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『アイスブロック』

上級の魔法を暗記したエリーは、詠唱を成功させたが……

「おい!どこを目標に発動した!?」

「えっ?それはそこですけど…」

エリーが指で示した場所は10m程しか離れていない。

「まずい!こっちにこい!」

俺はエリーの手を取ると、その場を全力で離れた。

ヒューー

空から異様な音が聞こえ、それはすぐに衝突音へと変わる。

ドゴォーーンッ

音と共に衝撃波がやって来た。

「うぉぉおお!!?!!」

「きゃああああ!?!?」

エリーに覆い被さり、衝撃が過ぎるのを待った。

「大丈夫か?」

「えっと…は、はい…」

いや、庇ったんだよ?覆い被さったことに他意はないよ?

だからもじもじしながら顔を赤くするのはやめなさい。


「これでわかっただろ?上級の威力は」

「はい…名前に負けていませんね…」

「それよりもどうだ?魔力の減り具合は?」

エリーの上から退けながら伝えた。

俺以外に補助の道具を使わないで、初めて上級魔法の発動に成功したんだ。色々気になることはある。

「1割程度消費したと思いますよ。凄く魔力効率の良い魔法ですね」

「そうなのか?」

「はい。私の知っている攻撃魔法は、恐ろしく燃費が悪いですね。結果としてアイスブロックくらいの威力を出そうとすれば、10倍以上の魔力を消費すると思いますよ。

私は使えませんが…」

やはり従来の魔法とは違うんだな。

「他の魔法も詠唱があるのか?」

「もちろんです。生活魔法くらいなら詠唱が無くても行使できる人は大勢いますが、強い魔法は詠唱が必須ですね」

「どうやって詠唱をなくしているんだ?」

「魔力の動きですね。詠唱を行うと身体の中の魔力が変化して外に干渉します。それが大気中の魔力と混ざり合い、魔法になると言われています。

だから詠唱した時と身体の中の魔力を同じ動きにすることが出来たら、詠唱が無くとも魔法を行使できます」

なるほど…俺には出来そうにないな……

魔力が多過ぎて?かわからんが、俺は減ったのもあんまりわからないくらい鈍感だからな……

「わかった。タメになったよ。後は転移魔法も使って欲しいがどうだ?」

「やってみます!だけど良いんですか?私、ただで凄い魔法を教えてもらってますけど…」

「他言無用で頼む。後、悪用されたら嫌だから誰にも教えないこと」

エリーはバカ真面目そうだから、釘を刺しておけば言わないだろう。本人の意識外でポロッとはありそうだが……

「はい!では教えてください!」





流石に転移魔法の暗記は無理だ。その為、紙に翻訳を書いて渡した。

「それを使ってあそこに転移して見せてくれ」

俺が指し示したのは、ここから200mくらい離れたところにある木だ。

「わかりました!」

意気込んで詠唱を始めたエリーを眺めること2分少々。

『テレポート』

シュンッ

「おお!成功だ!側から見たらこうやって見えるんだな」

一瞬で移動したエリーに手を振り、戻ってくるように合図した。




戻ってきたエリーに感想を聞いた。

「凄いです!こんなに一瞬で移動出来るなんて…」

「言葉が足らなかったな。使ってみて魔力の減り具合はどうだ?」

そんな初めてテーマパークに行った人みたいな感想はいらないかな……

「す、すみません。魔力は5分程減りましたね」

「そうか。後は距離でどれくらい減るか試したい。付き合ってくれるな?」

「もちろんです!こうして魔法の研究をするのは、やりたかったことでしたので!」

そうか。それなら頼みたいことはまだあるな。

「わかった。色々頼むと思う」





俺達は夕方まで色々と実験をした後、宿に帰ってきた。

明日、顔見せにしようかと思っていたが、デザートが食べられると聞いて、ついてきたのだ。

「ただいま。この子がエリザベス・ドーラだ。背の高い方が聖奈で、エリザベスより年下の子がミランだ」

帰って早々、二人にエリーを紹介した。まさか俺より帰宅が早かったとはな。

「はじめまして、エリザベスちゃん!私がセーナだよ!聞いていた通りめちゃくちゃ可愛いねっ!」

「はじめまして。ミランと言います。よろしくお願いします」

聖奈さんの食い付きに引きながらも、エリーはなんとか口を動かし始めた。

「は、はじめまして。エリザベスです。セイさんにはお世話になっています。よろしくです!」

「キャー!!可愛い!!ねっ!ねっ!昨日は魔女っ子の格好だって聞いたけど、明日は着てきてくれるんだよね!?」

エリー。後悔しても遅いぞ?デザートに釣られるから悪いんだ。

見ろ。先輩のミランは無反応だろ?

えっ?ミランがなんの先輩だって?

そんなの聖奈さんの犠牲者の先輩に決まってるだろ?

アホな考えは程々にして、そろそろ助けてやるか。

「聖奈。エリーがドン引きだぞ?本格的に嫌われる前にやめるんだ」

「えっ!?うそっ!?エリザベスちゃん、ごめんね!っていうか、エリーってなにかな???」

やばい藪蛇だった……

「エリザベスって名前が長いから、あだ名をつけたんだよ。他意はない」

「ホントかな…まぁ今は追及はやめておくよ。じゃあ、私もエリーちゃんって呼ぶね!今日は時間ある?一緒に夕飯食べよう?」

聖奈さんのゴリ押しに若干引き気味だが、デザートの誘惑に負けて夕飯を共にした。



その後、部屋へと戻りエリーの状況と俺達の状況をお互いに説明した。

「じゃあ、エリーちゃんも私達と一緒に冒険しない?」

「えっ?話を聞いてました!?私は魔導士でもまだ見習いで、お役に立てることは何もないですよ?」

いつか言うと思っていたけど、早過ぎないか?

「役に立つとかは二の次三の次だよ!仲間はお互いを想い合えるかどうかが大切だからね!」

その想いは一方通行ではないでしょうか…?

「ミランちゃんはどう?良いと思わない?」

「そうですね。年齢はお二人よりも近いですし、女性というのはいいですね。後、私と同じですし」

ミランの同じと言う言葉に、エリーは「?」を頭に浮かべてキョトンとしている。

まだ俺達が異世界人だということは伝えていないからな。

「セイさん。ミランさんも見習い魔導士さんなんですか?」

「違うぞ。仲間になればその辺も教えるが、今は気にしなくて良い」

小声で聞いてきたが、同じ室内なので、意味がない。

二人は聞こえないふりをしてくれている。

「すみません…先程も言ったように魔導士協会に多額の借金があるので…」

「それは気にしなくていいよ!セイくんは大金持ちだから端金だよ!」

「おい。それだとエリーが尚更拒むぞ?」

なんで「えっ?」みたいな顔をしているんだよ……

パ◯活女子じゃないんだから、気軽にお金を受け取るわけないだろ……

「えっ!?セイさんが肩代わりしてくれるんですか!?」

おい!お前騙される奴だぞ!俺に騙す気はないけど……

「ほらっ!大丈夫だよ!エリーちゃん。お金は気にしなくて良いからね。セイくんはお金だけは持ってるから!」

「聖奈…やめてくれ…俺の尊厳が…」

流れ弾が核弾頭くらいの威力を持っていた……

というか、完璧にパ◯活やんけ……

歳的にはギリセーフ?

「でも…やっぱり遠慮します…何かお役に立てるなら胸を張って受け取れますが、流石の私でもこれがおかしいのはわかります…です…」

「エリーちゃん。えらいね。でも、それは一生成功出来ない人の考え方だよ。もちろん中には一握りの天才が成功をおさめてるけど、失礼だけど私達みたいな普通の人はチャンスにはしがみつかないとダメなんだよ。

私はしがみついたよ?もちろんセイくんに」

はい。身柄を抑えられています。

でも、エリーの考え方も普通だからなぁ。昨日今日会ったやつに人生賭けられないよな。いくら大金が積まれたとしても。

そもそも受け取る理由が薄いよな。

辛くても生活できているし。

なんて俺が真面目に考えていたのに……

「私も同じですよ?いえ。魔法が使えない分、私の方がお荷物ですね。

しかも私の方がお二人からしたら子供ですし。さらに私は家族ごとお世話になっています。

お二人には伝えていませんが、いつかこの御恩の1割でも返せたらと、常々考えています」

ええんやで。ミランは何も気にせずにやりたいことをやったら。

おじさんそんなこと言われたら、涙が鼻から出そう……

「ミランちゃん!」

遂に聖奈さんがミランに抱きついてしまった。

まぁ、聖奈さんからしたら可愛い妹みたいなもんだもんな。

俺にとって可愛い妹は妹キャラの……

おっと、誰か来たようだな。


「二人ともそれくらいにな。ミランは恩を感じているようだが、俺達もミランの家族には世話になっている。持ちつ持たれつだ。

もちろんミラン個人はかけがえの無い仲間でだ。気にしているなら伝えるが、十二分に助けになっている。ありがとう。これからもよろしくな」

こんなタイミングでしか感謝を伝えられない情けない大人でごめんな。

「それからエリー」

「は、はい!」

「二人は知らないが、俺はエリーの意見を尊重する。だが、一つ言わせてくれ。

エリーの本心では俺達と共に在りたいと思っているのに、迷惑とか、貸しだとか、引け目を感じて迷っているのなら、それは間違いだ」

「えっ?でも…大金が…」

「それはエリーから見たらだ。俺からしたらホントに端金はしたがねだ。エリーは近所の人にお裾分けされたり、逆にしたことはないか?」

「ありますが…」

「それに一々恩着せがましくするか?エリーならしないだろ?

もう関わってしまったんだから、お裾分けさせてくれないか?

お裾分けのお返しが、この国の情報や旅の助けだと助かるんだがな」





side聖奈

「ミランちゃん。セイくんってたまに良いこと言うよね?」

私は小声でミランちゃんに聞いたのだけど、予想外の言葉が返ってきた。

「セイさんはいつも良いことばかり言ってくれますよ?」

えっ!?ミランちゃん…まさか聖くんの毒牙に……

「それはセーナさんが一番ご存知では?」

「そうなんだよね…誰にでも優しいから困っちゃうね」

聖くんは優しい。初めて会った時から。

思い出せなくても仕方ないよね?聖くんにとって、人に優しくするのは当たり前のことなんだから……


私は自分にそう言い聞かせ、エリーちゃんの言葉を待った。

〜ぼっちの月の神様の使徒〜

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