先に仕掛けて来たのは直哉だった、紗理奈の顔を横に向かせ優しくキスをする、紗理奈も喜んで彼の舌を迎えて口を開けた
キスが段々濃厚なものに変わって来る、我慢できずに直哉が紗理奈をソファーに押し倒した
映画のセリフだけがリビングに、シャンパンの泡のように宙をさまよう
アーノルド・シュワルツェネッガー が未来から来たターミネーターに、ボコボコにされているのに、二人はまったく気にしていない
プロジェクターの映像が映された白い壁に、直哉のシルエットが重なってしまっている
ハァ・・・「ねぇ・・・どうして私達はいつも、最後まで映画が観れないのかしら?」
フー・・・
「・・・途中でこういうことをするからじゃないか?」
そう言った直哉がリモコンを取り、音量だけをゼロにした
画面の中で光が忙しく動いている
またアーノルド・シュワルツェネッガー が機関銃をぶっ放す
直哉が紗理奈のシャツを脱がし、ブラジャーの肩ひもを滑り落とし、背中のホックに手をかけた
ホックが外れ一気に下着の締め付けがなくなった時、紗理奈の背筋にゾクゾクしたものが走った
そして直哉が床にブラジャーを放り投げ、紗理奈の胸に覆いかぶさって来た、彼の長い髪がパラパラと胸を覆う、ゾクゾクして何かの生贄になった気分だ
「あなたの言うとおりね・・・」
「何が?」
「ひと夏だけの恋人契約よ」
「お互いに幸せな時だけを一緒に過ごせるの、こんなに良い関係はないわね、嫌な記憶も残らない、何もわざわざ結婚して、泥沼の離婚劇を繰り広げる必要はないんだもの」
「君がこんなにあっさり認証してくれるとは、思わなかったけどな、間違ってるかもしれないけどたしかに楽だ」
「間違ってる?あなたはどういう所が間違ってると思うの?」
「う~ん・・・わからない・・・考えておくよ」
直哉はほほえみ、また紗理奈の上に覆いかぶさった
映画を中断して寝室に移動した二人は、抱き合いながらシーツを絡ませる
直哉は紗理奈の喘ぎ声を聞きながら、熱く潤った所を口で愛撫しつづけた
そのまま紗理奈を絶頂へ導き、麻痺が収まるまで舌でなだめた
そして体を起こし「今日はどのフレーバーにする?」と紗理奈にコンドームを選ばせ、甘い誘惑の淵へ腰を静めた
情熱のままに彼女に打ち込み、やがて爆発的な瞬間に襲われ、頭のてっぺんからつま先まで炸裂する快感に浸った
過呼吸寸前で直哉は紗理奈の横に倒れ込んだ、汗だくの紗理奈も身を寄せてくる
呼吸が段々なだらかになり、手足が信じられないほど重い、これほどのクライマックスを経験したのは初めてだ
直哉は目を閉じ、沸々と心に湧いてくる何かポワポワしたものが、体に染み込むのを感じていた
温かくてそれは心地よく、紗理奈の傍にいると決まって溢れてくるものだ
どこか二マッと笑い出したくなるような、気を引き締めていないとつい、ヘラヘラしたくなるような気持ちだ
まるで旨いものを食った後のような・・・良い音楽を聴いた後のような・・・
体はひどくだるく、起き上がらないといけないのに、今はただ温かくてかわいい紗理奈を、放したくなかった
そこでどうして起き上がらないと、いけないのだろうと思った
今はただ・・・眠ってしまいたかった
自分のベッドで・・・・・
彼女の隣で・・・・・
..:。:.::.*゜:.
直哉はふと目が覚めた、一瞬自分が寝ている所がわからなくなった
確かなのは、自分の家じゃない、自分のベッドじゃない
知らない所で目を覚ました自分に、パニックになりそうだった
横を向くと紗理奈が横たわっていた、愛を交わした後の全裸で、髪はくしゃくしゃになってベッドに広がっている、とても綺麗だった
自分がどこにいるのか気づくと、上掛けが燃え出したとばかりの勢いで、ベッドから飛び出した
そして時計を見た
なんてことだ、4時間も眠っていたなんて
「・・・・ナオ? 」
まだ夢の中の紗理奈の言葉も無視して、急いで風呂場に行きシャワーを浴びだした
再び寝室に入ると、眠り込んでいる彼女に肩まで上掛けをかけてあげた
「・・・・ナオ?帰るの・・・?」
「うん・・・おやすみ」
「ここで寝て行ってもいいのよ・・・あなたすごく眠そうだったわ、車の運転危ないわよ 」
紗理奈が寝ぼけ眼で、誘うように上掛けの端を折り返した
「・・・一人で寝るのが好きなんだ」
「ふ~ん・・・そう? 」
紗理奈が大きくあくびをした
「だったらいいわ・・・
玄関の鍵を閉めていってね・・・ 」
紗理奈はそう言って、また深い眠りに落ちて入った、直哉のかわりにレインボーキティを抱きしめて
紗理奈の家の鍵をかけてから、コンバーチブルに乗って成宮牧場へと車を走らせた
国道を走ると海風が濡れた髪に当たり、家に着くころには体は芯まで冷えていた
これまで女性と体を重ねた後、そのまま朝まで一緒に眠ったことは一度もない
今まで自分の家に呼んだこともないし、なるべくホテルか相手の家に行く様にしていた、自分が立ち去る方が簡単だからだ
今まで二度ばかり、まだ帰りたくないとゴネる女を無理やり、車に乗せて家まで送り届けるのに、大変な思いをしたことがあった
そこまでするのは女性と朝まで一緒に過ごすと、考えるとなぜかパニックに陥りそうな不安になるからだ
ガランとした自分の部屋に入る、PCデスクには昨日食ったカップラーメンの、空き箱の中の汁が腐って異臭を放っている
脱ぎ散らかした服もあちこちに放ってある
以前にここに住み込みで暮らしていた、家政婦のお福さんが再婚してから、彼女は夫の家とここを往復しているので、以前ほど成宮牧場に尽くしてくれているわけではない
兄は少し離れた場所で、子供四人の為に自分の家を増築に増築を重ねて、今や一大邸宅を作り上げてた、そして北斗は愛娘二人のためにディズニーにでてくる、お姫様の名前をせっせと覚える課題に取り組んでいる
海外で暮らしている、隣の弟の部屋はそのままだが、年に一回帰って来るかどうかだ
この広い母屋には今は直哉一人だけ
ボクサーショーツだけになって、自分のベッドに入る
シーツが冷たい・・・・
紗理奈の寝室を思い出す、彼女の人となりを感じさせる家
白で統一された家具、女王様が化粧するようなドレッサー、椅子にかかっているシルクのローブ、趣味がよくとてもスタイリッシュだ
彼女のベッドが恋しい、シーツはフカフカのタオル生地で、なんとも気持ちがよかった
こまめに洗濯されていて、いつも彼女の寝室は良い匂いに包まれていた、直哉はあの匂いを嗅ぐととてもリラックスできて眠くなった
帰り際、レインボーキティを抱きしめて、直哉に背中を向けて眠る紗理奈を見ていたら、自分がひどく不器用でまぬけな振舞いを、しているように思えた
立ち去る時に交わした言葉を思い出す
「君のことが煩わしいとか、そういうわけじゃないんだ・・・・」
「わかっているわよ、おやすみなさい、今日もありがとう楽しかった 」
直哉は戸惑った、女とSEXをして礼をいわれるのは紗理奈が初めてだ
自分の中で何かが、変わりつつある事には気づいていた
でも、それが何かを知るのが恐ろしかった
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