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✦ 姫子の夢:影に近づこうとするが、きのこちゃんに止められる
その夜。
姫子はまた、あの森にいた。
光は昨日より薄く、
風はほとんど吹いていなかった。
「来たんだね」
きのこちゃんが、いつもの場所に立っていた。
でも、どこか表情が硬い。
「ねえ、昨日の“影”……」
「今日は、もっと奥まで行くよ」
きのこちゃんは姫子の言葉を遮るように歩き出した。
姫子は胸のざわつきを抱えたまま、その後ろを追う。
森の奥へ進むほど、
空気が重くなっていく。
やがて、昨日見た光の場所にたどり着いた。
その中心に──
また“影”が立っていた。
昨日よりもはっきりしている。
輪郭が、ほとんど人の形になっている。
「……先輩……?」
姫子は無意識に一歩踏み出した。
その瞬間、
きのこちゃんが姫子の腕を掴んだ。
「だめ」
「どうして……?」
「まだ、触れちゃいけない」
「触れちゃいけないって……何に?」
きのこちゃんは答えない。
ただ、姫子の腕を離さなかった。
姫子は影を見つめた。
影も、姫子を見ている気がした。
そのとき──
影が、口を動かした。
声は聞こえない。
でも、言葉の形だけが分かった。
姫子は息を呑んだ。
「……どうして……?」
その言葉が、姫子の口から漏れた瞬間。
──同じ言葉が、別の場所でも発せられていた。