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雲雀視点
半年前から、奏斗とアキラの様子が可笑しかった。
口を開けばせらおの事ばっかり話して、しかも話の内容が、
苦しそうな顔がたまんないとか、不機嫌な態度が可愛いとか、
変な事を30分以上話し続けていた。
それこそ最初の頃は軽く流してたけど、毎日毎日隙あらば言われると 流石に気になる。
1度見てみたい気持ちを押さえきれず
hb「俺も見たいなぁ…」
なんてアキラの前で呟いてしまえば、
ng「良いですよ。もうすぐせら夫も帰ってくると思いますし。」
って、軽々しく言うもんだから少し戸惑った。
それから10分くらいして、事務所のドアがスッと開いた。
sr 「ただいま~あれ?雲雀、今日来てたんだ。」
任務から帰って来たせらおが、左手に持った書類をテーブルに置きながら話しかけてきた
hb「そうそう!暇だったからお邪魔させてもらってるわ!」
sr 「そっか笑なんか雑談でもしてたn「せら夫。」」
いつもより、より一層低いアキラの声がせらおの言葉を遮った。
ng「その話の前に、報告、してください。」
そんな事で話に割り込まなくても…と言いたい気持ちを飲み込んで、せらおの方を見た。
hb「…!」
驚いた。そこには下唇を噛んで眉毛を困らせた同期が居たのだから。
sr 「ぁ…今日のは裏で脅されて盗みを働いた男子高校生だったから、
盗んだ物は返してもらって、注意しておいた…。」
ng「…それで?」
sr 「ぇ…」
ng「その裏で脅した奴はどうしたんですか。」
sr 「…警察が…捜査してるから…大丈夫だと思う…。」
途切れ途切れで話すせらおを応援したい気持ちと、
まだ見ていたい気持ちがごちゃ混ぜになってる 。
それに、空気がどんどん重たくなっていく感覚がある。
ng「まだ捕まっていないのに、大丈夫だと言えるんですか?」
sr 「それは…言えな、い…」
ng「なら、 今からそいつを探し出して殺してきてください。」
sr 「ッ…」
ng「どれだけ時間をかけても構いませんので、ね?」
sr「‥う、んッ…」コクッ
ng「でも、出来るだけ早くしてください。」
sr 「…」コクッ
ガチャッ バタッ
せらおが事務所から出てからしばらく、混乱していた。
あの怯えた顔、震えた声、可哀想なのに、可愛く見えてしまった。
そもそもせらおは、あんなにも簡単に怯えるのだろうか。
ホラーゲームは平気で、相方は怖い。不思議な点はあるけど、それよりも可愛かった 。
俺は、せらおのあの顔が大好きなのだろう。
hb「…なぁ、アキラ…」
ng「どうしました?」
hb「俺、もっとあの顔見たくなってきた。」
ng「ふっ笑そうでしょうね。せら夫の事を見ているあなたの顔、凄かったですよ。笑」
hb「そんなにか?…でも、まぁ…可愛いかったからなぁ」
ng「…。もっと見たいのなら、いい考えがありますよ。」
hb「なんだ?なんかあんのか?」
ng「えぇ笑」
アキラが言うには、任務の時、わざと転んだり、攻撃に当たったりして帰ってくる。
それだけだった。実際、奏斗がやってみた日は1日中機嫌が悪かったらしい。
来月の俺と奏斗とアキラで行う任務で、やってみないかと聞かれた。
そんなの勿論、やるに決まってる。
それからと言うもの、任務の度に怪我をして帰った。
せらおは日によって、悲しそうな顔をしたり、苦そうな顔をしていた。
その顔が、暗い声が、俺にはたまらなかった。
明日は遂に、奏斗達と作戦実行の日。せらおはどんな顔をしてくれるかなぁ。
すっごく楽しみだ。
今日は気分がとても良い。それはきっと、奏斗もアキラも一緒だろう。
任務は俺らと同じ、裏社会で働く10人集団をやっつけるだけだ。
簡単だから、あっという間に相手は残り3人になってしまった。
今でも十分傷だらけ。でも足りない。わざと敵に当たりやすい位置で戦う。
任務の帰り際、俺らはせらおの事について語り合った。
kn「ただいま!」
hb「ただいまぁ!」
ng「ただいま戻りました。」
sr 「…。」
おっ?かなり機嫌が悪そうだ。顔をしかめてこっちを見つめてる。
sr 「…おかえり。」
ギリギリ聞こえるくらいの声量が返ってきた。
hb「どしたんせらおぉ!苦い顔してぇ!」
また黙って見つめてきた。さぁ、なんて返ってくる。
sr 「別に。プイッ…早く手洗いして、お風呂入ってきたら。……」
hb「ッ!?」
ヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバい
可愛いすぎる!まだお喋り中なのに内容が入って来ないって!なにプイッって!?
多分これ本人自覚無いやつじゃん!
kn「……………………………………………………」
sr 「…………………………」
ng「………………少なくともこいつらよりは。」
ん?今煽られてる?う~ん…一応それっぽいこと言っておくか!
hb「おぉい!w一言余計だぞ!w」
多分これで大丈夫なはず!
kn「…………………………………」
奏斗も続いてなんか言ってるからあってたってことだな。うん。
ng「………………………………………………………………………………………………………………」
にしてもさっきのは凄かった。2人は大丈夫なのだろうか。
sr 「………………」
ng「……………………………」
sr 「クルッ……………………」
hb「ッ”!?!?」
ぇぇぇええええああああ”あ”あ”あ”あ”ぁ”ぁおおおおおお”お”お”
待て、待て待て待て待て、落ち着け。そんな泣きそうな顔可愛いに決まってるじゃないか。
はぁ、一旦深呼吸しよう。
さっきの焦り(?)を落ち着かせ、せらおの居なくなった事務所に沈黙が続いているのが分かった。
kn「…ねぇ、さっきのセラ、凄かったよね?…」
奏斗の言葉に俺は大きく頷いた。
ng「…えぇ、とても。」
hb「凄い…凄かったな…」
ng「…なんか…なんかねぇ、なんか…なんかでしたね…。」
kn「…。」
hb「…。」
こんなにも語彙力がないアキラは初めて見た。
でも本当になんかがなんかしてたんだ。
kn「…そう言えば!GPS!」
ng「嗚呼、確かにそうでしたね。 」
GPS?
hb「何の事だ?」
kn「あ!まだ雲雀に言ってなかったんだっけ?あのねぇ、セラのピアス、GPSになってるんだ!」
hb「そうなん!?じゃあせらおが今どこに居るかすぐ分かるんかぁ…」
kn「そゆこと!だから遅れて帰ってきたときに言い訳がしにくくなってるの!」
ng「ちなみにこの事、せら夫は知らないので…ん?」
アキラが突然、顔を歪ませた。
hb「どしたん?」
ng「いや、せら夫が止血剤を使ってるんですよ…。」
kn「…は?」
止血剤。自力で止血が行えない時に自己判断で飲む薬。
俺らは本当に危ない時だけ飲むようにしている。
特別な箱に入れてるから、 使うと自動的にこっちに通知が来る。
でも、せらおが使った事は今までで1度もない。
ng「落ち着いてください。せら夫本人からSOSサインは出ていません。
何かあったらすぐに連絡するように言っているのでそれまで待っていましょう。」
hb「…そう‥だな…。」
kn「…。」
せらおを信じて、俺らはこの後の任務について話し合った。
kn「…ねぇ、セラは?」
任務に行く直前、奏斗が聞いて来た。
それは、俺もずっと気になっていたこと。
せらおが事務所を出たのは午後10時、今は午前5時50分。 あまりにも遅すぎる。
0時までには帰って来るよう教えたはずなのに。
kn「…ねぇ、」
奏斗が今にも人を殺しそうな空気を漂わせて、アキラの方をじっと見つめる。
ng「…分かってますよ。…なので今から迎えに行ってあげましょうか。」ニコ
その言葉に俺も奏斗もにっこりと笑った。