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生暖かい春風がカタカタと窓を小さく揺らした。

ふと窓の外を見てみると、そこには桜の花が綺麗に咲いていて、俺は思わず目を見開いた。


「見ろよニャンコ先生!桜がもう満開だ!」


ニャンコ先生は、呆れた様子で俺を見ると、わざとらしく溜息を吐いた。

「どれどれ」と、目を輝かせながら窓縁へ近寄った。すると、「 おぉ!これは花見ができるな!」 と言って、開花した桜をニヤリと見つめていた。


*


「名取さんや、田沼にも見せてあげたいな・・・」

俺の独り言が、やけに静かな部屋に響いた。

「田沼の小僧なら、お前が呼べば今すぐにでも来るだろ。」

フンと鼻で笑いながら言うニャンコ先生の頭をそっと優しく撫でると、直ぐに「んふっ〜♪」と気持ちの良さそうな声が聞こえた。

「んー、そうか?」

首を傾けて言う夏目に、ニャンコ先生は今日で何度目かの溜息を吐いた。

「そんなに溜息ばかり吐いてると、幸せが逃げちゃうぞ。」

夏目は橙色・灰色・白色の三色の毛からソッと撫でる手を止めた。

「お前は他人の心配ばかりしているから、面倒臭い事に巻き込まれるんだ!毎回、低級共を追っ払ってる私の身にもなれぃ!」


相手を優先しすぎてしまって、自分に不利益が存じた事を何度も経験したのは、言うまでもなかった。

図星な夏目は、ニャンコ先生から窓に映る風景に目線を変えた。


「はぁ・・全く、お前って奴は・・・」

「まぁ、いつもありがとな?ニャンコ先生。」

苦笑いで話す夏目に、ニャンコ先生は眉間に少し皺を寄せていた。

「今度七辻屋の饅頭買ってあげるからな。」

夏目がそう言うと、さっきまでの態度とは打って変わって、目をキラキラと輝かせ、ルンルンで話した。

「七辻屋の新作がいいな!あ、そうだ夏目!ついでに酒も買ってこい!」

調子に乗ったニャンコ先生の頭目掛けて、軽くげんこつをすると、ふしゅ〜と言う効果音と共に先生の頭からは蒸気のような物が空高くへと上がった。

「何度も言うけど、俺は未成年だ!」

「年齢の一つや二つ、そんなの変わらないだろ!お前が買えないのならば、名取や滋にねだれば良い話だろ!」

「そんなの駄目だ!俺が怒られる!!」

無理難題な事を要求してくるニャンコ先生に、俺は大きな溜息を吐いた。

「夏目の幸せが逃げたーこりゃ、どデカい妖に食われるな。」

ニヤリとしながらそう呟いた先生に、俺は仕返しと言わんばかりに言い返した。

「その時はニャンコ先生が守ってくれるんだろ?」

優しく微笑む夏目に、ニャンコ先生は表情を少し曇らせたのちに、鼻で笑って答えた。

「ふん、どうだかな。」

いつものニャンコ先生なら、 「私はお前のボディーガードではなく、ただの友人帳を貰う仲だ!」などの事を必ず言うはずなのに、今日だけはその言葉を言わなかった。

「明日にでも、*みんな*を誘って花見でもしよう。手伝ってくれるよな?ニャンコ先生?」

「・・・今回だけだぞ!その代わりに、団子を沢山用意しろよ!!私は花より団子派だからな!」

そう言うと、ニャンコ先生はスタスタと俺の部屋から出て行って、早速、中級達にお誘いをしに行こうとしていたため、俺は 窓を開けて二階からニャンコ先生を見ていると、一瞬だけ目が合った気がした。

*


丁度良い暖かさの春風に揺られる桜の花びら達をぼーっと眺めなが、俺は花見の事を考えていたのだが、楽しみで居ても立っても居られなくなり、俺もニャンコ先生に続いてる田沼や西村等を誘おうと、電話を入れようと、一階へ駆け降りた。



二階の部屋には、まだ暖かい春の空気が入り込んでいた。



fin.

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