テラーノベル
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駆け巡るはうら若き頃の、純粋だった頃の記憶。
10歳のとき、鬼の力が覚醒し転校した。
『桃樫守』を捨て、『神示守』として生き始めた年。
そこで仲良くなったのが凛_『氷蔦凛』だった。
『ねぇ、守ちゃん』
『わたしに近づいても良いことないよ』
『それでもわたしは馴れ合うわ!意地でも!』
『…もう勝手にしろ。凛』
中学に上がり、喧嘩をふっかけられることが増えた。
澄ました顔が気に入らないらしい。
怪我をすると、凛は呆れながら手当てしてくれた。
『また喧嘩?海ちゃん達に言うわよ』
『え…。それは勘弁してくれ…』
『嫌よ』
『マジで頼む!このとーり!』
『…仕方ないわね』
『ありがと氷蔦大明神様!』
『何よその呼び方…』
下らないことで笑い、下らないことで喧嘩もした。
親友なような、姉妹のような、そんな関係。
高校に上がってもその関係は変わらなかった。
『凛、今日の小テストの範囲覚えてっか?』
『教科書のここから…ここまでね』
『もう私タカ括ろうかな…』
『駄目!今のうちにやるわよ!守、また追試になりたいの?』
『あのセンセーだりぃんだよなぁ…』
このまま続いていてほしかった。
いや、あの日までは続く筈だったのだ。
あの日、運命が歪んだ。
『おやじ、かあさん』
両親が殺された日。妹達を連れて鬼機関に転がり込んだ日。
さよならも言えず、凛と離れた。
また話せることを信じて離れた。
(まさか、こんな再開なんて思わねぇよ)
目を伏せ、まばたきをしてから凛を見る。
凛は変わらず美しいまま、親友ではなく敵としてそこに立っている。
「凛…だよな?」
自分の知っている凛じゃない。
笑う姿は確かに凛なのに、纏う空気が凛じゃない。
「そうよ、私は…あぁ、あのときは『氷蔦』だったわね。まぁいいわ。私は凛よ、判るでしょう?ねぇ…」
こんこん、とヒールで地面を叩くと足元から黒い細菌で形作られた蔦が守を掴んだ。
かつん、かつんと音を立てながらゆっくりと動けない守へ歩いてくる。
「私のパパを殺したのは、あなたでしょ?」
守は「…は?」と驚くことしかできない。
凛は畳み掛けるように口を開いた。
「パパは6年前、桃太郎を誑かした鬼と誑かされた桃太郎、そしてその子供達を討伐するためにある家に行ったの」
指を鳴らすと締め付ける力が強くなり、段々とあらぬ方向に四肢が曲がっていく。
「遺体も残らず、討伐しに行った家でパパは死んだ」
凛は柔らかく守の頬を撫でた。
「ねぇ、あなたが殺した桃太郎の髪色は何色だった?」
弓のようにその黄水晶の瞳を細め、撫でた守の頬に爪を立てて細く長い傷を残す。
慈しむように傷を撫でると「守」と名前を呼んだ。
「私と同じじゃなかった?」
守は記憶を遡った。
だが、思い出せない。桃太郎が母を切りつけていたことしか覚えていない。
すぐに暴走状態へ陥り、気が付いたときにはもう血溜まりと化していた。
震える唇で凛へ言葉を紡ぐ。
「わからない…」
「へぇ…そう」
その言葉を聞き、凛は蔦を伸ばし始めた。
蔦は桃華へ伸び、足首を掴む。
桃華は振りほどこうとするが、どうしても幼い桃華ではほどけない。
皆も馨を筆頭にほどこうとするが、切っても、ほどいても、どうしょうもできない。
「じゃあ、上司からの命令を遂行しようかしら」
にこにこと笑いながら桃華を引きずって伸びた蔦は縮んでいく。
馨達は追いかけたが他の蔦で撥ね飛ばされた。
桃華は泣きながら手を伸ばす。
「おねえちゃん!かおちゃ…みんなぁ!」
「桃華!」
やっとの思いで蔦を引きちぎり、桃華を拘束する蔦を引きちぎる。
そして、凛を殴り飛ばした。
「何のつもりだよ…凛ッ!」
口の端から細く血を流しながら、凛は守へ笑いかける。
「もう問答は無駄だと判断したから。だから、上から言われてる『桃太郎の少女を【保護】せよ』っていう指令を遂行しようとしただけよ」
笑顔を捨て、蔦を守の横腹に突き刺す。
守は桃華を抱き締めたまま血を吐いた。
「邪魔をしないでくれるかしら。害獣ごときが」
自力で蔦を引き抜くと、また血を吐いた。
馨が守へ駆け寄り、屏風ヶ浦とロクロ、漣が桃華を避難させ、矢颪が凛を睨みつける。
また蔦を伸ばすと矢颪が叩き落とした。
顔には好戦的な笑みが浮かんでいる。
「さっきはセンセーがやっちまったからよ、不完全燃焼なんだわ」
親指の腹を噛み千切ると心底楽しそうに凛の方へ走り出す。
その背には深紅の翼が形作られ、その体を浮かせた。
鷹のような羽ばたきは暴力的な風を生み、蔦を作らせないほどの風圧は凛の動きを止める。
凛は風圧に顔を歪め、柔肌に傷がついていく。
矢颪を睨むと人差し指を地面に向けた。
「残念だけど、子供には興味がないのよね」
小さく呟くと蔦を伸ばし、矢颪の左腕を貫いた。
幸い翼が片方崩れただけで腕は千切れていない。
守が叫ぶように矢颪の名を呼ぶ。
「ありがと」と手当ての礼を言うと矢颪を障壁で運んだ。
守は凛の方を向くと障壁を展開し、凛を捕縛するため組み合わせていく。
振り返らぬまま後ろの生徒たちと桃華に「みんな」と優しく呼びかけた。
「皆は見てて。これは俺の問題だから」
手を凛へかざすと組み合わせた障壁達が凛を囲み、閉じ込める。
だが、それも蔦でこじ開けられ意味をなさない。
凛は蔦で剣を創ると守の方へ走り出す。
「守、死んでパパに詫びて」
守は当然防御し、ナイフで応戦する。
互いの武器がぶつかり合い、火花が散った。
一度二人は後ろへ少し跳んでからまた攻撃の応酬をする。
「凛!聞けって!」
「鬼に貸す耳は無いのよ!」
かわして、切りつけて、防御して、跳んで、切りつけて、かわして、防御して、跳んで。
完全に同じレベルの戦闘力を持つ二人の戦いは終わりが見えない。
凛が叫ぶように言った。
「従兄も、あんたに殺されたの!そんな状態で何で話を聞こうとできるのよ…っ!」
一瞬、守の動きが止まった。
防御することもできず、腹に剣が突き刺される。
守はまともに受け身もとれず転がった。
「っ…」
痛みに顔を歪めながらも、守は自分が犯してきた罪を思い出していた。
こんにちは、作者です。あと一週間もないぞ第二期まで。どうすりゃいいんだ。闇深すぎだろ。まじで死ぬって~~~~。
いつも読んでくださりありがとうございます。いいね、ブックマーク、励みになっております。亀更新のノロノロ小説ですが、これからも読んでくださると嬉しいです。
②さん
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コメント
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うわあ…第34話、めっちゃ重くて胸が痛いよ〜😭💔 幼い頃のほのぼのとした思い出が蘇るからこそ、今の凛の「敵」としての姿が切なすぎる…。「パパを♡♡♡たのはあなたでしょ?」って言われてる守の戸惑いと罪の重みが伝わってきたよ。それでも「これは俺の問題だから」って桃華たちを守ろうとする姿勢、本当にカッコよかった…! 凛の「鬼に貸す耳は無いのよ!」って台詞とか、もう涙腺崩壊しかけた😢 二人の過去を知ってる読者からすると、やりきれない思いでいっぱいになる…。続きが待ち遠しすぎるけど、ミツヒサさん無理せず頑張ってね!応援してるよ〜🌸✨