誰にも知られぬ、小さな約束
風が忘れても 月が笑っても
君の瞳は 嘘を知らない
それでも心は あの灯を探す
君と交わした ただひとつ誓い
記憶から消えても灰は残る
声は届かずとも 願いは生きる
いつかこの歌が 君の耳に届くなら
忘れないで、あの光が満ちる日のことを
君と交わした 再会の約束を___
ある詩人が詩を語っていた。
僕はその詩の内容が気になってしまった。
「あの、その詩って…?」
「…!やあ。やっと来たね。“月の精霊”ちゃん。」
『やっと来た』とはどんな意味なのだろうか。
「僕の名前はウィル・ブライアです。」
吟遊詩人の目はとてもミステリアスで奥が知らない。
「やっぱり月の精霊ちゃんだね!ボクの名前はリュシアン」
リュシアン。聞いた事のない名前だった。
でも彼は前から仲間の様な馴れ馴れしさだ。
「あれ〜ボクの事警戒してる?おっかしいなぁ怪しい者じゃないよ~あっ!そうだこの詩の内容…だったよね!?」
僕は恐る恐る首を縦に振った。
「あー…ボクにもよく分からない。祈りの詩なんだって。」
彼は少し寂しそうな、悲しい顔をした。
そうするとまた彼は口を開いた。
もう昨日の事も過去になっている
心だけが追いつかず 背は伸びていく
道は闇に 出会いは別れを繋ぐ
それでも変わらない物
君を憶うこと
闇は祝福を 出会いは彼方地平線まで続く。
きっとまたあの光が指す所で
罪人を殺め 魔女を忘れよう
僕は彼の詩が脳内に響く中、眠りに落ちた。
『〜〜…♪ 〜♪♪…………』
其処は静かだったが暖かく、ふわふわと心地よい風が少女の優しい白髪を揺らし、歌を運んだ。
『ああ、君か…久しぶりだね……』
眩し過ぎて顔は見れないが声は少し寂しそうだった。
「君は一体誰だ」
記憶の中の少女に決まっている。
でも夢の中の僕の口は思い通りにいかなかった。
『……』
暫く沈黙が続いた。
知らないのか、言いたくないのか。彼女の口は閉じたままだ。
『…私は生まれて来なければよかったんだ。』
何て言えばいいのか…
でもあの親に育てられたのならそう思うのも無理はないのかも知れない。
『私が生まれた瞬間の母の顔を見たいと思うのは変な事かな…?喜んで…くれたかな?』
涙を隠す様に手で顔を覆い隠している彼女を抱きしめたいが体が動かない。
その時一際強い風が吹いた。
彼女が段々と遠くなっている様な気がして動かないはずの体を動かし、手を伸ばした
_________セツナ!!!
君と約束した“あの場所”で待っているから。
next 20♡
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