テラーノベル
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蝶よ花よあなた様。
鞠を持つ、あなた様。
あんたがたどこさ。あなた様が口にした。
「なぁ。あんたも遊ばへん?」
着物を着るあなた様。
笑った顔が可愛らしくて八重歯が覗く。
「よいのですか?」
大きく頷くあなた様。
一緒に鞠をついた。
夕日の空を背にして大きな屋敷へ帰って行く。
「父様に叱られるから。」
「今日遊んだことは秘密な。」
そう言って走ったあなた様。
小さな背中が影になって長く長く伸びていく。
好きになっては駄目なのに。
あなた様の笑顔を見ると、側にいたくなる。
ずっと側で、泣き顔も見てみたいと。
――また遊びましょうね。
そんな言葉を喉を鳴らして飲み込んだ。
あなた様が城下で一人泣いていた。
会ってしまったら好いてしまう。
「父様に叱られてしまってん。」
そう言って泣き顔をさらす。
あぁ。駄目だ。
またやった。
だってあなた様は別嬪さん。
好きになってしまうのだ。
しばらくたって城に火がつく。
民は口を揃えて言う。
これでこの町は安泰である。
彼らは民を見下しておる。
城下の中心に飾られたのは城の主とその一家。
蝶よ花よあなた様。
どれも美しく目を焼き尽くす。
美しいものは壊したくなる。
あなた様はきっと壊れてしまわれた。
蝶よ花よどうかあなた様を飾り、どこか遠くへ。
あの笑顔の幸せをどこまでも飾って差し上げて。
コメント
1件
うわ、これめっちゃ好き……。 「あなた様」って呼び方だけで距離感と階級と切なさが全部詰まってるよね。笑顔が可愛い反面、最後の「壊れた」って一文が胸に刺さる。民の「安泰」って台詞も、皮肉というか虚しさがすごい。短いのに情景が浮かんで、泣き顔を見たいって感情がもうどうしようもなくて…。続き読みたい。