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テラーノベルの小説コンテスト 第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで
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ジグレと別れた私達はすぐにリアフローデンへと出立した。


やっとユーヤに会える!


それが嬉しくて私の足はとても軽かった。

ユーヤに会ったら色んな事を言ってやる。


とても苦労したし、すっごく探したし、そして凄く心配したんだって……


早くユーヤと会って、いっぱいいっぱい話したい。

だから私はそんなユーヤへの想いばかりで失念していたのだ。


何でユーヤが私達に黙って失踪したのか?

何でユーヤは連絡を寄越さなかったのか?


それらをリアフローデンに到着して思い知らされた……


町中で黒髪の後ろ姿を見つけた時は嬉しさで胸が張り裂けそうだった。だけど、その想いは彼と並んで歩くシスターの存在に冷や水を浴びせられた。


とても綺麗な女性だった。


輝く黄金の髪、温かい新緑の瞳、そして慈しみ深い笑顔……


そしてユーヤは……


何で愛おしそうな目で彼女を見るの?

何でそんな優しい笑顔を向けてるの?

何で貴方の話す声音は楽しそうなの?


そんなユーヤを私は知らない……


でも私の想いは留める事が叶わない。


「ユーヤ!」


私は思わず2人の邪魔をする様に声を張り上げてしまった。


「フレチェリカ……ゴーガンもか……」


分かってるの。

これは嫉妬だ。


ああ、私は何て嫌な女。だからユーヤも表情が厳しくなったのね。


「やっと見つけたぞ!」

「いつまで経っても戻ってこないから探したのよ!」


だけど私はもう止まれない。


「俺はもう戦わない」

「どうして!?」

「魔王を倒して国に帰るって言っていたじゃないか」


ユーヤは静かに首を振った。


「帰れないんだ。全て奴らの嘘だ……帰る術など最初から無かったんだ」

「そんな!?」

「それじゃあ……」

「もう俺に構うな」


ユーヤは背を向けて去って行く。


待って!

行かないで!


「あっ、ユーヤ!」

「よせフレチェリカ」

「だけど……」


ユーヤが私達を拒絶した。

その事実に私の頭の中はぐちゃぐちゃになった。


「もし、あなた方はユーヤのお知り合いなのですか?」


その時、ユーヤと並んで歩いていた美しい尼僧に声を掛けられた。


ユーヤはこの女性を……

この女性はユーヤを……


私の胸の内に渦巻く黒い想いに私はもう気が狂いそうだった。


「あんまり怒るなよ。ユーヤがこんな美人と一緒に居たからって」

「別に私は!」


ゴーガン……

私の様子に気づいてわざと茶々を入れたのね。


ゴーガンの気遣いがなければ私はどうなっていただろう……


彼女はシスター・ミレと名乗り、私達は事情を話したのだけど、ここで口論になってしまった。そして、それは私にとってとても衝撃的だった。


「それはユーヤが勇者だからですか?」


彼女の鋭い指摘に私は頭を金槌で強く叩かれた気分だった。


そんなつもりは無かった。

無い筈だった。


「ユーヤは勇者として強制的に異世界から召喚されたのです。この世界の問題には無関係のはずでは?」


その通りよ。


でもユーヤは私達と一緒に戦ってくれる――


「それなのに戦う意思のない彼を魔王討伐に行かせようとするのは、あばた達が彼に勇者という『役』を押し付けているからではありませんか?」


――そう無邪気に信じていたのは私の身勝手?


シスター・ミレと別れ、宿へと引き上げた私達は部屋で暗い顔を突き合わせていた。


私はユーヤを勇者として利用していただけなの?

ユーヤに身勝手に戦いを強要していただけなの?


私は……私は……私は……


シスター・ミレの言葉が私の頭の中でぐるぐると駆け巡る。


もうどうしたら良いのか分からない。


ただ、分かっているのは……

ユーヤはもう私達と一緒には戦ってくれない……


「ねぇゴーガン……」

「ああ?」


だから私は……


「やっぱり明日スターデンメイアへ戻りましょう」

「……いいのか?」

「最初に言ったでしょ、魔王は私達だけで倒すんだって」

「それは……ああ……そうだな……」


ゴーガンは力無く頷き、私に拳を突き出した。


「これからも宜しく相棒」

「足引っ張んないでよね」

「そりゃこっちの台詞だ」


拳をコツンと突き合わせて、私達は寂しく笑った。

私達はお互いを良く知る長年連れ添った戦友よ。


ユーヤがいなくたってきっと大丈夫……


とんとんとん!


そんなしんみりした空気を破る様に扉が叩かれ、扉を開ければ――


「ユーヤ!」

「どうしたんだ?」


――そこに立っていたのはもう会う事はないと思っていた人物。


「2人とも昼間は済まなかった……当たり散らす様な真似をした」

「いや、俺達の方も無神経だった」

「ええ、気にしないで……」


わざわざ謝罪しに来てくれたのね。


「明日の朝にここを出て行くわ。シスター・ミレにも言われたけど元々は私達の問題だもの」

「ああ、俺達の力で魔王なんざ倒してみせるさ」

「だからユーヤはここで……」

「俺も行く」


私の言葉を遮り、ユーヤははっきりと宣言した。


「俺も戦う……そして魔王を倒す」


ユーヤの強い意志の宿った瞳に私は知った――


「それは……シスター・ミレの為?」

「ああ、俺はミレの為に剣を振るう」


――私の恋は終わったんだって……

転生ヒロインに国を荒らされました。それでも悪役令嬢(わたし)は生きてます。

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