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家族でも 愛させて欲しい

1 - 第1話 「桜のあとに、夜がきた」

2025年08月04日

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第1話「桜のあとに、夜がきた」


病室には点滴の機械音だけが静かに鳴っていた。

薄いカーテン越しに差し込む夕日が、白いベッドをほんのりと金色に染めている。


「……卒業、したよ」


咲夜は、ぎこちなく笑いなが制服の第2ボタンを指でいじっていた。胸ポケットには、卒業証書の筒。

ベッドに横たわる母・夜桜玲美は、やせ細った身体で、微笑んだ。


「ふふっ、そう……。咲夜、本当に……よく頑張ったわね」

「……べ、別に……。ただ、普通に学校行ってただけだし」


母親の前では、素直になりたい。でも、なんか気恥ずかしくて、そっぽを向いた。


「……ほんとはさ。…ちゃんと……母さんにも、卒業式、見せてやりたかったけど…」

「見えたよ」

「え?」


玲美は、掠れた声で、でも確かに笑っていた。


「咲夜が…真っ直ぐ歩いてる姿も、壇上で表彰を受け取ってる時も……ちゃんと、全部見えてた。……だって、咲夜のこと、見ないわけ、ないじゃない」

「……っ、そ、そんなこと言っても……母さん、今、ベッド…」

「咲夜は…私の、宝物だったよ」

「……や、やめろよ、そーいうこと言うの…」


咲夜は、唇をかみ締めた。泣きそうなのを誤魔化すように、顔を背けて、鞄からタッパーを取り出す。


「……今日の夕飯。ほら、ちゃんと作ってきたんだから……。冷める前に食べてよ」

「ありがとう、咲夜……でもね……」

「なに?」


玲美は、ゆっくりと昨夜の手を取って、暖かく握った。とても、細くて、弱い手だった。


「咲夜が……こうして、毎日来てくれて、毎日ご飯作ってくれて……私、それだけで……十分、幸せだったの」

「……そんなの、母さんが勝手に思ってるだけだろ。僕は……っ。もっと……」

「咲夜、ありがとう……」

「大好きよ……」


そう言った瞬間、玲美は、少しだけ、目を閉じた。

そしてーそれが、最期になった。




―葬式は、静かだった。

咲夜は、黒い喪服を着たまま、棺の前から動けずにいた。

たくさんの人が母のタヒを悼むんだ。でも咲夜の中では、どこか現実じゃないような感覚だった。


「……僕は……母さんに……何かしてあげられたのかな…?」


母の声も、笑顔も、触れた温もりも、昨日のことなのに、もう遠く感じる。


「……僕は……ちゃんと話せてたのかな……?」


胸の奥から、じわじわと熱いものが込み上げてくる。

涙は知らないうちに零れていた。

一筋の、静かな涙が、咲夜の頬を伝って落ちていく。

その時だった。

背後から、重たく、そして鋭い声が落ちてきた。


「……夜桜 咲夜だな」


咲夜が驚いて振り返ると、そこに居たのは、制服を着崩し、金髪を無造作に流した、鋭い目をした少年だった。

その少年の背後には、執事らしき男が、淡々と立っている。


「親父からだ、お前ー白銀家に来い。……うちで面倒見ることになった」

「えっ……」


この時、咲夜はまだ知らなかった。これが後に自分の運命をかき乱す存在、「白銀  玲王」との、最悪で最初の出会いだったことをー。









































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