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◆姫子がきのこちゃんを問い詰める夢のシーン
その夜。
姫子はまた、あの森にいた。
昨日と同じ光。
同じ匂い。
でも胸の奥だけがざわついている。
「来たんだね」
きのこちゃんが、いつもの場所に立っていた。
「……ねえ」
姫子は歩き出す前に、きのこちゃんの前に立った。
「昨日の“影”……あれ、なに?」
きのこちゃんは少しだけ目を伏せた。
答えを探しているような沈黙。
「姫子ちゃんが見たままだよ」
「見たままって……先輩に似てた」
きのこちゃんは何も言わない。
「夢なのに、先輩の夢と同じ場所で重なったの。
あれって……どういうこと?」
きのこちゃんは、落ち葉を一枚拾って指先で払った。
その仕草は、答えを濁すための時間稼ぎのようにも見えた。
「……言えないの?」
「言えないんじゃなくて、言う時じゃないんだよ」
「じゃあ、いつ?」
「姫子ちゃんが、自分で触れる時」
姫子は胸がきゅっとなる。
「触れるって……何に?」
きのこちゃんは姫子の方を見た。
その目は、どこか寂しそうで、どこか優しかった。
「現実の“森川さん”に」
姫子は息を呑んだ。
「どういう意味……?」
「行こっか。今日は、もう少し奥まで」
きのこちゃんはそれ以上何も言わず、
森の奥へ歩き出した。
姫子は追いながら思った。
(……逃げた)
でも、
“逃げた”という言葉の裏に、
“守ろうとしている”ような気配もあった。