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その夜。
机に参考書を広げても、文字はほとんど目に入らなかった。
――“妹ちゃんのままで終わっちまうかもしれない”
亮の声が何度も胸の奥で反響する。
咲は椅子の背にもたれ、両手で顔を覆った。
(私……悠真さんが好き。それは、もうごまかしようがない)
だけど――。
(伝えたら、今の関係が壊れちゃうかもしれない。悠真さんに迷惑かけちゃうかもしれない)
好きという想いと、壊れることへの恐れ。
その狭間で、胸は苦しいほどに揺れていた。
窓の外に視線を移すと、秋の夜空に白い月が浮かんでいた。
その光は冷たくて、それでいて優しく、咲の心を映すように瞬いていた。