テラーノベル
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注意
羽ゲンです。
羽京が酷い言葉を吐きます。
途中までバッドエンド味が強いですが、ハッピーエンドです。
それでも良い方のみ、ああ、夢でよかった。をお読みください。
俺にはずっと前から好きな人がいた。
西園寺羽京…名前でわかる通り彼はれっきとした男性だ。
普通の恋ですら本人にバレたくないのに、よりにもよって相手は男だ。気持ち悪がられて友達ですらいられなくなってしまうだろう。
でも、俺はそれを承知の上で、西園寺羽京に告白をした。
「どうしたの?ゲン、こんなところに呼び出して」
羽京は告白なんてされると知らずに不思議そうな顔をしている。
それはそうだ。今までの一般的な常識では女は男を、男は女を好きになると決まっているから。
ただ、ここは3700年後の世界。そんな常識なんてもうとっくの昔に吹き飛んでしまった。
「羽京ちゃん!」
突然の大声に彼はビクッとして、驚いた表情でこちらを見た。
心臓が激しく鼓動する。この音が聴力が常人の何倍も優れている彼には聞こえているのだろうか。
それとも、俺の表情に出ていたのだろうか。
羽京は、こちらを見ると少し頬が染まっていた。
「俺は、ずっと前から羽京ちゃんのことっ…好き、でした!」
普段飄々とした態度とは打って変わった、心からの言葉。
いつもの自分ならサラッと言えるはずだ。
しかし、相手は心の底から愛している相手だった。
そんな人の前で冷静でいられるはずがなく、自然と大声が出てしまう。
「俺と…付き合ってください! 」
言葉を紡ぎ終えると同時に俯きながら手を出す。
我ながら恋愛に疎い学生かと思う。側から見たらいい歳した男が男に告白をしているのだ。目も当てられないだろう。
羽京はどんな顔をしているのだろうか、恥ずかしくて見ることができない。
しばらくの沈黙が流れた後、羽京が口を開く。
「ありがとう、ゲン」
「でもごめんね、僕は男は恋愛対象じゃないし…」
「それに、ゲンでしょ?ゲンはいい人だとは思うんだけど、恋人としてはすぐ浮気しそうだし、嘘つきだし…ちょっと信用ならないかな。」
「それに、一回司帝国を裏切った人を信じて愛を誓えとか、ちょっと無理だし」
「正直いっちゃうと、今の告白も何が目的かわからなくてちょっと怖かったかも、」
咄嗟に彼の顔を見る。彼は 笑っているが、口が少し引き攣っている。
彼から抑えきれない俺に対する嫌悪、憎悪が伝わってくる。
ああ、そうか、ずっと相手のことを大切な人と思っていたのは俺だけだったのか。
メンタリストとして、相手の本当の気持ちを見ることができないとは情けない。
恋は盲目というがその通りらしい。咄嗟に俺は耐えきれず、背を向けてしまった。
「…ごめん、羽京、ちゃん」
今はとにかくその場から離れたくて、走り出した。
羽京は止めることも、声をかけることもなく、その場で突っ立って、こっちを見ていた
羽京があんなことを思っていたのか、なんでそれに気づけなかったのか。
悔しくて、恥ずかしくて、耐えきれなくて、涙が溢れた。
何分くらい走ったのだろうか。自分のモヤシ体力じゃそこまで遠くにはいけないし、道はちゃんと覚えてるから帰れる自信もある。何気に迷わないようにしてる俺えらい。
ずっと走り続けていたら 息を吸うと喉が冷える。痛い。心も体もキツくなって、俺は近くの木の下に座った。
久しぶりに全力で走ると碌なことがない。酸欠で頭がぼーっとする。
何度も何度も息を吸って、息を吐いてを繰り返す。
その度にフラれたんだ、羽京に嫌われていたんだ、という現実に耐えきれなくて涙が出る。
今まで楽しそうにしてくれていたのは全部演技だったのか、ずっと俺のせいで苦しんでいたのか。
嫌なことばかり出てくる。感情が抑えきれなくて、声を出して泣いた。
1人の人間に振られた程度でここまで心がやられるだなんて思っていなかった。
ずっと泣いていると今度は吐き気がするというもの。
もしここに告白する前の彼がいたら、「大丈夫?」と声をかけて背中をゆすってくれたのだろうか。こんな状況でも羽京のことを考えてしまう。そのせいでもっと苦しくなる。
なんで告白なんてしたんだろう。後悔しながら口を抑えた。
「う”ッ…!!」
ふと目が覚めた。起き上がると、寝汗と自分の涙で布団が濡れている。
ああ、なんだ、夢か…そう思って再び眠りにつこうとすると隣で座っている人に気がついた。
「えっ…!?びっくりした!?誰!?」
「あ、ごめん、びっくりさせちゃったかな、ゲン」
「なかなか眠れなくて見回りをしてたんだけど、ふとゲンの声が聞こえて…」
「うなされてたから起こそうか迷ってたんだけど、起こした方が良かった、かな」
「羽京ちゃん…」
最悪だ。この姿を誰かに見られていたのもそうだが、何よりこの姿を見ていた人が夢の中で自分を傷つけた、世界で、1番好きな人だったからだ。
まだ彼には想いを伝えていない。だから、このまま黙っていれば夢のようにはならないかもしれない。
でも、彼の表情を見ていると、本当に俺を心配していたのだな、と伝わってくる。
「羽京ちゃん、聞いてくれる?」
「多分、このままだとさっきの夢の続き見ちゃうし…」
「うん、僕でいいなら、話を聞くよ」
「…あのね」
「俺、羽京ちゃんのことが好きで、告白したの。でも、思いっきりフラれちゃって」
「辛くて、悲しくて、悔しくて、苦しかった。」
「ずっと、現実でも、好きな人だったから」
「それを本人に言うのは、ちょっとあれだけど、ね」
「この想いを黙ったまま飲み込むのも、今回の夢で無理そうってわかったし」
羽京は、夢の羽京と同じように驚いたような表情を浮かべていたが、すぐににっこりと笑った。
「あはは、この状況でそう言われたら断れなくなっちゃうじゃん」
「断るつもりだったの?」
「いや、全然」
「むしろ、僕もゲンのことが好きで、付き合いたいと思っているから…」
羽京は帽子を目深にかぶる。が、頬が赤くなっている。隠しきれていない。
そんな姿を見て、こっちも恥ずかしくなってきた。
「こんなことを言ったら、気持ち悪がられて、ゲンが話してくれなくなってしまいそうだと、思ってたから…」
羽京の本音にちょっと驚いた。あの羽京が俺とおんなじような、恋愛に疎い学生のような、 変なことを考えてただなんて。
ちょっと驚いたけど、しばらくするとじわじわきて笑ってしまった。
「あははっ…何それ!面白いんだけど、ジーマーで!」
「えぇっ、なんで笑うの?!ゲン!」
「ごめんごめん、だって、俺もおんなじだったからさぁ」
「…!そう、なの?」
「…うん」
「じゃあ、羽京ちゃん」
「好きです、付き合ってください」
あの夢とは違って、羽京の目を見ながら、ゆっくりと、気持ちを伝えた。
「…喜んで」
「…!」
なんとなくさっきの会話からわかってはいたけれど、いざ現実で受け入れられると恥ずかしい。
自分の心臓の鼓動が早くなるのを感じる。
「…ねぇ羽京ちゃん」
「どうしたの?ゲン」
「そろそろ寝ちゃう?」
「いや、僕はまだ見回りでもしようかな」
「それならさ、俺がまた、あんな夢を見ないように」
「そばにいて、欲しいな」
羽京は恥ずかしそうな表情を浮かべて、俺の伸ばした手を握ってきた。
その行動は少し予想外だった。自分の想像してた行動より何倍も恥ずかしいけれど、何倍も嬉しい。
「羽京ちゃん、ありがと…」
「…おやすみ」
「おやすみ、ゲン」
ああ、あの出来事が夢でよかった。
なぜなら、現実でこんなに幸せになれたのだから。
ああ、夢でよかった。
以下おまけ
千空の口調が変です。
「起きろ、メンタリスト」
「ん、千空ちゃん…?」
「羽京に用事あって探してんだよ、今」
「話してぇことあんのに羽京がどっかいってて…って」
「なんでゲンの手ぇ掴みながら寝てんだよ…」
ふと自分の伸ばした手に目線をやる。
そうすると、近くにいた羽京にしっかりと手を握られている。
あ、昨日付き合ったんだ、と言うことが改めて認識できて、嬉しいけれど恥ずかしい気持ちになった。
「なんで頬染めてんだよメンタリスト…テメェらそういう仲だったのか」
「ククク…別に気持ち悪りぃとか思っちゃいねぇよ、ちょっと意外だったがな」
「おい起きろ羽京」
「ん…なに、千空…?」
「おはよう羽京ちゃん、とりあえずおてて離してもらってもいい?」
「その…恥ずいから…」
「あっ、ごめ…」
羽京も頬を染める。
「いちゃつくのは別にいいが、目の前ですんじゃねぇ!背中がむず痒くなんだよ!」
「…んで、羽京、テメェに話があんだ、こい」
「あれ?千空ちゃん、俺はいいの?」
「あぁ、この話はソナーマン様にしかわかんねぇからな」
なんだか羽京を取られるのが嫌で、顔をしかめてしまった。
「おーおー、安心しろ、俺は寝取りとかには一切興味ねーし好きになんのも女だけだ。」
「それでも嫌なものはやだし…俺もついていっていい?」
「好きにしろ」
朝からバカップルのいちゃこらを見せられて鬱陶しそうな表情をしている。
「つかてめーら昨日までなにもなかったろうが…夜のうちに何があったんだ」
「えー?ヒミツ〜」
そんな会話をしながら千空に連れて行かれる羽京にゲンはついていくのであった。
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良キィ…