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「じゃあ、エリザベスちゃんによろしくね!」
翌朝。魔法の勉強の為、宿を出るときにかけられた聖奈さんからのお言葉だ。
「よろしくって、会ったこともないよな?まぁ、行ってくるよ」
俺は宿を出てエリザベスの家へと向かった。
昨日の夜は散々だったな……聖奈さんにエリザベスのことを伝えたら、罪なき罪を着せられたし……
『私はおじさん達ばかりと話してるのに、セイくんばっかり美少女と遊べてズルイ!!』
いや、遊びちゃうやん?
ミランに白い目で見られたじゃん?元々ない威厳が限界突破して逆向きに突き進んでいくじゃん……
コンコンッ
「はい!今開けます!」
ドタドタ。バタンッ
こけたな……
ガチャ
「いらっしゃいませ…」
「おはよう。おでこは無事か?」
なんで、何故それを?!みたいな目で見るんだよ。
「だ、大丈夫です!それよりもどうぞ」
「ああ。お邪魔します」
昨日ぶりのエリザベスの部屋は、約束通り綺麗に片付けられていた。
本棚あるじゃん…なんで出しっぱにするかな……
「見てください!こんなに綺麗になりました!」
「ああ。でも威張ることじゃないな」
褒めて欲しかったのだろうか、項垂れているエリザベスを尻目に、俺は昨日と同じ席に着く。
「今お茶を入れますね!」
キッチンに向かおうとするエリザベスを、手を突き出して制止させた。
「今日は飲み物を持ってきた。もちろんエリーの分もだ」
「え、エリー・・・」
「ん?エリザベスだと長いだろ?ニックネームだよ。それともエリスの方がいいか?」
顔を赤くして下を向いた暫定エリーは、
「エリーで、お願いします…」
消え入りそうな声でそう返した。
「エリーは甘い物は平気か?」
「甘い物ですか?平気どころか好きですけど…」
よし。それじゃあやる気を出させるかな。
俺は魔法の鞄から飲み物とカップケーキを取り出した。
「えっ?!魔法の鞄ですか!?こんな高級品をどこで…」
「ある国の王族から貰ったんだ。それよりも食べてみろよ」
俺はカップケーキの蓋をとってやり、スプーンを手渡した。
「お、おうぞく…?不思議な見た目ですね。頂きます」
エリーは一口食べると、目を見開き固まった。
初めての餌付けはやはり楽しいな。
「どうだ?甘いだろう?」
「めっっっっちゃくちゃ美味しいですっ!!!何ですっ!?私死ぬですっ!?」
この子はテンパると口調が変になるな…これが素なのかもな。
「いや、生きてるだろ。落ち着け。これはジュースだから飲め」
そう言って、コップにコーラを入れた。
「ぶはっ!ごほっ!?」
ぷぷっ。ミランと同じ反応だ。ギリギリ鼻からは出さなかったな。
「な、なんです!?毒!?」
「毒じゃないぞ。刺激が強いが美味しいだろ?」
そう言って俺もコーラを飲んでみせる。
「確かに甘くて美味しい飲み物です。むせますが」
「慣れたら病みつきになるぞ?さあ、残りも食べてしまえ」
俺はそう言ったが、ミランの時とは違い、エリーは中々手を付けようとしない。
「どうした?口に合わなかったら無理して食わなくていいぞ?」
「違いますっ!これ…食べたらなくなっちゃうんですよね…」
当たり前だろ。
「また明日も持ってきてやるから、さっさと食え。そして仕事をするんだ」
俺はブラック企業の社長だからな!
「ホントですっ!?うまー!!」モグモグ
聖奈さんやミランは最初からポンコツではなかったが、エリーは最初からポンコツ感が否めん……
デザートを食べた後、授業(?)が始まった。
「そうか。じゃあ魔法も魔術も大きな違いはないんだな?」
「そうです。結局両方とも魔力を使います。そして、出た結果は魔法ということになります。魔術は魔導具を使えば全て魔術ということになります。魔導はそれら魔法、魔術共に両方を含んだ総称です」
じゃあ魔法も魔術もどっちでも同じだな。使ったことのないものからしたらどちらでも魔法だよな。
ただ、魔術は魔力が無くても魔導具を使えば誰でも使えるのに対して、魔法は魔力があり魔法に関しての知識もなきゃ使えないくらいか。
「セイさんはどんな魔法を使うんですか?」
「俺か?俺がよく使うのは長距離転移魔法と中級、上級魔法だな」
エリーに対して秘密にしなきゃいけないことはないからな。
これだけ鈍臭かったら悪いことも出来まい。仮に秘密にしても守れなさそうだし……
「転移…です?そのような魔法があるんですか?後、上級とかって何ですか?」
えっ!?転移はともかく上級魔法を知らないのか?
「逆に聞きたいけど、エリーはどんな魔法が使えるんだ?」
「私は風魔法が得意ですね。最近はないですが、暑いときには貴族の方などから家の中を涼しくする依頼とかを受けていましたよ!」
なんじゃそりゃ……
「戦いに役立ちそうな魔法は?」
戦えなきゃ意味がないとは言わないが……
「戦いですか…エアープレッシャーと言う、衝撃波で相手を吹き飛ばしたり体勢を崩したりする魔法ですかね…」
「どれくらいの出力が出せるんだ?例えば木を薙ぎ倒したり、岩を吹き飛ばしたりは?」
「そ、そんなの出来ませんよ!大魔導士様くらいじゃないですか?そんな事が出来るのは」
新しい情報が出たな。大魔導士。カッコいいぜ……
「すまんがエリーから教わる事がなさそうなんだが…」
「ええ!?それは困ります!昨日頂いたお金も使っちゃいましたし…それに師匠達の仕事を断ったら怒ってましたから…すぐには仕事が…」
「ああ。それは気にするな。金なら払う。仕事も与えよう。
それならどうだ?」
なんか目的が変わったけどいいか……
「え…それは有難いですが…いいんですか?何も返せるものが有りませんよ?」
「大丈夫だ。さっき話していた聖奈って人がエリーに会いたがっていたし、むしろ聖奈の相手をしてくれたらいくらでも金を払おう」
なんだか凄い物言いになったけど…実際聖奈さんは面倒くさい時はとことん面倒だから……
「え?私は大丈夫ですか?切り刻まれたり変なことされませんか?」
その心配はわかるよ。だって側から聞いたら変な話だもんな。
「大丈夫だ。軽いスキンシップはあると思うが、それ以上変なことはされない…と思う」
「なんか最後が怪しかったですが…背に腹は代えられませんね…それでどうすればいいんですか?」
「明日の朝、俺達が泊まっている宿に来てくれ。
出来たら今みたいな町人ファッションじゃなくて、最初に会った時みたいな魔法使いの格好でな。
後、聞きたいんだけど、魔力はどうやって鍛えているんだ?」
「わかりました。よくわからない指示でも、うんと頷くしかないのが悲しいですが……
魔力は色々な方法がありますよ」
そう言うと指を立てて説明を始めた。
「魔力は魔法を限界まで使えば上がるとも言われています。この説が一番有力です。後は食べ物や身体の中の魔力を動かすトレーニングですね」
ふぅ。どれも試したやつばかりだな。魔力は結局枯渇させられなかったけど。
「そうか…あっ!そうだ!これから王都を出ないか?
外でしてもらいたいことがあるんだ」
「水都をですか?構いませんよ」
なるほど水都か…確かにここは水の都と呼ぶにふさわしい都だ。これからはそう呼ぼう。
エリーを伴い水都を出た俺達は、人気のない場所を目指した。
もちろんそこで紳士たらんことをするつもりはない。
「エリー。この魔導書が読めるか?」
俺は自身の持つ魔導書をエリーに手渡した。
「これは…読めません…」
「読めないか…じゃあこの文字が何かは?」
俺と聖奈さんは普通に読めるから気にしたことはなかったけど、そもそもこの魔導書はいつの時代の物なんだ?
「少なくとも古代文字ではないです。見たことが…まさか…」
「何だ?何かわかったなら教えてくれ」
「自信はありませんが…神代文字かもしれません」
神代文字?
「それは珍しいのか?」
「珍しいなんてもんじゃないですよ。もしこれが神代文字の魔導書であれば、小さな国を買えるほどの値段が付きます。それくらいはレアです」
「そうか。まぁ、売る気はないからどうでもいいけど。
俺はそれが読めるから、転移や上級と言われる魔法が使えるんだ。
ちなみに上級だとこの辺り一帯に被害が出る」
俺の言葉にエリーは目を丸くした。
「被害の少ない魔法を使って見せよう」
そう告げると、使い慣れたアイスランスを諳んじた。
ビュン。パシュッ
「す、凄い…」
「驚いているところ悪いけど、エリーも試してみてくれ」
俺は詠唱をエリーに教えた。
『アイスランス』
ビュン。バシュッ
「出来ました!!凄いです!私が遂に攻撃魔法を!!」
「おめでとう。喜んでいるところ悪いけど、次だ」
感極まっているエリーへ、上級魔法の詠唱を伝えた。
俺はまだ暗記出来ないけど、エリーはどうかな?そもそも撃てるのか?