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香織が教室に着くといつもよりもガヤガヤしていた。
席に着く前にクラスのリーダー的な存在の優実に話しかけられた。
「あっ、香織!梨子が死んだって話聞いた!?今めっちゃ話題になってるよ!
轢かれたとこを結構な人が見てて6年以外でも結構話題になっててさぁ!」
香織は優実のこの態度に嫌気がさした。
いくら香織が梨子のことを嫌っていて、死んで清々したと言ってもこんな不謹慎なことに目を光らして話はしない。
「それでさ、梨子と1番仲良かった香織ならなんかもっと詳しい事知ってるかなーって!香織が来るまでみんなと話してたんだよね!」
香織はあと数歩先の自分の机にランドセルを置いた。
「ごめんだけど優実ちゃん。人が死んでそんな態度の人に何かを話したりしないよ。」
「えぇ〜…?」
優実だけではなく遠くの方の女子も同じような声を出していた。
優実はせっせと女子が集まっているところに戻っていった。
宿題を提出し、名札もつけた所で担任の高橋先生が教室に入って来た。
「はい。すみませんが全員座ってください。」
高橋先生は手を叩きながら言った。
「えー、皆さんはもう知っているかもしれませんが、昨日3組の坂口梨子さんがトラックに轢かれ息を引き取りました。」
その後高橋先生は詳細は話さなかったが、黙祷の時間をとった。
数分だったが、昨日のことで眠れなかった香織は少し目を瞑っただけで眠気が襲って来た。
「では、目を開けてください。」
という高橋先生の声で慌てて目を開けた。
クラスの人は黙祷のなんかよりも事件の詳細が知りたかったのか、退屈そうにしていた。
その後は特に何もなかったかったかのように時間は進み、気づけば放課後だった。
帰ろうと思った矢先に高橋先生に呼ばれた。
「すみません。米田さん。少しお話を…。」
呼び出しに抗えない生徒という立場に苛立ちながらも香織は廊下を出た。
「昨日坂口さんに会いにいったんだってね。2人が仲が良いのは先生も知ってるよ。それでね、米田さん。明日坂口さんのお葬式があるんだって。米田さんも参加してほしいって坂口さんの両親が言っててね。参加するかは先生じゃなくてお母さんに言ってね。」
「分かりました。」
「引き留めてごめんね。じゃあ気をつけて帰ってね。さようなら。」
高橋先生の背中は小さくなっていった。
香織は葬式会場に来ていた。
葬式に行かないと薄情な人間と言われるかもしれないと思ってだった。
「香織ちゃん、来てくれてありがとう。」
梨子の母は目の下にクマをつけていた。
葬式中は香織の見た事ない顔の人も沢山いた。
全員が全員泣いていた訳では無かったが、涙を啜る音はずっと響いていた。
香織も少しだが涙が頬を通った。
それが少し悔しかった。
家に帰って身をベッドに委ねた。
明日、明後日は幸い休みだが、月曜日の朝には事情聴取のようにクラス、学年の人から話を聞かれることを予想した香織は一体どうすれば良いのか困惑した。
休みも明け、学校に着くと香織の予想は当たっていてクラスの人が一斉に押しかけて来た。
「梨子のお葬式行ったって本当?どんな感じだった!?」
クラス代表みたいな顔をして優実が話しかけて来た。
「別に普通の葬式だったよ。」
今答えないと必然的に自分がボッチになると悟った香織は感想を答えた。
「そうなんだー…」「本当に言ったんだぁ!」
クラスの人はそれぞれ声を出し、それ以上話しかけてくることはなかった。