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単独任務4日目(夜)
この日はいつもより早く屋敷が静かになった。
2人は布団から起き上がり、目配せをして気をつけながらそうっと部屋を出る。
部屋を出てもカイクがいなかったので、カイクとシュサの眠っている部屋にそっと耳を近ずけると、扉がいきなり開いた。
「!!」
レイナは驚いて一瞬にしてもの凄く遠いところまで後ずさる。それを見たライネは肩を震わせながら全力で笑いをこらえている。
「??????」
何が起きたのかが分からないカイクは、何故か遠くにいるレイナと、全力で笑いを堪えているライネを見て、ポカーンとしていた。
「早く探索を始めよ」
レイナ恥ずかしさで少し顔が熱くなったが、それがバレないようにしながら2人に近ずいて言う。
「うん。それなんだけどさ、まずは一旦あそこに行こ」
「…うん」
カイクはライネのことを言ったん放っておいて、先に隠し部屋の方に行く事を提案した。
隠し部屋に移動すると、ライネは笑いが治まったようでようやく話し始める。
「いやー面白かった」
「だとしても笑いすぎ」
「何があったんだよ?」
「いやそれがさ、「そ、その話は置いておいて、カイク、シュサさんに話は訊けた?」
先程起こったことを話そうとするライネを遮り、レイナは仕事に関する話をする。
「うん。聞けたよ。あの写真に写っていたのは主人の側近で、行方不明になった使用人だって。でも、これ以上は訊こうとしてもすぐに話をそらされて訊けなかった」
「そっか…ところで、カイクはどんな感じでシュサさんに話を訊いたの?」
ライネがカイクに訊く。
「普通に、「最近またあの記事を見かけたんだけど、行方不明になった使用人ってどの立場のヒトだったんですか?」って」
「怪しんでいる様子は?」
「特になかったと思う。俺は今日の収穫これくらいだけど、2人は?」
「私は特になかったかな?盗み聞きとかしてみようかと思ったんだけど、結構難しくて…」
「私ものなかったけど、今日カイクと昼間話したやっといた方がいいなって言うことはあるね」
「あ、そういえばあったねそんな事。今から盗りに行く?」
「とるって、何を?」
『鍵』
2人の声がハモった。
「あとは、私の名前と用紙の話なんだけど、名前も偽名だしこの顔も化粧だね」
「あ、そうだったの?私もだ」
「うん。だから今度からはわざわざ朝起きる時間をずらす必要は無いね」
「ん?ウィンだから早く起きてたの?」
「うん。でも、コンタクト入れるのに時間が掛かるのはマジ」
「因みに、ウィンの能力とか俺聞いてたっけ?」
「言ってない」
「なんの能力?因みに俺は自分の容姿を変えられる能力。後、魔力消費量はえげつないから1回変えたらあと一週間は能力を使えない」
「そこまで話しちゃっていいの?まぁ、私も言うけど。私は光属性の魔法使い。因みに登録はしてないよ。バレるとまずいから」
属性って分かるもんだっけ?
確かレイナのポーションづくりの免許証にも属性は書かれていたが、昔の文字で書かれていて、分かるヒトでなければただの模様に見える筈だ。実際、レイナもヒタに言われるまでそれが文字だとは分からなかった。今もその文字を勉強しているが、まだ少しの単語がわかるくらいだ。
「これは私も言わないといけない感じ?」
疑問は顔に出さずに訊く。
「うん」
「…わかった。私の能力は物を作り出す能力。魔力消費量は作った物が大きければ大きいほど消費も多くなる感じ」
全部嘘だ。ライネは正直に光属性の魔法使いと言ったが、レイナは登録されている為、正直に闇属性の魔法使いと言ったらバレるかもしれない。ただ使える魔法のうちの1つの説明をしただけだ。
正直、自分とは真反対の属性の光属性と聞いた時から、冷や汗が止まらない。
敵に回したら多分終わる…!
ヒタにも、光属性と闇属性はだいたい同じくらいの強さだが、光属性の方が少し強めだと聞いた。少しと言っても、恐らく魔法使い歴は絶対にライネの方が長いだろう。
レイナは絶対に2人、特にライネを敵に回さないことにした。
「あのさ、」
レイナが短い間でもの凄く思考を回していた時、ライネが言う。
「何?」
「今日はちょっと分かれて探索しない?」
「いいかもな。鍵を盗んであの隠し扉とかを開けるのと、昨日に引き続き屋敷内を探索するので」
「何人と何人で分かれる?」
「鍵2人で、屋敷1人でいいんじゃない?」
「じゃ、私屋敷探索でいい?」
レイナが手を上げる。
「え、それは私の方が良くない?まだ2人が言っている鍵のこともよく分からないし」
「それに関しては俺が行く途中で説明するし、それでいいんじゃないか?」
「うん。それに、あって数日の私よりずっといる2人の方が協力系は得意だろうし」
「じゃあ、分かった。そしたら、2時位にこの部屋に集合ね」
「了解 」
レイナが返事をすると、ライネ達は地下室を出て行った。地上で足音がしなくなるのを確認すると、レイナはまず今いるこの地下室から探索を始めることにした。
「よし、やるか」
まず、レイナは部屋にある本棚や机、部屋を照らしている電気に積もっている埃の量を調べる。
それぞれの上をツーっと人差し指の指先でなぞると、埃はかなり溜まっていたようで、指先が真っ黒になった。
何故埃の量を調べたかというと、あの2人は少し前位にこの部屋を見つけた。本棚に置いてある本の古さからもこの部屋がどれくらい前まで使われていたかは分かるが、本は入れ替えられている可能性もある為あまり信用はできない。なので、埃がどれくらい積もっているのかでこの部屋が最後に使われたのがどれくらいかを見ようとしたのだ。
埃の量は昨晩調べた娘の部屋と同じ位だったので、その頃から使われていないようだった。埃がそのままということは、この部屋を昔使っていたヒトも定期的に掃除をしているということもないだろう。
埃を調べ終わると次は、本の内容に着いて調べる事にした。
本は全部で3冊あり、1つのはノートだが、それ以外は何かの図録なのだろうか?文字が汚れていて少し読みずらい。
図録の方を開いてみると、1つは人体に関するもので、もう1つは毒を持っている植物画載っていた。人体の方はイラストがリアルで、少し気持ち悪さを感じる。
レイナは2つの図録をしまうと、次はノートを開いた。
文字は手書きで、お世辞にも美しいとは言えず、かなり乱雑に書かれている。
――ノート――――――――――――――――――――――
○月✕日
今日はようやくこの屋敷に入れた。長年磨き続けた俺の返送は完璧なのかあのクソジジイ、自分が昔捨てた息子とも気づかず、「これからよろしくな」だってよ。笑えるぜ。それともあの老いぼれ。昔実の子を捨てたということすら忘れてるのか?
取り敢えず作ったこの部屋には変装用具と、武器とこの日記を隠しておくか。
―――――――――――――――――――――――――――
「…」
書かれている内容的に、この日記はこの部屋の主の日記のようだ。途中でかなり重要な事が書かれていた様だが、そういうことは全て読み終わった後にまとめる事にして、またレイナは日記を読み進めた。
――ノート(最後のページ)―――――――――――――
○月✕日
ハハッようやく成し遂げたぞ。ようやく憎いあいつを殺してやった。これで俺はやっと、本来いたはずの立ち位置に入れる!
もうあんなクズ共にヘコヘコする必要も無いし、あんな質素なベットで寝る必要も無い!
これからは思う存分金が使える!…にしても、あいつ、親父の側近。あいつは殺しておいて正解だったなぁ。あのヤロォ、完璧な俺の変装を見破りやがって。危うく親父にバレるところだったぜ。あいつの死体はバラバラにして山に捨てておいたし、バレても問題は無いだろう。
今日でもうこの埃まみれの部屋とはおさらばだ!
―――――――――――――――――――――――――――
パタン…
レイナは読み終わると、少し早いがメモに情報をまとめようとした。だが、余りにも色々な情報が出過ぎて、どれから書けばいいかが分からない。
かなりの時間悩んだ末、レイナはメモに情報をまとめた。
新しく知った事はこれくらいだろうか。
にしても、かなりの調査が進んが気がする。
もうこれだけでハスネに調査結果だと伝えても良いのでは無いだろうか?
レイナがそう思って顔を上げると、地下室の扉が開き、ライネ達が入ってきた。
「お、ウィンもう居たの?はっやいね」
「…え?」
平然と言うライネを前に、レイナは思わず混乱する。
それもそのはず。レイナの体感時間ではここまで約30分位だったのだから。
「「え?」って、何かあった?」
「いや、えっと、調査始めたの何時だっけ?」
「11時位じゃなかった?」
もう3時間も経っていたのか…
レイナは混乱する頭をビンタで一旦リセットさせると、収穫を話した。
「んで、こっちでわかったことなんだけど…」
「いやいや待て待て」
「何?」
話を遮るカイクに思わず怪訝な表情を向ける。
「さっきのビンタは?」
「脳味噌リセットさせてた」
「ああ、なるほど?」
「いや、どゆこと?」
ライネは最初から理解するつもりもなかったのか、受け流す。
「それで、報告だけど、こっちは結構ヤバいことわかった」
「どんな?」
レイナは2人にさっきメモした内容と、例のノートを見せる。
「これは?」
「この部屋の主の日記と、それで初めてわかったことをまとめたメモ」
「そんなものどこにあったの!?」
驚いて訊くライネに、レイナは無言で本棚を指さす。
「こんなところにあったんだ…」
「それより、このメモの内容を見て」
2人は、メモを見ると、パラパラと日記をめくり始めた。
「こういう事だったんだ…」
一通り2人もノートに目を通すと、驚いたように言う。
「大事な情報は、めちゃくちゃ近くにあったね」
「うん」
「私の収穫はこれで全部。2人の方は?」
レイナが言うと、2人は少し目を逸らして言った。
「それがね、」
「鍵が見つからずに、ずっと探していると、いつの間にか2時になっていたんだよ」
「あ〜。大変だったね」
「うん。一気に鍵持ち出したらバレやすいから、2個ずつ盗って庭と鍵のある部屋の往復で…」
「その上全部調べ終わっても、会う鍵は見つからなかったしさぁ…」
「じゃあ、ハスネさんが管理してるのかな…?執事長だし」
「それか、偽主人が持ってたりして」
今の主人が偽物だとわかった途端、ライネは主人のことを偽主人と呼んでいる。
「そしたら地獄だな…」
「私が明日ハスネさんに鍵はないか訊いておくよ」
「そんなことできるん?」
「私に依頼してきたのはハスネさんだしね。大丈夫でしょ」
「それなら大丈夫そうだな」
3人は全ての情報を共有し終えると、それぞれ部屋に戻って明日の使用人としての仕事のために眠りについた。
はい。今日が夏休み明け初登校日で朝に3回位絶望してました主です。
マジで久しぶりの早起きが地獄でした。
それでは、さよなら〜(ᐙ)/