テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
趣味の部屋……?
「うちに住み込みなら、快適に過ごしてもらいたいと思う。あのミシンのある部屋は、他にあまり使わない物が置いてあるから狭い。何なら、ミシンも古いと思うんだけど、そのあたりも新しくしてもいい。これから、まだまだ作ってみたいもの、あるだろう?」
「ミシンは…古いけど、私も古いものを使っていたのでいいんです。また使っていいなら、どちらもお手入れはしたいと思います」
コンパクトな電動ミシンとロックミシンが放置されていたのを、私が使わせてもらった。
どちらもいいものだと思うけれど、お手入れをするともっと使いやすくなると思う。
「お手入れもすればいいし、マネキンもいるんじゃない?」
「トルソーがあるので大丈夫だと思いますけど…」
「じゃあ、どっちの部屋がいい?」
遥香の使っていた部屋と奥様の使っていた部屋は、元々ゲスト用かと思うバスルームを挟んでいる。
遥香の部屋にはシャワー室があり、お風呂に入るのは隣のバスルーム。
奥様の部屋にはシャワー室はない。
「本当にミシンのお部屋にしていいなら、奥様の使っておられた部屋…がいいです」
「俺の部屋に近い方ね」
「へ……?」
そーいう基準ではなかったけれど……私、無意識にそんな基準で選んだ?
いやいやいやいや……違うよね…
「トマトソースより真っ赤」
「あ……いえ、っと……シャワー室があるお部屋は必要ないと思ったから……」
「ああ、そこも潰してもいいし、シャワー室を残すにしても新しくする予定。彼女たちの使ったままの状態では残さない。あの間にあるバスルームも完全に改装だよ」
知らなかった……
「じゃあ、帰ったら業者と相談な」
「はい?」
「真奈美さんが使う部屋なんだから、床とか壁紙とか選んで。あとミシンの置き方とかを考えて、オーダーの据え付け家具にしないとね。ちょっと待って」
そう言った彼がスマホを持ったけれど、ちょっと待っては私のセリフだよ。
「あ、渡辺さん、お疲れ様です。1時間半から2時間後に設計デザインを呼んでもらえますか?……はい、お願いします」
とスマホに喋った篤久様は
「ケーキを食べに店を変えよう」
と私の椅子を引いた。
さっきの無マーク良品で買った物は、お菓子を置くバスケットまで買ったので持ち歩けないから車に乗せた。
だから今は身軽なのだけれど
「ここ、見たい」
ケーキがありそうなカフェをマップで探したあと、そこへ移動する間に、篤久様は雑貨屋さんへ私の手を引いて入った。
「すごいな…こういうところは初めて入った。真奈美さん、部屋に置きたいものない?出て行くつもりで、何も置いてないだろ?」
それはそうだ。
住み込みの私と広瀬さんの部屋は、何もないと言っていいくらいシンプルな部屋だけれど、それは好きにしていいよ、ということだったようだ。
だから広瀬さんは、自分の好きなようにワンルームを作っているけれど
「初期設定のままですね…でも不便でもないし、掃除も楽だし…」
これまでも必要最低限のものしかない生活だったから、何とも思わなかった。
「……まあいいか…」
少し何かを考えたような篤久様は、おしゃれな木製のティッシュボックスケースを元の場所に置いた。
「ベッドの下にこんなラグ、どう?」
特にはいらないから、ううん、と首を振る。
「この置き時計、デスクにどう?」
ううん……
「ルームフレグランス、たくさんあるよ。どう?」
ううん……
「……俺、買い物に来たから、買い物していい?」
それはいいと思う……
「どうぞ…荷物はお手伝いします」
「ありがとう」
と…にっこり笑った篤久様の爆買い第二弾が始まった。
コメント
8件
篤久様のその思考、サイコ~🙆
わぁ〜次は何を爆買いするのー?✨
篤久さん、真奈美ちゃんに買ってあげたくて、俺色に染めたくて…💖ダダ漏れ🤣