テラーノベル
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先に美術部を潰すことになったサッカー部一行。
しかしサッカー部員で乗り気なのは、マスター、山路のみ。
無駄話をしている間にかなり時間が過ぎていたようで、もう、11時だった。
「あ?早くね?後一時間しかねえじゃん」
マスターが言うと、海が呆れたように言った。
「お前らがくだらねえ話してるからだろ」
「もう着いたぞ」
皐月の言葉に全員が顔を上げる。
『第一美術室』と書かれていた。
よく見ると看板は少し絵具で汚れているようだった。
その看板が、芸術のようで、逆に味を出していた。
「しかし、この中に、あの大量の美術部員が入ると思えないんだが……」
「何人いるんだっけ?」
海が首を傾げると、皐月がまともな顔のまま言った。
「82」
「はあ⁉」
「対してサッカー部は27。勝てる見込みがねえな」
マスターは苦笑を浮かべた。
「おい、こいつらやり方が汚いな!鍵が閉まってるぞ」
山路が美術室のドアの前で悶絶している。
「退け、俺に任せろ」
マスターが前に居た後輩と先輩をどかすと、ドアの前に立った。
そして一息深く吸うと、完璧な構えでドアを蹴破った。
ドオォォォォォォォォン。
とてつもない轟音を上げてドアが崩れ去った。
「な、なんだ⁉」
聞き覚えのある驚いた声を聞いた瞬間、山路の顔が険しくなった。
「秋原‼」
「は⁉なになに⁉」
いつもの男勝りな、ボーイッシュな声とは打って変って、珍しく悲鳴に近い怯えた声を上げた。
「お前なあ、よくも俺の事貶してくれたなあ‼」
「はあ?」
「お前、俺の事モテないって思ってるんだろ⁉」
「いやいや、あれはお前が聞いてきたから」
「問答無用‼」
山路はショットガンを向けると、美術室に居た全員が驚いた。
「おいこら山路落ち着けって‼」
雪がそう言うも、山路が引き金を引いた。
雪は山路に背を向けると、机を盾にし、引き金を引いた。
銃口から出た色水は見事山路のゼッケンに命中した。
「うわっ、何すんだよてめえ‼」
「お前が先に狙ったんだろうが‼」
「ああ?ふざけんなよ!面白くねえ話ばっか書く小説家‼」
「お前も一緒だろうが、自分に言ってんのかよ‼」
「んなわけねえだろ!俺の方が、売り上げ高いし‼」
「ファンクラブの人数はあたしの方が多いだろうが‼」
「うるせえな!ファンの数で勝負すんじゃねえぞ!くそババア」
「小説家がそんなきたねえ言葉使うなや!つかその理論だとお前もジジイだろ‼」
「いちいちうっせえな‼」
途中からも水鉄砲など関係なく、ほとんど口喧嘩に変わっていった。
「夏田さん、これどういう状況なの?」
絵菜が二人を見ながら海に問う。海は首を傾げて「俺も分かんない」と言った。
「お前ら部長は?」
「ああ、今お昼ご飯見に行ってくれてるよ」
絵菜は後ろのドアを見て言った。
そして前の方のドアがあったところを見た。
「えげつねえ……」
「マスターはサッカー部で一番の顔と、一番の脚力を持つ男だからな」
「へえ」
「そうだったんだな。流って確か、前にサッカーゴールひん曲げた伝説があるよな」
「皐月!お前その時いたのかよ」
「ああ、何かな、文華にめちゃくちゃ怒られたらしい」
皐月は相変わらず笑わないまま言った。
「あら?前の方のドア取れてるけど、何があったの?」
美しい声が聞こえた時、サッカー部&美術部の男全員がドアの方を見た。
「カギ閉めてたの壊されちゃったの?あーあ。これで優勝できると思ってたのに……」
ドアの前に佇んで悲しい顔をしたのは、校内三大美女で、人気投票で1位を獲得した黒住一楓(くろずみいつか)。
彼女は学校内の女子の中で一番優しく、一番美人で、妖艶な姿で、一番まじめな女子生徒である。
彼女は概して清楚であり、黒髪ボブヘアで、猫のような目尻は、学校内の男子生徒全員を虜にするほどの美しさである。
「これ、あなた達がやったの?」
彼女はサッカー部の一年生の方を見ると、見られた一年生は、全員がマスターの方を指さした。
「菅沢先輩がやりました」
「おい‼」
指を指されたマスターは焦った表情を見せた。
「あー、そうなんだー……どうしよう……前に先生に聞いたらこのドア200万はするって言われたんだけど……」
一楓は困り顔でマスターの方を見た。
「に、え⁉に、200万⁉」
マスターは驚いて目を丸くする。
「うん……アハハ。蹴破っちゃったんじゃしょうがないよね?」
彼女の顔の奥には若干圧を感じて、マスターはたじろいでしまった。
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