テラーノベル
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放課後。
教室には、まだ何人かの生徒が残っていた。
悠真は自分の机に座ったまま、ずっと廊下を見ている。
「……遅いな」
「誰待ってんの?」
友達に聞かれて、悠真はすぐに答えた。
「湊」
「また?」
「またって何だよ」
「毎日待ってんじゃん」
「別にいいだろ」
そう言いながらも、悠真はどこか嬉しそうだった。
すると、教室の後ろのドアが開く。
「悠真」
「湊!」
悠真はすぐに立ち上がった。
「遅い!」
「先生に呼ばれてた」
「待ちくたびれた」
「五分くらいだろ」
「俺にとっては長いの」
「大げさ」
湊が笑う。
悠真はそのまま湊の隣に並んだ。
「帰ろ」
「うん」
二人が教室を出ようとすると、後ろから声が飛んできた。
「おーい、お二人さん!」
「何?」
「今日も一緒に帰るんですかー?」
悠真が振り返る。
「そうだけど?」
「ほんと仲いいよな」
「まあね」
すると湊が小さく、
「……いつものことだろ」
と言った。
それを聞いた悠真は、なぜか嬉しくなって笑った。
「ねえ湊」
「何」
「手、冷たくない?」
「普通」
「俺、あったかいよ」
「だから?」
「……触ってみる?」
「何言ってんだよ」
「いいじゃん」
悠真が自分の手を差し出す。
湊は少し迷ってから、その手に軽く触れた。
「……ほんとだ」
「でしょ?」
「ちょっとだけな」
「じゃあ、もうちょっと」
悠真が笑う。
湊も呆れながら、そのまま並んで歩いた。
校門を出ても、二人の距離は近いままだった。
「今日どこ行く?」
「コンビニ」
「また?」
「悠真が行きたいって言ったんだろ」
「あ、そうだった」
もくもくもくもく(旧nono)
19
「忘れてたのかよ」
「湊が一緒ならどこでもいいし」
「……そういうこと平気で言うよな」
「何が?」
「なんでもない」
コンビニに着くと、悠真はお菓子売り場を見ながら悩み始めた。
「湊、どっちがいい?」
「こっち」
「じゃあこっち」
「即決?」
「湊が選んだならそれでいい」
「……ほんと単純」
「湊限定だから」
「……」
湊は何も言わず、別のお菓子を手に取った。
「これも買えば?」
「え、買ってくれるの?」
「自分で買え」
「なんだー」
「……あとで半分やる」
「やった!」
悠真は嬉しそうに笑った。
帰り道。
二人でお菓子を分けながら歩いていると、前から同じクラスの女子が歩いてきた。
「あれ?」
「ん?」
「やっぱり二人一緒じゃん」
「うん」
「……ねえ」
女子が二人をじっと見る。
「付き合ってる?」
「付き合ってない!」
悠真が即答した。
湊も、
「付き合ってない」
と続ける。
「じゃあ何なの、その距離感」
「え?」
二人が同時に自分たちを見る。
肩が触れそうなくらい近い。
お菓子を分け合っている。
しかも悠真は、いつの間にか湊の袖をつかんでいた。
「……」
「……」
二人とも黙る。
女子は笑って、
「まあ、仲良しってことでいいや」
と言って先に行ってしまった。
悠真は少し照れながら、
「……そんなに恋人っぽい?」
「知らない」
「湊はどう思う?」
「……」
「ねえ」
「……ちょっとだけ」
「え?」
「恋人っぽいかも」
悠真の顔が一気に赤くなる。
「……湊もそう思うんだ」
「お前が聞いたんだろ」
「いや、なんか……嬉しい」
「何で嬉しいんだよ」
「秘密」
「ずる」
悠真は笑いながら、また湊の隣にぴったりくっついた。
「じゃあさ」
「何?」
「これからもずっと一緒に帰ろうよ」
「今までもそうだっただろ」
「これからも、って言ってるの」
湊は少しだけ考えてから、
「……いいよ」
「約束?」
「約束」
悠真が嬉しそうに笑う。
「じゃあ、明日も待ってるから」
「分かった」
「絶対だよ?」
「分かったって」
「忘れたら怒るからね」
「忘れない」
夕焼けの道を、二人は並んで歩いていく。
少し前を歩いていた友達が振り返って、二人を見る。
「……あれ絶対付き合ってるだろ」
二人には、その声は聞こえていなかった。
まだ恋人じゃない。
でも――
「ずっと一緒にいたい」
その気持ちは、もう二人とも同じだった。
コメント
1件
うわ、この第9話、めちゃくちゃいいですね…! 悠真の「湊限定だから」とか「ずっと一緒に帰ろうよ」ってストレートすぎるでしょ(笑)。でも湊が「ちょっとだけ恋人っぽいかも」って認めたところで、思わずニヤけてしまいました。まだ恋人じゃないけど、もう二人の気持ちは同じ方向を向いてる感じがたまらないです。夕焼けの道を並んで歩くシーンが目に浮かびました。沙良さん、こういう距離感の描き方、うますぎます!