「ここが光ケ丘か…」
「埼玉に片足突っ込んでるギリ東京じゃんかよぉ」
「おい、そこら辺で…」
紺色お下げのメガネっ娘の変装をした海の制止の前に赤いカツラを被った四季に拳骨が背後から飛んでくる。
後ろを振り向くと、茶髪の短髪の襟つきシャツにパーカーの男、否_変装した守がいた。
「マモ先!」
「『レオ』、ね。『ナツ』。後、光ケ丘と埼玉を馬鹿にしないでね」
「へーい」
「『ミオ』も、気を付けなよ」
「うん、『兄さん』」
ピンクぱっつんのカツラを被った桃華_『ハナ』は黒髪のカツラを被った皇后崎_『シュン』と手を繋いで意気揚々と歩いている。
気づいただろうか。守が海に『兄さん』と呼ばれている事に。
今まで守を見てきた者なら思うだろうが、なぜ『兄さん』と呼ばせているのか。そう思うだろう。
それは桃を欺くための一つの手段であるからだ。
元々性別の分かりにくい守は簡単に性別を詐称できる。
桃には『男のような女』という情報が届いているはずなので尚更だ。
さらし要らずの守の体は、不本意ではあるが下さえあれば仮に上がなくても『男である』と容易に嘘が吐ける。
少し歩くと、小さな書店に辿り着いた。
無陀野は流れるようにいくつかの本を手に取ると、レジへ向かう。
店主であろう若い男は本を読みながら言った。
「『お包みは?』」
「『間に合っている』」
「…無陀野さん方ご一行ですね。練馬に入った時点で情報は入っていますよ」
こちらに目をやり、店主_並木戸馨は物腰柔らかに笑った。
「皆さん、本を物色しながら聞いて下さい」
その言葉より前に、守は桃華と絵本や児童用のライトノベルを選んでいる。
「ハナ、これが良いんじゃねえの?好きそう」
「うーん…どっちもすきだけど、こっちにする」
「帰りに買ってくか」
「うん!おにいちゃん!」
四季は守達を見た後に店内を見回して言った。
隣では海が萩原朔太郎の詩集を手に取っている。
「京都みてーにスゲェ感じだと思ってた」
「…あそこは本部だったし、偵察に出ている人が多いからあそこまでの広さは必要無い。そうでしょうか、馨さん」
本から四季へ視線を移して言うと、馨が「その通り」と言葉を続けた。
「それに、重要な情報は地下に保存されていますから」
四季の質問に対する返答が終わると、いよいよ説明が始まった。
鬼機関は大きく3つの部隊に分かれており、その名の通り鬼との戦闘が主の『戦闘部隊』、傷ついた鬼や隠れて住む鬼のサポートをする『医療部隊』、情報収集をする『偵察部隊』がある。
守は一時期は戦闘部隊にいたが、新米教師として戻ってきた感じである。
花魁坂は医療部隊。京都でも鬼を癒す能力で救っていた。
そして、レジに座っている馨は偵察部隊。
「私は戦闘部隊だろうか」
自分の能力的にもその方が向いている。
四季は隣で「俺戦闘部隊!」と元気よく言って大人達に「静かにしろ」と注意を食らっている。
無意識にだろうか、自分ではわからないが、海は本をめくる手を止め、四季の方を見ていた。
説明が終わり、ホテルへと向かっていた。
守がナビをしながら教師二人が先導して生徒達がそれに付いていく。そんな風に歩いていたところ、四季がふと足を止めた。
階段の向こうは明るく、祭りが行われているようだった。
四季は海の手を引いて言った。
「行こうぜ、ミオ!」
「…怒られても知らないからな」
そう言う海の頬は少し赤みを帯びていた。
こんにちは、作者です。
勉強について親にパンパチコンに言われ、モチベーションだだ下がっております。
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