心「ねえねえ!もう一回言ってよ。可愛いって」
和馬「そんな鬼畜言わないでくれ」
心「嬉しかったんだもん」
ルンルンと元気そうに歩いていると急にふらつき、心さんは壁に寄りかかった。
和馬「心さん…!」
やってしまった。こんなに人がいて辛くないはずもないのに、楽しそうな姿だけ見て大丈夫だと思ってしまった。
和馬「ごめ…」
謝ろうと言葉を発する前に心さんがそれを遮った。
心「君が謝るのは違うよ。うちが自分の体調を管理できてないだけだから」
心「…やっちゃったなー。気をつけてはいたんだけどなー」
心「ごめんね。楽しい雰囲気壊して…」
まだ出口まで半分以上の道がある。近くで休もうにもそんなスペースはない。
和馬(どうする…心さんをここに一人にさせるわけにはいかないし、かと言ってこのままじゃ…)
和馬「心さん…大人数の心を読むのと、1人の心読むのどっちがラク?」
心「1人…かな」
和馬「じゃあ俺心の中で、心さんと話すよ」
和馬「ラクになるかはわかんないけど」
心「…手繋いでくれる?」
和馬「手…?」
心「そうした方が人を限定出来るし、深いところまで読むことができるんだ」
和馬「そういう事なら、はい」
差し伸べた手を優しく握ってくれた。
和馬(心さん、聞こえてる?)
心「うん、聞こえてるよ」
心「なんかうち独り言多い人みたいじゃない?」
和馬(魚と話してると思われるから大丈夫)
心「もっとやばい人だよ!」
心「うん、すごいラクになったよ」
人混みの中はこの方法で話した方が負担がかからないらしい。
心「わぁ〜!!クラゲだって!」
心「クラゲってこんなに綺麗だったんだ」
和馬(この水族館はクラゲを一推ししてるらしい)
心「へぇー!確かに凝ってる気がする!」
心「クラゲの体は95%水分…なんだって」
和馬(ほとんど水じゃん)
心「…きゅうりと一緒だ」
和馬(…今言う?)
さっきフラついてたとは思えないほどのテンションに付いていくのがやっとだった。 気付いたら土産屋にいた。
心さんが土産屋に来た時からずっとクラゲのキーホルダーを見ている。ただ目で追ってるだけかと思ったが悩んでいるようにも見えた。
和馬(あのキーホルダー欲しいの?)
心「え!?」
和馬(ずっと見てたから、欲しいのかなって)
心「可愛いなあって思ってただけだよ」
手を繋いで能力が活性化されるのは心さんだけでなく俺の能力もらしく、この言葉は嘘だとハッキリと分かった。
和馬(欲しいなら待ってるけど)
心「君が絶対嫌だっていうこと言うけど、いい?」
和馬(うん )
心さんは少し顔を赤らめながら口を開いた。
心「お揃いにしたいなぁって」
和馬(……いいよ)
心「やっぱ諦め…って、いいの?」
承諾されるとは思っていなかったらしく信じられないと目を丸くしていた。
和馬(せっかく来たから、形として思い出に残したいなって)
心「そこまで言うなら、しょうがないなぁ…!」
和馬(声に感情が漏れてるよ)
買った商品を目線よりも高くに持ち上げ照明の光に照らされたキーホルダーを嬉しそうにみている心さんに、思わず笑みがこぼれた。自然とこの時間が終わってほしくないと思ってしまった。