◆ 第1章 ◆
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〈 怜架 、 点数下がってるじゃない。 〉
呆れたような表情で母は私を見つめる。
『あ ー 、 難しくてさ』
〈数学と英語は他の科目よりできるはずよ?〉
『範囲広かったし…勉強も追い込みだったから』
『多分、あまり頭に入ってこなかったんだと思う』
私の言い訳を聞くなり母は溜息を吐きながら呟いた。
〈濱西さんとこの息子さんは ————〉
母の癖はよその息子や娘と比べてくるところ、その癖を直して欲しいと願うけど…
〈ちょっと、聞いてるの?〉
呆けていると怒られてしまった。
『あ、うん…ごめん! 』
『次こそは頑張るからね』
〈はぁ …ほんと呆れさせないでちょうだい〉
〝たった1人の娘なんだから〟
母は最後にそう述べて家事へと戻った、少し嫌な気持ちを抱えながら私は2階へと上がって自室に向かった。
『お父さんならあんなこと言わないのに…』
私の父は単身赴任で滅多に帰ってこない 。
父が次帰ってくるのはいつなのだろうと、そんな子供のようなことは考えないようにしている。
だって 、そんなことを考えてしまえば寂しくなってしまうから。
『…これをここに代入して…』
静かな自室には私の独り言とペンを走らせる音だけが響き渡る。
綺麗に並べられた数十冊ものの小説 、最近は読書にハマってお小遣いをコツコツと貯めては本を集めている。
『祈織みたいに全科目が得意ならいいのにな…』
幼馴染の彼は家族からも部活の後輩や先輩からも頼られる存在だ。
関西出身の父の影響で彼は関西弁の訛りがちょっとあるのが特徴で彼と話していると私まで関西訛りになりかけてしまう。
〝怜架って時々関西訛りなるよな〟
彼に何回もそう言われて
〝あんたのせいや。〟と
何回も突っ込んだ。
ここは関東だから関西弁なんて勿論聞かない…ので極力エセ関西弁を身につけないように気をつけている。
『あんまり進んでないのに疲れたな』
心当たりはある、学校では笑顔を貼り付け〝良い子〟を演じてる為疲れることが多い。別に疲れるようなことではないはずなのに … なんて思うことも時折ある。
祈織に会えばこんな疲れも吹き飛ぶのに…
勉強机に置かれた携帯が通知を知らせた。
すぐに携帯を手に取って通知を確認すると祈織からの1件の連絡が届いていた。
「明日の数学、小テストな」
祈織のこと考えてたのが読み取られたのではないかと少し不安だったが全然そんなことはないようで私は安心をした 。
彼は数学係としての仕事をちゃんと果たしていて、数学の先生から1番気に入られて点数も毎回90点以上 。
そんな彼が羨ましい。明るくて陽気で 、友達が多いタイプの彼はいつも輝いていた。
『祈織みたいになれたらなぁ、…』
彼はきっと私より恵まれてて
幸福な人生を歩んでいるのだろう __
〈次章へ続く〉
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