コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
「おはようございますお坊っちゃま」
「んー。幸くんおはよー」
「昨日はおひさしぶりのご実家でのパーティーで
夜遅くまで盛り上がってらっしゃったのによく起きられましたね」
「そんなこと言ったら…はあぁ〜(大あくび)…幸くんだって」
「いえ。それは執事としてなので」
この男、昨日は寝ていない。キッチンのシンクにはエナジードリンクの空き缶が2本も転がっている。
幸は朝ご飯の準備を、司は歯を磨いて顔を洗う。
いつも通り、ごく一般的な朝食を超高級を偽る幸に、なんとも簡単に騙される司。
昨日と同じように幸の後ろに乗ってバイクで通学。
「いってらっしゃいませ」
「いってくるー」
相変わらず女子生徒の視線を独り占めする幸。
「おっ…おはよう。司」
美音(みお)が寄ってくる。
「あぁ、美音(みお)。おはよ」
屈託のない笑顔。美音(みお)はドキッっとする。
「美音(みお)ん家(ち)も昨日パーティーだった?」
「え、えぇ。私1人の入学で狐園寺の血縁者がまあまあ集まったわ。なんでまあ、あんな騒ぐのかしらね」
「さあね。僕たちのとこも実家でパーティーだったよ」
「嘘でしょ」
「ほんとだよ」
「だってあなた一人暮らし始めたんでしょ」
「なんで知ってるの?」
「あ…」
美音(みお)は司の執事、幸からいろいろ情報を得ているのだ。
「な、なんでもいいでしょ。狐園寺家なんだからいろんな情報が入ってくるの」
めちゃくちゃである。
「そうなんだ〜。さすが狐園寺家だね」
こうも騙されやすいとさすがに怖い。教室に入る。担任の先生が入ってきてホームルームが始まる。
「今日はまずは席替えをして係決めをしたいと思います」
今は五十音順での席だが席が変わるらしい。ホームルームが終わり、席替えということで教室内が騒めく。
先生がタブレットを操作し、生徒が1人1人前に出ていってタブレットに触れる。
タブレットの画面にはプレゼントボックスが表示されており
そのプレゼントボックスの下に「Touch」と書いてあり、タップすると箱が開き、数字が飛び出てくる。
その間に先生はパソコンを操作してホワイトボードに席を書く。
「鴨条院(おうじょういん)くんだよね!よろしくね!オレ法鹿(ほうじか) 助(たすけ)!よろしくね!」
「あ、うん。よろしく」
「うっすうっすうっす〜。ご近所さんは鴨条院(おうじょういん)くんと〜?」
「あ、法鹿(ほうじか) 助(たすけ)」
「助な!オレは遊(ゆう)。よろしゅ〜」
「よろしくね」
「よろしく!」
「狐園寺(こうえんじ)さんですよね?」
「え?うん」
「私、栗鼠喰(りすぐい) 栗夢(くりむ)です。よろしくお願いします」
「うん。よろしく」
「…宝孔雀(ホウクジャク)さんですよね?栗鼠喰 栗夢です。よろしくお願いします」
「ん?あぁ、よろしく」
「2人とも…食べます?」
栗夢(くりむ)が2人にマシュマロを差し出す。
「あ、じゃあ…」
「いただきます」
「いただきます」
ツンデレで素直じゃない美音とクールな光がマシュマロを手に取ってくれて
仲良くなれそうな兆候を感じがして笑顔になる栗夢(くりむ)。
「それでは席が決まったというろころで係決めに移りたいと思います」
一方幸は下着のパンツ1丁でベランダでタバコを吸っていた。
ピンポーン。ピンポーン。インターフォンが鳴る。
「まだタバコ吸いかけ…」
でもしょうがない。幸はタバコを灰皿に押し付けて火を消し、インターフォンモニターのところへ向かった。
モニターに映った人物を死んだ目で見る。ボタンを押し
「なに?」
と言う幸。
「なにって。遊びに来た」
「結構です。お帰りください」
切った。飲み物を飲みにキッチンへ行こうとすると、またピンポーン。
ピンポーン。ピンポーン。ピンポーン。結局招き入れた。
「マジで一人暮らししてんだ〜」
「一人暮らしではないけど。オレもいるから」
「あ、そっかそっか」
マスクを外すこちらの女性。彼女は猫ノ宮 波歌(なみか)。猫ノ宮。そう。
彼女は狐園寺(こうえんじ) 美音の執事、猫ノ宮 帆歌(ほか)の姉である。
「で、マジでなにしに来たん」
「だから遊びに来たんだって…広いな…あ」
テレビを指指す波歌(なみか)。
「あ!ちょ!見てて見てて」
ドラマのコマーシャル。そこに少しだけ波歌(なみか)が映った。台詞付き。
そう波歌(なみか)は海風(うみかぜ) 波歌(なみか)という芸名で活動する女優である。
「知ってるよ。録画してあるし」
「えぇ〜なにぃ〜?ついにお姉さんの魅力にやられたか?」
「飲み物なにがいい?」
「せめてなんかつっこんでー」
グラスにオレンジジュースを注ぎ、ダイニングテーブルに置く。
「お坊っちゃまが録画するって」
「あぁ〜つーくんがね〜。あ、いただきまーす」
オレンジジュースを飲む波歌(なみか)。
「…めっちゃ普通だな」
まじまじとグラスに入ったオレンジジュースを眺める波歌(なみか)。
「失礼な」
「ごめんごめん。全然そーゆー意味じゃなくて、つーくんの一人暮らし…ま、こーくんがいるからあれだけど
とにかくつーくんとこの冷蔵庫だから、もっと高級品あると思ってた」
波歌(なみか)の舌は一流なようだ。
「なみ姉にそんな高級品出さんよ」
「ひどない?」
冷蔵庫に高級なオレンジジュースなどないからである。
「つーくん元気?」
「元気元気」
「昨日はご実家で?」
「そ。そっちは?」
「うちも狐園寺家でパーティー」
「行ったんだ?」
「そりゃ美音ちゃんの入学お祝いパーティーだからね」
「まあ、そりゃそっか」
「…」
波歌(なみか)はジーっと幸を見る。
「なに」
「あのさ、さすがに来客時に執事がパン1はどうなんか?」
幸は相変わらず下着のパンツ一丁だった。
「あぁ、別に来客って来客じゃないからいいでしょ」
「一応女優ぞ?」
「まだ主演は張ってないけどね」
「うるさ。これから見てろ?2年後には主演の映画やってやるから」
「2年後。マジでありそう」
そんな話をしながらも幸は服を着る様子はなかった。
「はい。こんな感じで係は決まりました。
そして教科書なのですが当校では数年前から完全電子になりまして…。
まあ、そうですね。実物を見て話しましょう」
と言って先生は学級委員長と副委員長、他にも係の数名を連れて教室を出る。
しばらくして戻ってきた。そして配られたのがタブレット。
「今配っていただいたタブレットと充電器。うちでは基本的に全教科、タブレットを使っての授業となります。
自分のタブレットには各自ユーザー名、そしてパスワードの設定をしてもらって
宿題などがあれば、タブレットは基本的に学校に置いていってもらって
宿題などが出た場合はお家のパソコンやタブレットからアクセス、ログインしてもらってという形になります」
「スゲー。タブレットなんだ」
「授業中エロ動画とか見れるかな」
「無理だろたぶん。制限されてるはず」
「そっかそっか」
「てか、スマホで調べればいいじゃん」
「いやぁ〜学校から支給されたもので授業中に見るのがいいんじゃん〜。ね?鴨条院くん」
「え?あぁ、背徳感ってやつ?」
「おぉ。まさかわかってくれるとか」
「鴨条院くん。変な知識埋め込まれたら怒られるんじゃない?」
「あぁ、これはね」
司は思い出す。
…
それは司がまだ小学生、幸が高校2年生のとき。
相変わらずお坊っちゃまヘアーで私服にランドセルを背負っている司と
黄葉ノ宮高校の制服を着崩し、まだ髪は長くなく、ワックスで髪をセットしている幸
2人がブランコに腰掛けている。
「幸くん。今日も授業サボってたって帆歌(ほか)姉から聞いたよ?ダメじゃん。授業には出なきゃ」
真っ当である。
「まーね。でもね司。世の中には勉強よりも大切なことがあるんだよ」
「そうなの?」
「そうなの」
「なになに?なにしてるの?」
「…パン食べてた」
「パン?パンってあのパン?」
「そ。あのパン。ただのクリームパン。でもね、…何限だっけ…3か?2か?
授業サボってカフェオレとクリームパン持ってベタに屋上行ったのよ。でパン食べてカフェオレ飲んで。
みんなが真面目に…まあ、うち(黄葉ノ宮高校)バカだからそんな真面目なやついないけど
みんなが真面目に授業受けてるときにサボってパン食ってるって思うと
なんの変哲もないクリームパンも、なんかめっちゃ美味く感じるんだよね。あ、もちろんカフェオレも」
「そうなんだ」
「背徳感ってやつかな。最高のスパイス」
思い出すように、イタズラ少年のように微笑む幸。
「背徳感。最高のスパイス。授業サボってパンかー」
「あ、ダメだよ司。マネしちゃ。あとご両親にも言わないでよ?」
「なんで?」
「なんで?そりゃー…あ。これはね、お金持ちの家庭の子がやるとアレルギー反応が出て命に関わるんだよ。
しかもお金持ちの家庭で、お金持ちのご両親にお金持ちの子からこのことを伝えられたら
ご両親もアレルギー反応出て命が危ないからマネしちゃダメだし、言ってもダメなの」
めちゃくちゃにめちゃくちゃな嘘である。
「え…そうなんだ…。危ないね。幸くん教えてくれてありがとう」
ピュアが過ぎる。
…
「お兄ちゃんが教えてくれたんだ」
思い出し笑顔になる司。
「あ、鴨条院くん、お兄さんいたんだ?」
「あ、お兄ちゃんっていってもお兄ちゃんみたいな人。今は僕の執事なんだけどね」
「マジで執事とかってこの世にいるんだ」
「それな!すご」
クシャンッ!
「ほらー。服着ないから」
「大丈夫。オレ風邪ひかないから」
「あぁ、バカだからね」
「うるさ。きっと誰かがオレの噂してんだよ」
「大丈夫大丈夫。イケメンイケメン」
「そういうと一気にそんな感じじゃないって思うわ」
「では明日から授業が始まります。最初のうちは大体説明とかタブレットの使い方とかだと思いますが
明日から授業ということで気を引き締めてくださいね。それでは学級委員長。よろしくお願いします」
「起立」
生徒が立ち上がる。
「礼」
「あのぉ〜。マシュマロもう1個食べます?」
栗夢(くりむ)がマシュマロの袋を差し出す。
「…栗鼠喰(りすぐい)さんだよね?」
「はい」
「なんでマシュマロ持ってんの?」
「えっ。好き…だからです」
「食べるの好きって自己紹介で言ってたもんね」
「狐園寺(こうえんじ)さん覚えててくれたんですか!マシュマロ2個どうぞ!」
「いや、クイズ番組のポイントみたいに…。あぁ、どうも」
「宝孔雀(ホウクジャク)さんもどうぞ」
「ありがと…」
「うち洋菓子店なんですよ。だから小さい頃から食べるのが好きで」
「あ、そうなの。なんていうお店なの?」
「全然小さいんだけど。
Les joues de Chestnut tombent(レ・ジューン・デ・チェストナッツ・タンブ)っていうお店で」
「あ!私知ってる!」
「ほんとですか!」
「デパートに出店してるよね」
「そうなんです!ちゃんと本店は別にあるんですけど」
「めっちゃ好きだよ。特にショートケーキ」
「嬉しいですー!両親も喜びます!」
「私も今度行ってみるわ。レ…なんだっけ?」
「あ、じゃあお店の場所送ります。LIME教えていただいてもよろしいですか?」
「いいよ」
「ありがとうございます。あ、宝孔雀(ホウクジャク)さんも良かったら」
「私も?」
「はい」
「ま、別にいいけど」
3人はLIMEを交換した。
「あ、そうだ。都合良い日、うちに遊びに来ませんか?そうすればうちのケーキもご馳走様できますし」
「まあ…いいけど」
「うん」
「やったー!ではLIMEで。よろしくお願いします」
「うん。よろしくね」
「よろしく」
栗夢(くりむ)はワクワクでルンルンで帰った。
「あ、幸くーん」
司が手を振る。
「お疲れ様です」
幸が頭を下げる。幸に目が釘付けの女子たちは誰と知り合いなのだろうと司に視線を移す。
「疲れてないけどね。あ、友達」
「法鹿(ほうじか) 助(たすけ)です!」
「遊雉(ゆうち) 遊(ゆう)です!」
「もうご学友が。お坊っちゃまの執事の鷺崎(さぎさき) 幸です。
お坊っちゃまと仲良くしてあげてください。よろしくお願いします」
幸が頭を下げる。
「いえいえこちらこそよろしくお願いします」
「こちらこそです。よろしくお願いします」
慌てて助(たすけ)と遊(ゆう)も頭を下げる。
「どうされます?この後ご学友と遊びに行かれるのであれば、私は帰りますけども」
「あぁ〜…どうする?」
司が2人に聞く。
「でも注意事項に制服のまま遊びに行くのはおすすめしませんって書いてあったし」
「あ、そうなん?全然知らなかった」
「まあ、カツアゲとかでしょうね。白樺(白樺ノ森学院の略称)の制服着てたら
お金持ちですよって言ってるようなものですからね」
「なるほどね」
「あぁ、なるほど」
「じゃ、集まるってなったら後でLIMEするね」
「オッケー」
「ではどちらにしろ一旦帰りましょうか」
「だね」
幸がヘルメットを被る。ヘルメットを被るだけでも女子は幸に釘付けである。司もヘルメットを被る。
「じゃ、法鹿(ほうじか)くん、遊雉(ゆうち)くん、またね〜」
ヘルメット姿の司が2人に手を振る。
「またねぇ〜」
「またねぇ〜」
2人も手を振り返す。司が幸の後ろに座り幸の腰に手を回す。
幸が2人に軽く頭を下げてから、ドルルンッ!っとエンジンを吹かせてバイクで走り帰った。
「あの執事さん、めっちゃカッコよくない?」
「わかる。カッコ良すぎ」
「んで鴨条院くん。ヘルメット被った姿、まる鴨の後継には全然見えなかったよね」
「てか、お金持ちにすら見えなかった」
「わかる」
ドッドッドッドッ。
「バイク停めてきますんで、先入っててください」
「わかった」
ガチャ。鍵を開け中に入る司。
「ただいま〜」
幸はガレージにバイクを停めに行ってるのだから、誰もいるはずないとわかったはいるものの
きっちり「ただいま」と言う辺り、しっかりした家庭で育ったんだろうとわかる。
「おかえりー!」
?。司は
「え?」
となる。そりゃそうだ。誰もいないと思っていたのに
女性の声でお迎えの返事があったのだから。玄関に迎えにきたのは波歌。
「おぉ〜なみ姉!いらっしゃい」
「お邪魔してますぅ〜」
「どうしたの急に」
「いやぁ〜撮影の空き時間?」
「あ、そうなんだ。そっか、まだ撮影してるんだもんね」
「そうそう。隣駅だったから足伸ばして」
「お坊っちゃま…あぁ」
「幸くん、なみ姉来てたんだね」
「まあ…押しかけですけどね」
「言い方よ」
大好きな女優、海風(うみかぜ) 波歌が司の家にいるとはつゆ知らず、助(たすけ)は
「鷺崎さんか〜…カッケェ〜」
と家に帰っていた。
「じゃ、着替えてくるー」
「いてらー」
司が着替えに部屋に戻る。
「脱がないの?」
波歌が幸に言う。
「お坊っちゃまがいるときは正装。執事としての基本でしょ」
「さすがぁ〜」
司はそこそこに広い自室に入る。制服のジャケットを脱ぎハンガーにかける。
スマホを取り出す。司、助、遊の3人のグループLIMEに通知があった。
遊「私服に着替えてどっか行こー」
助「いいけど、どこ?」
遊「そうだなぁ〜…大吉祥寺?」
助「うわぁ〜新高校1年生でごった返してそう」
遊「まあね。でも甘谷とかのほうが多そうじゃね?」
助「まあ。鴨条院くんは?」
白樺ノ森学院での初めての友達に遊びに誘われ、目を輝かせ
司「行く行く!大吉祥寺!いいよ!」
と送った。
助「まあ、鴨条院くんがいいならいいけど」
遊「ほんなら大吉祥寺決まりね!改札前集合で!」
助「ういー」
司「了解です!」
Yシャツを脱ぎ、制服のパンツも脱いでハンガーにかけ
Yシャツは洗濯にと思って、Yシャツ片手に部屋を飛び出す司。
「幸くーん!」
「はい」
そのとき波歌が来ているのを思い出した司。しかし時すでに遅し。下着のパンツ一丁でリビングへ。
「おぉ、本日2人もの男のパンツを見ることになるとは」
「あ、ごめんなみ姉」
「いいのいいの。でどうした?」
「あ、この後さ」
幸は
あ、この状況でも普通に続けるんだ。さすが司。オレの血を継いでるわ。
と血縁関係全くないのに思っていた。
「友達と遊びに行くとこになったんだけど服選んでほしいなって…」
「かしk」
と幸が言いかけたところで
「可愛いなぁ〜!よし!私が決めてあげる!部屋行くぞ部屋!」
「あ、うん。ありがとなみ姉」
「いいってことよ」
波歌に背中を押されて司が部屋へ行った。
「ま、なみ姉のセンスなら大丈夫だろ」
と呟きつつ
執事として同行する必要…いやボディーガードじゃないしな。でも何かあったら困るし…
と考えていた。
「じゃーん!どおよ」
波歌がドヤ顔でリビングへ来た。その波歌の後ろにはオシャレをした司が。
「おぉ。お似合いです。オシャレです」
「だしょー」
「お坊っちゃまに言ったんです」
「伊達に女優やってないっての」
「話聞けよ」
「じゃ、僕行ってくるね」
「あ、お金はあまり持っていかないほうが。今お財布にいくら入ってます?」
司が幸にお財布を渡す。お札の部分お開く。チャリーン。と効果音が聞こえてきそうである。
一万円札が…1、2、3…と幸が数えていく。
「20万!?」
「つーくーん。持ってんねぇ〜」
「お坊っちゃま。2万円ほどにしておきましょう」
高校1年生で2万円所持もそこそこだと思うが。幸が18万円を抜き取る。
「わかった。ありがと」
「ちなみにどこへお出掛けか決まってるんですか?」
「あ、うん。大吉祥寺に行ってくる」
「かしこまりました」
「じゃ、行ってくるね!」
玄関のほうへ行って出掛ける司をお見送りする幸と波歌。
「いってらー。楽しんでねー」
「いってらっしゃいませ」
玄関の扉が閉まる。ガッチャン。ヒュンッ!風が波歌の横を過ぎ去る。
「なに!?」
幸が女優の波歌もびっくりの早着替えで私服に着替えていた。
ポニーテールにしていた長い金髪も黒髪のカツラで隠していた。
「わ。誰」
「行ってくる」
「どこに」
「司の…警護?」
「過保護ねぇ〜」
「なみ姉鍵預けとくわ。出るときは閉めて、どっかに隠してそれLIMEして」
幸が玄関にいる波歌に鍵を渡す。
「なんか彼女みたい」
「いってくる」
ツッコミもせず玄関の扉を開いて外に出て行った幸。
「つっこめよ…てか、聞いてすらないな」
玄関の扉が静かに閉まった。