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駅へ向かう帰り道。
人通りの少ない歩道を、咲と亮は並んで歩いていた。秋の風が冷たく、街路樹の葉が足元に舞い落ちる。
「なあ、咲」
亮がふいに声をかけた。
「……なに?」
「このままでいいのか?」
咲は足を止めて、思わず兄を見上げた。
亮は正面を見据えたまま、ポケットに手を突っ込み、少し照れたように息を吐いた。
「悠真のことだよ。お前がどう思ってるかなんて、俺にはわかる」
「……」
「言わなくても、伝わることもある。でも、悠真は昔から不器用だからな。お前が黙ってたら、“妹ちゃん”のままで終わっちまうかもしれない」
胸の奥にズシンと重いものが落ちてくる。
「……そんなの、こわいよ」
俯きながら、咲の声はかすかに震えていた。