テラーノベル
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今日の企画は、久しぶりの大規模なリアルコラボだった。メンバー全員が、各自の部屋から画面越しに参加する形式だ。
画面上では、なっしーが誰よりも明るく、大声で笑っている。彼の「自分らしさ」は、その圧倒的な陽気さと、常にポジティブな言動だった。しかし、その明るさは、時として彼の「困り事」でもあった。彼は、自分の明るさで周りの暗さを消さなければならないという、無言のプレッシャーに苦しんでいた。
(俺が笑ってなきゃ、この場が持たない…!もっと、もっと面白く…!)
一方、画面の隅で、うみにゃは全身の緊張を感じていた。彼は過去の失敗と強いトラウマにより、社会との接触を極度に恐れる引きこもりだ。彼の「困り事」は、画面の向こう側の「現実」に対する、拭い去れない恐怖だった。
今日の企画には、「突然マイクをオフにして、部屋の様子を少しだけ公開する」という罰ゲームが盛り込まれていた。うみにゃの体は震えていた。
(もし、俺の部屋が映ったら、みんなに引かれるんじゃないか?また、「ダメな自分」を笑われるんじゃないか?)
緊張で声が出なくなり、彼はマイクをミュートにしたまま、チャットでDDに「体調が悪いから抜ける」と打った。
その様子を、なっしーは瞬時に察知した。彼は持ち前の明るさで、企画の空気を一気に変えた。
「おい、DD!お前、今日全然面白くねーじゃん!俺が爆笑ネタをぶち込んでやるから、ちょっとマイク切れ!」
なっしーは、強引にDDのマイクをミュートさせると、自分の方の音量を最大にした。そして、わざと大失敗のゲームプレイを披露した。それは、いつもの完璧ななっしーからは考えられないような、滑稽なミスだった。
「アッハッハ!俺の今のミス、最高に面白いだろ!?俺の『明るい失敗』は、誰にも真似できねーんだよ!」
企画は、なっしーの自虐と明るさによって、大爆笑に包まれた。
その光景を見て、うみにゃは目を見開いた。なっしーは、自分自身の完璧な明るさという鎧を、仲間を救うために自ら壊したのだ。なっしーの「困り事」であった「常に明るくあらねばならない」というプレッシャーが、この瞬間、「誰かを救う温かい光」という新しい「見方」に変わった。
そして、うみにゃへのメッセージは明確だった。
(失敗してもいい。完璧じゃなくても、笑いに変えられる。それが、このニート部だ)
うみにゃは、震える手でマイクをオンにした。
「……なっしー、今のミスは、笑えない」
久しぶりに発した彼の声は、少し掠れていた。
「えっ、なんだよ、うみにゃ!お前、急に喋んなよ!じゃあ、どうすれば笑えるんだよ!」なっしーは、大げさに焦ってみせた。
「……コーラを飲んで、もう一回やれば、笑える」
うみにゃの言葉に、チャットもボイチャも爆笑した。彼の引きこもりのトラウマから生まれた「困り事」は、なっしーという「味方」の光によって、「ニート部特有のネタ」という「自分らしさ」に変わった。
なっしーは、自分の明るさが誰かを救えたことに安堵し、心からの笑いを響かせた。うみにゃは、自分が居場所を失う恐怖から解放され、久しぶりにコーラに手を伸ばした。
ニート部という場所は、明るさも、暗さも、全てを許容し、互いの「困り事」を「個性」に変え合う、最強の「みかた」だった。
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