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視点 📕
対魔術一族討伐隊。
正式な隊員として名を連ねたその日から、僕なりに覚悟はしたつもり。
地下で訓練してきたことと、
本当に命を懸けることは、まったく別だと。
まぁ、部隊に志願する人間は少ないしさぁ。
でも、任務の成功率は決して高くないし、戻らない者もいる。
そう考えたら当然かも。
それでも、外へ行く。
nakamuが望んだ空を
僕も見てみたいから。
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転移装置を抜けた瞬間、空気が変わった。
重い。
湿っているわけではないのに、肺の奥に沈むような圧迫感。
見上げた空には、黒い雲が渦を巻いていた。
その隙間から覗く光は、赤い。
夕焼け?じゃない気がする。
見たことないから分かんないけど。
僕の放つ炎の色にも似ている。
でも、どこか生き物の瞳のようだった。
「……これが、現世」
nakamuが小さく呟く。
無邪気な感動ではない。
驚きと、少しの緊張が混じっている声。
森は静かだった。
静かすぎるほどに。
木々は高く、枝は絡み合い、
まるで侵入者を拒む柵のように行く手を塞いでいる。
風が吹く。
葉が揺れる。
ざわり、と。
嘲笑われている気がした。
歓迎されていない。
ここは、僕達の世界じゃない。
「……草、普通に生えてるな」
シャークんがぽつりと言う。
確かに、足元には青い草が広がっている。
赤い空の下でも、
黒い雲の下でも、
生命は育つらしい。
環境に文句を言わず、
ただ根を張る。
少し、羨ましい。
「まずは拠点だ」
きりやんが周囲を見渡す。
「日が落ちる前にキャンプ地を決める」
「順序立てて動くんだろ?」
きんときが念を押す。
nakamuはうなずく。
「うん。まずは今日の寝床」
スマイルは空を一度見上げ、淡々と言った。
「この空の下で野営か……
モンスターも湧いてくるだろうし危ないな」
スマイルが淡々とつげる。
シャークんは静かに森を観察していた。
目がいつもより鋭い。
魔力の流れを読んでいるのだろう。
俺も意識を集中させる。
この世界は、地下よりも魔力が濃い。
濁っている。
乱れている。
思い出したくもない、あの時の魔力に似てる。
胸の奥が、わずかに軋む。
深く深呼吸をした。
深く、深く、もっと深く。
心を落ち着けるために。
「貰った地図見たらわかるんだけどさ、
北西側の方、川があるからそっちかなぁ」
自分の声は、思ったよりも落ち着いていた。
「だから、そこにしない?」
nakamuが振り向く。
「さすがBroooock!」
無邪気な笑顔。
それを見ると、不思議と足が前に出る。
守るとか、背負うとか、
そういう大層なことじゃない。
ただ。
ここで止まりたくない。
黒い雲が渦を巻く空の下。
僕達は森の奥へ歩き出した。
まだ何も起きていない。
それが逆に、不気味だった。
本当に怖いのは、
姿形が分からない敵じゃない。
昨日とは違った生活でもない。
仲間を守れないことだ。
赤い光が、雲の奥でまた瞬いた。
――チャプター2、開始。