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モブになりたい
⚠️モブ目線、モブ→デンジの描写あり
⚠️学パロ
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私はしがない女子高生…今日もクラスメイトに半ば強引に押し付けられた放課後の掃除をするの…
と、脳内で1人寂しくナレーションをつけながら教室の床を掃いていく。
クラスの女子が
「今日バイトだったの忘れててほんとにごめん!今度変わるから!」
と、うるうるした目で見つめられたら大事な用事がない限り断ることなんて私には出来なかった。
廊下がきゃあきゃあと女子の黄色い歓声が上がる。何となく想像できるが、ふと廊下を見るとそこには、私のクラスの担任、早川先生を数人の女子が取り囲んでいた。
「せんせー、今度バレンタイン何がいい?」
「バレンタインなんてまだ先だろ」
「いやいや!せんせーに食べさせるなら今から練習しなきゃね」
と、まだ先のバレンタインなどの話をしているらしい。ちょっと?!ちゃんと掃除してるの?!などと首を突っ込むなんて、することもないし、勇気もない。掃除をサボってイケメン先生に絡むのも青春だ、と私は思う。
私の担任、早川先生は今年からこの高校に入ってきた新任の先生だ。それはそれはイケメンで、ものすごい美人。なんでこんな公立高校で教師してるの?ってレベルだ。
担当教科は国語で、教科書を読む声なんかもかっこいい。授業のときなんかいい声すぎて逆に寝てる人などなかなかいない。噂によると料理の腕も良いらしい。たまに体育の授業のときにいたりもして、まさに文武両道以上というわけだ。
そしてこの先生について私は1つだけ聞きたいことがある。
「髪型、なんでちょんまげなんですか?」
そんなこと聞けない!!!!!ただでさえ目を合わせることも難しいと言うのに!
きっと、ここの高校の女子生徒は1回は早川先生に惚れ、一瞬でもガチ恋勢になったと思う。そのぐらいやばい先生なのだ。
まぁ私は他に好きな人いるけど…
と、頭の中でブツブツ言って無心で箒を動かしていると、当の本人の声がまたもや廊下からした。
「アキ〜、これどこ運んどけばいんだけっけ」
「おい、”先生”は?」
「…早川せんせー」
居た、私の好きな人。
そうそれは同じクラスのデンジくんだ。
結構な量の書類を持って早川先生と立ち話をしている。女子たちをチラチラみながら。はぁ〜やっぱり女の子好きだな…。
私の好きなデンジくんは、超女の子好きである。見た目はチャラチャラしてて不良みたい。金髪だし。ちょっとアホっぽい気もする。好きな人にこんなこと思っててほんとダメだな…でもそこがいい、みたいなところある。
困っていると助けてくれるし、黙ってると普通にイケメンだ。金髪も似合ってて好き。歯が何故かギザギザしているがそこが可愛い。
はぁ…でもこんな地味女、眼中に無いだろうな。私胸も無いし…自分で言っていて悲しくなってきた。
ずぅん…と勝手に落ち込んでいると、気がつくと廊下から何人かの声がいつの間にか無くなっていた。みんなどこか言ってしまったようだ。そろそろゴミ出しに行かなきゃな、と思い袋を縛って教室を後にした。
ゴミを出しに行く場所はいつもすこし遠回りをする道を通っていく。なぜかと言うと、そこそこ大きいゴミ袋を持って人が多い廊下を歩いてしまうと、人に当たってたまに嫌な顔をされるのだ。
前、いっぱい袋あったとき、デンジくん手伝ってくれたな。人通るのなんて構わずにズカズカ行っちゃって。そんなことを思っているとようやくゴミを出す場所に着いた。
さて、早く教室に戻って荷物取ってさっさと帰ろう。そんなことを思い足早に人通りのない廊下を歩いていると、空き教室のドアの窓に人影が見えた。ここの教室は確か、使われてない国語準備室?
こんな時間に珍しい…ま、まさかゆ、幽霊…
ではなく、そこに居たのはデンジくんと早川先生だった。こんな所で何してるんだろう。好奇心ゆえ、悪い事だと分かっているがそれでも聞き耳を立てずには居られなかった。
そういえば、あの2人何でか一緒にいる率高いんだよな。あ、デンジくんまた何かやらかして怒られてたり…
「なぁーアキ、今日早く帰ってくる?」
「一応その予定だ」
「…ふぅーん、そ」
幸い、怒られてる様子は無かった。でも待って…“早く帰ってくる?”とはなんだ?まるで一緒に住んでるかのような言い方だ。
「また前みたいに残業してくんじゃねーぞ、嘘つき」
「…悪かったよ」
ガタッと教室内から音がした。チラッと除くと、早川先生の膝の上にデンジくん乗ってる…?!完全にONしちゃってるよ!!!
「アキ、ちゅーして」
「はいはい」
えっ?!えっ?!ちゅーした?!?!キッスしちゃった?!
私が混乱真っ只中でも構わず目の前の状況は止まらない。
「ちげぇし、ベロ入れるやつ」
「ダメだ、止まんなくなる」
「ちぇ、ケチ。じゃあ家帰ってからのお楽しみにしとくかー」
デンジくんが名残惜しそうにちゅ、と軽いキスだけをして膝の上から降りそうになったので、バレたらやばい!と思い、すぐさま廊下の曲がり角に隠れた。
しばらくして教室からデンジくんが出てきた。何を言われた、されたのだろうか。顔が真っ赤っかである。耳まで赤くなってて可愛い。いや、そんなことを思ってる場合じゃない。
早川先生とデンジくんがそういう関係…?しかも同棲済み?…頭が追いつかなすぎる。どゆこと…?
完敗だ。私はもう既に負けていたのだ。デンジくんのあんな幸せそうな顔見たのは初めてだ。人生初の大失恋だ。いっそ清々しい気分。
廊下の角で息を潜めていると、デンジくんは余程のことがあったのだろう。私の存在には気づかず戻って行った。
ほっとして、私ももう戻ろう、帰路に踏み出そうとすると、ぽん、と肩を叩かれる。
「キャッ?!?!」
振り返ると予想していた人物が現れた。
「す、すまん、そんな驚くと思ってなかった。」
「いえ、そんな…」
「…」
お互い無言が続く。今まで生きてきて、こんなに次何言えばいいか分からなくなったことはない。
盗み見ちゃってすみませんでした、と言おうとして口を開きかけたとき、
「…ほんとに、あんなの見せてすまん…」
早川先生がここまで萎れてるのは見たこと無かった。
「こんなことを言うのもあれなんだがその…」
「言いません!!!逆にありがとうございました!!!では!失礼します!」
「逆に…?」
と呟く先生を後にし、ダッシュで教室に戻った。
2人のあの幸せな関係を言いふらすなんて野暮なこと私にはできない。
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モブ目線書きやすい☺️