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『双子の名探偵は今日も嗤う』〜謎あるところに闇は生まれる〜
第1章 『狙われたシンデレラのガラスの靴』
〜宝石と美しい硝子〜
第1章 最終話 魔法は解ける
『貴方は雇い主であるハリー様にガラスの靴を盗むよう頼まれた。南の大地にはない硝子と宝石で作られたガラスの靴を。そして、その日の夜貴方は美術館に忍び込み…ガラスの靴を盗んだ。』
『違いますっ!そんなの全部デタラメよ!』
『逃げてる途中に追いつかれそうになったから…その絵の後ろに隠した。でも、驚いたんじゃないですか?絵の後ろにこんなものがあるなんて。実はこの美術館には仕掛けがある。絵の後ろには必ず空洞になって、それすらもアートに捉えてる。グロリア様は素敵な思考をお持ちの方ですね。』
『(´・ー・`)フフン』
『だからその裏に隠した。誰も触りも近づきもしないですものね。人が天使を倒している絵なんて…貴族の方は気味が悪くて近寄らないし、展示品なら尚更触れようとは思わないですもの。あとから回収しようと今日この美術館に来た。』
『っ…。一体いつから気付いていたんですか?』
『…リストに名前が載っていない時から違和感を感じていました。知らなかったんじゃないですか?招待された貴族様の名前をリストに残していたなんて。貴方は焦ったでしょう。だけど、雇い主のハリー様に助けられた。』
私はゆっくりとユリア・ビルゲーンさんに近づく。
コツコツ…。
『でも、突然私がガラスの靴を持って現れたから貴方は焦った……。それはそうですよね。自分で隠したはずのガラスの靴が…まさかここにあるなんて。』
『く…っ。』
私は空洞の中のガラスの靴を手に乗せる。
『綺麗ですね……グロリア様。この宝石にもアレキサンドライトが?』
『あ、あぁ。』
『シンデレラが履くにピッタリのガラスの靴ですね。』
『……。』
『さぁ、ユリア・ビルゲーンさん。』
『ひ…っ!』
シュル…っ。
私は眼帯を解いた。
『貴方の心の中を見せて頂きますね。』
《怖い、助けて、ハリー様…っ。嫌だ、死にたくない…っ。》
『皮肉なことを…。貴方はハリー様に雇われたただの召使い…。失敗すればトカゲの尻尾切りのように捨てられるという相手に助けを乞うなんて…。心配しなくても私の役目はここまで。魔法が解けてしまいましたね。ユリア・ビルゲーンさん。つかの間のシンデレラは楽しかったですか?』
『う、うぅ…。』
『…グロリア様。ユリア・ビルゲーンさんとハリー様を憲兵に引き渡して下さい。私の仕事はここまでです。では。』
『あぁ。感謝する。後日謝礼をデビルズパレスまで送ろう。』
『えぇ。ありがとうございます。それと…この瞳のことは他言無用でお願いします。』
月夜に照らされた主の赤い瞳が…
夜を飲み込んでしまうように麗しかった。
コツコツ…。
私は美術館の裏で待つベリアンとルカスの元に向かう。
『う…っ!』
《気持ち悪い》
《呪われそう》
『はぁ、はぁ……っ。』
副作用が厄介だ。今日で心を読み過ぎた…。
バタンッ!
私はその場に倒れ込んでしまう。
頭を締め付けられているような痛みに襲われる。
『こんな力…要らない…っ。』
その頃 デビルズパレス。2階執事部屋
『……。』
『寝ないのか、主様。』
『ボスキ…。お姉ちゃんが帰ってくるまで寝ない…。』
『…主様、昼言ってたこと本気なんすか?』
『…お姉ちゃんはきっと私の事嫌いだと思う。私、お姉ちゃんの妹なのにお姉ちゃんのようになれない。仕事にも連れて行ってくれないから。』
『主様……きっと、麻里衣様が主様を避けるのはきっとなにか理由があるんですよ。』
『……昔からそうなの。お姉ちゃんがママやパパの仕事を手伝ようになってから……お姉ちゃんは私を遠ざけてる。お姉ちゃんはそんなつもり無くても…私は……っ。』
窓から庭を眺める。
『主様…。』
と、その時――。
ギィィ…。
『主様帰ってきたんじゃないか?』
『一緒に行きましょうっす。』
『うん……。』
デビルズパレス エントランス
『おかえりなさいませ、主様。』
『ただいま、まだ起きてたの?』
『はい。百合菜様と一緒にいたんです。』
『そう…。百合菜もまだ起きてたのね。』
階段をゆっくり降りる。
『おかえり、お姉ちゃん。』
『ただいま、百合菜。』
『お姉ちゃん、なんだ顔色が悪いような……。』
『疲れてるだけよ、大丈夫。』
『でも昔もよく倒れて…。』
『平気よ。私のことはいいから早く寝なさい。』
私は百合菜の横を通り過ぎる。
『お風呂の用意が出来てます。』
『ありがとう、フェネス。』
『っ…お姉ちゃん…。』
『主様……。』
姉妹の間にできた近くて遠いこの境界線…
一線を引いているのは彼女の方。
歩むことも遠ざけることもしない。それは果たして彼女のためになっているのか――?
デビルズパレス 主様の部屋(麻里衣の部屋)
※妹は隣の部屋
『…主様。言わなくてよろしいのですか?』
『……。』
『妹である百合菜様、他の執事も受け入れて下さいます。我々のように……。』
『……。』
デビルズパレスに帰る前 馬車の中
『はぁ、はぁ…。』
『主様が遅いので迎えに行ったら倒れてるなんて…驚きましたよ。何があったんですか?』
『っ…ルカスとベリアンには教えておくわ…。御者席のベリアン…聞こえる?』
『えぇ……。』
私は横になって2人に話しかける。
『私のこの赤色の瞳は…異能の力があるの。人の心の中を読める…。』
『『!?』』
『そして、この今の状態は心の中を読み過ぎた代償…。副作用みたいなもの…。』
『そんな…どうして今まで隠していたのですか…っ。』
『怖がられると思ったから…。みんなや、百合菜に……。』
『『っ…。』』
『だからずっと眼帯をしてた…ごめんなさいね、黙ってて…。』
『『……。』』
『この事は…他のみんなには言わないで。お願い。他の執事のみんなと…百合菜…百合菜だけには絶対に…。』
『…それには理由があるんですね。百合菜様には言えない理由が。』
『……私のような思いをさせたくない。この私の力は遺伝で…受け継いだものなの。私はこの瞳のせいで…色んなものを失って…沢山虐められてきた。百合菜だけにはそんな思いをして欲しくない。だから仕事にも連れていかなかった。私と一緒にいたら百合菜も同じように…。』
((だから主様は……。ずっと百合菜様を避けて…。))
『姉ながら…情けないわ。こんな、守り方しか出来ないなんて。でも、あの子に憎まれようと…あの子が悲しもうと私は…。うっ!』
『主様…っ。』
『うぐ…ぅ。私は…あの子を守るわ。だから、誰にも言わないで。』
『『…っ。かしこまりました……。麻里衣様。』』
『これでいいのよ。あの子に私のような思いはさせないわ。苦しむのは私だけでいい。』
『『……。』』
『ベリアンもルカスも今日はありがとう。疲れたでしょう。ゆっくり休んでね。』
『『…はい。おやすみなさいませ、主様。』』
バタンッ。
『……はぁ。』
(ごめんね、百合菜。私のことを嫌ってもいい、憎んでもいい。貴方は私が守るわ。)
0時の鐘は鳴って、シンデレラの魔法は解けたのに…この忌々しい魔法だけは解けてくれない……。夜はそれでも更けてゆく。
この気持ちを知らないまま――。
次回
第2章 『不可能な殺人と不可解な死』
〜金に執着する愚か者〜
コメント
2件
うわーマジか姉主ちゃん優しすぎるこれは、仲良くなってほしいなまぁそれから自分の目が愛せるようになってほしいなぁ頑張って双子主ちゃんたち