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森下由香(もりしたゆか)がお福と出会ったのは雷丸を迎えた翌年、よく通る家の庭のいたときだ。一人暮らしの高齢女性、長尾美紀子の庭でご飯をもらっていた野良親子が暮らしていました。黒白で、若い小柄な母猫が、生後二ヶ月ぐらいのサビ猫を尾を遊ばしており、側には少し大きめの白黒のお兄さん猫がいました。三匹はいつも一緒でした。
ある日、いつものように美紀子の庭を通ると、美紀子が由香に「子猫が後ろ脚をブラブラッとさせて前足だけで這っている」と言った。由香は保護しようとしたが、前足だけで這っているのにもかかわらず、ものすごい早さで逃げていってしまう。「なんて早い子なの!」驚きながら由香は必死に追いかけ、シャーシャー威嚇するのを後ろからタオルでさっと捕まえた。
そして動物病院へ急行した。レントゲンした獣医師は驚きの声をあげた。「エアガンの弾が腰に入っている!」「え?!」「ここです。この白っぽくなっている丸いのです。」獣医師はマウスで腰の辺りにある白いのを囲った。「ほんとだ…」「森下さん。この子を飼いますか?」「はい!」「では緊急手術をします」そう言って獣医師はサビ猫を抱いてどこかへ行った。手術で摘出された弾は、オリンピックで使う競技用のエアガンの弾だった。至近距離から狙って撃つという、冷酷で残酷なれっきとした犯罪である。
由香は獣医師と共に警察に動物虐待として通報したがいまだ犯人はわからずじまいだった。由香は母猫と兄猫に避妊去勢手術をした。子猫を保護したその夜、由香は双子の息子、森下大和(もりしたやまと)と森下和人(もりしたかずと)と相談して迎えることにした。退院後の子猫を迎えることは事後承諾の形となったが、息子たちは賛成してくれた。「お福」と名付けられた子猫は、下半身が麻痺しているため、後ろ脚が動かせない。だがお福は前足で歩ける。
お福を保護して二ヶ月たったクリスマスイブ。寒い寒い極寒だった。お福の兄と母に餌をあげている美紀子に近隣が、「もう野良猫に餌をやるな。保健所へ連れて行くから」言ったという。「明日、兄猫と母猫を迎えに行くから捕まえておいて」と由香は頼んだ。またまた家族会議。すると大和が言った。「お母さん。僕ら、もうわかってるよ?ほんとはもう、家族に迎える気なんでしょ?家族にするって」すると弟の和人も言った。「そうだよ。でも、僕らいいよ。お福にとってもお母さんとお兄さんがいるのはいいんじゃないかな?」ずばりと息子たちは言った。由香は「大和、和人。お母さん、迎えてもいいかな?」と言った。息子たちはにっこりと笑って返した。そしてクリスマスに来た兄猫は、人和(れんほう)。双子の息子の「和」という名を取ってつけたのだ。母猫は由伊(ゆい)由香の「由」を取ったのだ。人和はかわいくズレた白黒ハチワレで、黄色の目が魅力的だ。母の由伊は黒白で、口の両端が白く、綺麗な黄色の目を持つ。
しかし、お福は母と兄を覚えていなかった。フーフー!シャーシャー!っと威嚇をした。「お福…お母さんだよ。お母さん。君をずっとずっと大切に思ってきたお母さんとお兄さんだよ」由香が言ってもシャーシャーっといい続けた。「お福。覚えてないの?」「どうして?お兄さんだよ。お母さんだよ。」双子たちもいい続けた。だが、由伊と人和は覚えていた。由伊は一緒に暮らし始めると離れていてもずっと我が子を見続けていた。兄も優しく毛づくろいしてやった。由香がお福の嫌がるおむつの交換をすると、いつも本気で猫パンチをかましてくる。まるで、「お福が嫌がることをしないで!お福が嫌がってるってことわかんないの!」と言っているようでした。
それから数年。由伊がしきりに足を舐め始めた。気になって動物病院へ連れて行った。関節でも痛いのかな?そう思ったが‥
なんと、お福と同じエアガンの弾が入っていたのだ。由伊は数年以上も痛みを我慢してきたのだろう。だが、関節に異常などはなかった。
由伊は外ぐらしのときから病気があった。ある日、それで命が果てる時が来た。
お福、人和、ミニチュアダックスフンドとパピヨンのミックスのミルキーと由香に見守られ、この世を去り、虹の橋を渡った。
由香はペットロスになった。でも、友人の結花(ゆいか)が、「好きだったから悲しい、寂しいんじゃないだね。今も大好きなんだね。それは由伊にとってすっごく嬉しいね」と言ってくれたので立ち直ることができた。
由香は、最後、由伊にこういった。
「ありがとう。由伊。お福と人和を世界で一番幸せにするからね。大好きだよ。」