだけ笑った。
「そっか、うん……うっしー、ね」
名前については何も言われることがなかった。だけど否定もされなかった。それだけで俺にとっては十分だった。
「ぁ、レトさんもやる?このゲーム。1回だけやったことあったと思うけど…」
「ぇ、やりたい…」
「いいよ。ほら、もう1人増えた方が楽しさ増すし、ね?」
「じゃぁ、やる…」
そうレトルトに縦に長い機械を渡すガッチマンの様子を見て、3人で画面の前に座る。少しだけ空気が和らいだ気がした。その時_
「ガッチさーん!」
バンッと大きい音を立てて勢いよく扉が開く。
「!?」
「うわ、びっくりしちゃったじゃん。
” キヨ “
か…なに?」
「仕事終わったから暇!何してんの?」
元気そうにズカズカと部屋に入ってきた男は柔らかくなった空気なんてお構い無しにレトルトとガッチさんの間に入る。
「なんか楽しそうなことしてるー!ずるくね?俺も呼べよ」
「いや、暇なかったし…それに勝手に入ってくるじゃんか。キヨは」
「だって全然ガッチさん構ってくんねぇし」
そう言いながらキヨという男の視線が俺に向けられた。その瞬間瞳の温度が一瞬にして下がった気がした。
「……あ゛?」
一瞬にして心臓を取られたかのように彼の視線に閉じ込められた気がした。
「誰?こいつ。こんなやつ見た事ねぇんだけど」
遠慮の欠片もない言葉が俺の体に刺さる。また、あの人と同じように怖いことをされるのかと体が強ばって思わず隣に居たガッチさんに盾になってもらってしまった。
「昨日話した子だよ。うっしーって言うの。ったく、レトさんは覚えててくれたのに…なんで忘れるかね」
「あー!俺のせいにした!だってキョーミ無かったんだもん!」
ガッチさんは呆れるように言うもキヨという男は駄々を捏ねるように話していた。
「ま、いいや。お前もやるってことでしょ?」
「……え、」
予想していなかった言葉にひくつく。
「4人で出来んだろ?ちょーどいいじゃん」
そう言って当たり前のようにポンポンと縦に長い機械を1つ掴んだ。
「はい、これお前の」
投げるなんてことはなく、手の上に置かれる。
「あ、それ落とすなよ?壊したら泣くぞ。結構このゲーム気に入ってんだから」
「キヨくん、それ脅しに入るよ」
「うるせぇな!」
今までは触れることすらなかった騒がしさ。違う騒がしさなら毎日目のあたりにしていたけれど、こんなにも幸せなことがあったのだと胸が熱くなった。
たのしい、ってこういうことなのかな。
「おし!やるぞー!」
賑やかな声と一緒にゲームが始まる。何をしたらいいのか分からないまま他の3人に言われるがままボタンを色々押していると横から笑い声が聞こえた。
「ちょ、なんかおかしいって思ったらうっしーコントローラー逆!逆だって!」
「ぇ、え?こ、こんとろー、らー?」
「ははっ!落ちたじゃん!奇跡とか道のりなげー」
「キヨくん、教える気あるん?ガッチさんがほぼ教えとるやん」
「あるある!あるって!」
騒がしいのに、不思議と嫌じゃない。そんな楽しい空気の中で、キヨがなにか思い出したように口を開いた。
「あ、そそ。話したいことあって…_」
その瞬間、ガッチさんが食いつくように。それか俺達には聞かないように。口を挟んだ。
「待て。今ここで言うのはやめろ。ここはダメだ」
先程までの優しい声ではなく少しだけ低く、さっきまでとは違う空気に思わず手が止まった。
「あー、はいはい。そういうの考えてなかったわ、」
「ごめんね、すぐ戻るから2人で待っててね」
ガッチさんはそう言って同じ優しい顔を向けてくれる。キヨもそれ以上は言わずガッチさんの後ろについて行くように廊下に出ていった。
それでも、さっきのガッチさんの低い声が頭に残って離れない。2人が部屋を出て行って、扉が静かに閉まる。そして、レトルトとの無言の時間が流れる。電源が着いたままのゲームの音だけがやけに部屋に響く。先に口を開いたのはレトルトだった。
「……さっきの、さ」
「ぅ、うん…?」
「聞かない方が、いいやつだと思う?」
少しだけ視線を落としてコントローラーを握り直す。握る力は、少しだけ強かった。
そう言われると分からなくなる。だけど、
「こわい、」
これだけは、正直に出た言葉だった。
「……だよね。俺も、ちょっとだけわかる」
レトルトは小さく笑いながらそう言ってくれた。俺よりも長くこの場所に居るはずなのに、” 分かる “と言ってくれた理由はなんだったのか。疑問に思ったが何がとは聞けなかった。でもその声は、出会った時との距離より近く感じた。
「でもね、ガッチさんのあの顔する時…ちゃんと、守るって時なんだよ」
レトルトは顔を上げてゲーム画面が表示されたままの画面を見て言った。
「…まも、る、?」
「うん…だから、多分大丈夫」
その言葉は、俺に向けてでもあると思うがレトルト自信に言い聞かせているみたいだった。
しんじていいのかわかんない。
それでも、昨日みたいに1人じゃない。それだけで、少しだけ怖さが薄れた気がした。
「はぁ、お前さ…タイミング考えろよ」
ガッチマンは少し怒りを含みながら低く言う。だが俺はそれが日常茶飯事だと分かっているから軽く流す。
「いやだってさ、あれ…うっしーが関係してたから…」
「は?」
ドスの効いた声が廊下に響く。子供達に聞かれていないといいが。
「はぁ゛……〜、一旦その話は後で聞く。それで?何があったの」
「面倒なことになった。あのクソ親は特に何も動きは…あるといえばあるけどそこまで大事じゃないから後で伝える。それよりも金を借りてるあの連中が派手に動き出した」
「はぁ…本当に周りが見えないんだな」
「そんなこと言ったって…」
「取り敢えず、近々うっしーの親のとこに行くつもり」
「は、なんで?」
「親権を貰う」
ガッチさんは真剣な眼差しで俺を見上げた。いつものように、何も迷いのない瞳だった。
「…わかった。でも、せめて俺だけでも連れて行って」
「…何もしないなら」
「はぁ?俺のこと信頼してないっての?」
「してる。してるから…だからこそなんだよ」
2人の鋭い視線が強く交わる。どちらも引く気はない。それは、長年一緒にいることから俺もガッチさんも分かっていた。だけどそれでは埒が明かない。だから、俺が降参するしか無かった。
「……分かったよ。何もしない。だけどついて行くだけさせて」
「…分かった」
「…それでも、相手がなにかしでかしてきたら俺は動くからね」
「……そう」
もう、ガッチさんは抗う気持ちも気力も無かったのだろう。ただ、目の前に居る新しくできた大切なものを守るために。
「俺のことは止めんなよ」
「嫌だ」
「やめろ」
「俺はガッチさんまで失いたくない」
「……わかったよ」
珍しくガッチさんは降参を口にした。
「…で?いつ行くの。近々って言ってたけど、早めに行かないと_」
「今夜行く」
「はぁ!?俺のことはお構いなしかよ!」
「早めの方がいいって言ったろ。お前が。俺だって早く終わらせたい。長引かせてなんかやらねぇ」
ガッチさんはそれだけ言って2人の子供が待つ部屋のドアノブに手をかけて開けた。
「あ、ガッチさん」
「!」
レトルトの声によって、ガッチさんが部屋の中に入ってきたのが分かり、ソファを降りて近くに行く。
「遅くなってごめんね。もう話は終わったから、ゲームの続きしよっか」
柔らかい笑顔。柔らかい声。なのにどこか先程とは違うのは、感じ取れた。
「はなし、なにかあった?」
「ん、?大丈夫だよ。ちょっとしなきゃ行けないことはできちゃったけどね」
軽く笑って何事も無かったようにコントローラーを持ってゲームを再開しようとするガッチさん。ガッチさんなら大丈夫なのだということはわかっている。だけど、
ほんとうにだいじょうぶなの?
という疑問だけは、不安だけは段々募っていく。そう、会話に入らず考えていると突然目の前にコントローラーを置かれる。
「え、」
「ほら、やんぞ。続き…次こそは奇跡起こしてやんよ」
コントローラーを渡してきたのはキヨだった。さっきと同じ乱暴な言い方だけれど、持っていた怖さは無くなっていた。
「……うん、!」
嬉しくて返事をすると、キヨは少しだけ笑っていた。ほんの、一瞬だけ。
「よし、じゃあ再開な!」
ガッチさんの一言でゲームがまた始まる。笑い声が再度この部屋にだけ響く。だけど、俺はその裏でなにか動いていることには気付けなかった。
「ガッチさん」
「ん。もう行くよ」
子供達が寝静まった頃、俺ら2人は例の家に向かう為2人が寝ているか確認をしに来た。
「寝てた?」
「…うん、ちゃんとね」
正直、ちゃんと寝ていたかはよく分からない。確認の仕方も、何も知らないから。レトさんのことはキヨに大体を任せていたから、何も分からない。
「……行こう」
「…うん」
昼間とは違く、静かな空間。張り詰めた空気。
「……がっちさん、」
「ん、?」
「うわっ!?び、びっくりした…」
「キヨ、レトルトおきちゃう」
「うっしー……起きてたんだ」
後ろから聞こえた声は幼い例の家の子供で、起こしてしまったのかと申し訳なくなる。
「どっか、いっちゃうの、?」
「うん、しなきゃ行けないことって言ったでしょ?」
「ぁ…… 」
不安そうな目で問いかけられ、俺は優しく答える。 うっしーは俺の言葉を覚えていたようで理解してくれたみたいだ。
「また、いなくなったりしないよね、?」
その言葉に、胸が締め付けられる。
「居なくならないよ。大丈夫。絶対に帰ってくるから、だから……いい子にしててね」
「……うん、」
「ちゃんと帰ってくる、って約束する」
少し間を置いて、うっしーの気持ちを落ち着かせるために言葉を重ねる。
「わかった、いいこにしてまってる」
「ん、ありがとね」
うっしーの頭を撫でてキヨの方を見る。
「早く行こう。逃げられるかもしんない」
「そこまで頭は回ってないだろ。焦ることもない」
「どーだか、俺は心配だね」
軽く言い合いをしながら、俺達の家を後にした。
「…うっしー」
「れ、レトルト…起きてたの、?」
静かになった部屋で俺は寝室に戻り、眠れぬまま過ごしていたら隣から声が聞こえた。
「その、俺も眠れなくってね」
「……そっか」
「あのね、ガッチさん…のことなんだけど。絶対、何かのために壊して帰ってくると思うの」
「……ぇ、?」
少しだけ視線を落としてレトルトはそう言った。冗談みたいな言葉だったけれど、どこか本気だと伝えたいような声だった。
雨の匂いが未だ残っているような気がした。あの日と同じだな、と不意にも思った。
「ここなの?」
「うん。うっしーを拾ったのがそこの電柱だからね」
「……そ、」
キヨは素っ気なく返したが、キヨ自身も子供は好きだしそういう状況に置かれた子供は助けたいという気持ちがあることは知っているから、自身があの当たり方をしてしまった点に対して後悔しているのだろう。
どこまで行っても、結局は優しいんだよな。コイツは。
「…すげぇボロいな」
「そりゃ、借金まみれだとそうだろうね」
そんな軽い会話をしながら、俺はインターホンを押した。少し経って扉が開いた。
「どちら様で?」
「先日、貴方の子供と思われる子を拾った者です」
「……はぁ、アイツのことですか。それで?なんの用です?」
「あの子の親権を貰いに来ました」
「あぁ、どうぞ」
すぐに返された言葉に、俺は少し反応するも無視をした。ただ、隣にいるやつは怒りを抱え、体が震えていた。
「親権については何もないと?」
「…どーせ捨てる予定でしたのでどうぞ貰ってください」
「…そうですか。なら手続きはこちらで致しますのでまた後日来させていただきますね」
「あーあー、そういうのいいから勝手にやっといて。俺は今ちげぇことで忙しいからよ」
「そうですか」
黒く、ドス黒く濁ったものが俺の中に流れ始める。だけれど、今は動くときでは無い。それが分かっているから、ただ我慢するしか無かった。
「やー、あんなやつ引き取ってくれてありがとな。どうせ、」
「 役立たず 」
「だったからな」
その言葉で、隣のやつの糸が切れた。一瞬にして纏っている空気が変わった。
「…キヨ」
向こうにいる相手には聞こえない声量で小さく止める。キヨはため息を含みながら言った。
「…分かってる 」
「じゃぁ、もういいですか?」
「……ええ」
「それじゃあ_」
「ですが」
帰ろうとする相手を止めるように口を挟む。
「 あの子にはもう二度と会わないでください 」
「あ゛?会いたくもねぇやつに会うわけねぇだろ」
「そうですか。なら、貴方様の借金も…私が肩代わりしておきますね」
「は?」
横から意味がわからないと言う声が聞こえたが無視をし、相手に目を向ける。その相手は目を見開いていたが、すぐに「そうかよ」と喜ぶ姿も見せずに家の中に入って行った。
「……ガッチさん」
「何?」
手が出ないよう、すぐにこの場から離れようと歩きながら話を続ける。
「アイツの肩代わりなんかして何になんの?意味ねぇじゃん」
「意味あるよ。だってそんなことでもしとかなきゃ後から面倒なことになりそうだからね」
「……あっそ」
キヨは納得いっていないようだが反抗する気もないようでそのまま俺に着いてくる。それでも、苛立ちはどうにもならないようで、頭を掻きながら物騒な事を言い始める。
「あ゛ー、殴ってやりたかった」
「やめろ。そんなことしたらうっしーに被害が出る」
「……わぁってるよ」
不機嫌そうに返事は返されたが、その点はしっかり分かっているようで安心した。
「……あのガキ、あんなとこに居たんだな」
「うん」
「……そりゃ、ガッチさんでも助けるか」
キヨの声は少し低く、落ち込んでいるような声だった。俺はその言葉に対して、何も言わなかった。
「!」
玄関の鍵が開く音が聞こえ、俺は起き上がって2人の元に向かった。
「う、うっしー」
「ぁ、ごめんなさい…」
「ううん、大丈夫だよ。寧ろ不安にさせちゃってごめんね。いい子にしてた?」
「…どこにもいってないし、ずっとおふとんのうえにいたよ」
「そっか。じゃあいい子にしてたんだね」
頭を撫でられ、不安がすっと消えていく。ガッチさんの手は、とても安心できるから。
「うっしー、ちょっとだけ悪いことしちゃう?」
「え、?」
「お菓子、夜だけど食べちゃおっか。ホットミルクとかも…一緒に飲もうか」
「う、うん」
普通の日常を送ってきた訳でもない俺は、何が悪いことなのかと思ったが後々レトルトに伝えてみると「ぇー、いいな…俺も夜にお菓子食べたかった」と言われたので普通はしちゃダメなことだというのは分かった。ガッチさんと一緒にリビングに向かうといつの間にかどこかに行っていたはずのキヨまでも一緒に居てびっくりしたが、少しゆったりとした時間が流れた。
「うっしー、美味しい?」
「う、ん…」
不安そうな目で見つめられる。
あまくて、あったかくて、しらないあじ。やさしいあじ。
ガッチさんと出会ってから、色々なものを知って行く。それがなんだか、嫌ではなくて寧ろ嬉しかった。
「そっか」
ガッチさんはそれだけ言って何も言わなかった。何かを言わせようとしない雰囲気で、ただ寄り添って同じ空間に居るだけ。
「あの、ガッチさん…キヨ、」
「ん?」「何」
震える口を開いて、声を出した。
『ごめんなさい』は、違う気がしたから。
「 ありがとう 」
小さい声だったけれど、2人には聞こえたみたいで。2人して同じように目を見開いていた。少しの間沈黙が続いて、先にガッチさんが口を開いた。
「………うん」
ガッチさんは、それだけ言って何も言わなかった。短い肯定だったけれど、それだけでも胸の奥が熱くなった。
「…寝よっか。おじさんも、キヨももう眠たくなっちゃった」
「…ん、」
ガッチさんが俺に手を出してくれたけれど、その手を取るのではなく、裾を引っ張った。
「ん、?」
「い、いっしょに…ねたい、キヨも…だめ、?」
「は、はぁ?俺もかよ、大人2人に子供1人って、入んねぇんじゃねぇの、」
「じゃあレトルトのほうにでもはいってねてよ」
キヨがブツブツと不満を口にするもどこか嬉しそうなのがわかって、選択は間違っていなかったんだと分かった。
「いいよ、一緒に寝よっか。ほらキヨも」
「はいはい…」
布団まで一緒に歩いて、灯りを落とした。
俺はガッチさんと、キヨはレトルトと。雨音が微かに聞こえる中、深い深い眠りについた。
隣に感じる温もりがとても心地よくて、何も不安なんか残らなかった。
もう、あの場所にいなくてもいい。
全部、知らなくたっていい。
ただ、ほんの少しだけ。もう少しだけでも、
ここに居てもいい
と思った。
” 失敗作 “のままでもいいと思えた。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
🥷🐮要素ありました?これ。失敗したかな…でも結構好きな系統なので失敗とは思いたくない!!!!
そして1万文字超えた!!!!!
🐮の台詞が全て平仮名なのは理由があります。当ててみてくださいいい🙌✨
今の私はグッズ発表にビクビクしています。
このお話は、
愛を受け取ることを許されなかった子 と 愛の渡し方を知らないまま大人になった人
の2人のお話。
コメント
3件
めっちゃいい...🫣💖 大人が怖くなっちゃったけどだんだんgtさんに心を開いていく?みたいな感じがめちゃ2好きだあぁ! 平仮名なのは漢字できないから?幼児だから??わからないなあ...🤔🌀